Special Issue
<スマートデバイス特集>SIビジネスに異変あり 「ビジネスサービス」の強化が不可欠に
2012/10/25 19:56
週刊BCN 2012年10月22日vol.1453掲載
●スマートデバイスが本格普及
ユーザー企業のフロントエンド環境は、今、スマートデバイスとクラウドによって刷新されつつある。企業ユースで主流を占めていたパソコン用OSのWindows XPの延長サポートが2014年4月に終了する見込みで、Windowsの新しいバージョンを搭載したパソコンへの入れ替えが進むとともに、スマートフォンやタブレット端末に代表されるスマートデバイスが本格的な実用段階に入りつつあることが理由として挙げられる。
大手SIerの日立システムズは、スマートデバイスの初期設定などを代行するキッティングサービスへの引き合いが急増。同社の前田貴嗣・スマートデバイス推進センタ担当部長は、「2011年後半からスマートデバイスのキッティングニーズが高まり始め、今年4月からは当初の予想を上回る引き合いがきている」といい、企業ユーザーにあっては、いよいよ本格的な普及期に入りつつあるとみる。
パソコンの入れ替えやスマートデバイスの普及は、単に端末が変わるだけにとどまらないとみられている。例えば、Windows XP上で動いていた古いクライアント/サーバー型のアプリケーションは、OSのサポート切れを契機にクラウド環境へ移行する動きが強まり、スマートデバイス向けのアプリケーションは、そもそもクラウド環境と密接不可分の関係にある。
今後は、パソコンやスマートデバイスの両方で使えるよう、アプリケーションにつくり変えるとともに、ユーザーの担当者が自らの電算室でサーバーを運用する古典的な方法から脱却して、メンテナンスフリーのクラウド環境へ移行して運用コストを削減する動きは、もはや止められない潮流となっている。
●ITとビジネスサービスを融合
そこで注目されるのが、SIなどの「ITサービス」と、ユーザーの物理的なコンピューティング環境の変化を支援する「ビジネスサービス」との融合ビジネスである。クラウド端末としてのパソコンやスマートデバイスは、主にクラウドを運用する「ITサービス」の部分と、端末のキッティングなど物理的なサービスや現地での保守サービスなどを行う「ビジネスサービス」の両方が別々のものであってはうまく機能しない。この点が、従来のIT機材の客先設置を中心としてクライアント/サーバー型とは大きく異なる。
業務アプリケーションのクラウド環境への移植、あるいは再構築需要が見込めるとともに、スマートデバイスや新Windows OSを搭載したパソコンの入れ替えも進む。スマートデバイスは、3GやLTEといった通信キャリアの無線ネットワークサービスを利用することが多くなるので、通信キャリアとの密接な連携も求められる。具体的には、通信キャリアの回線を使うケースでは端末に電話番号を割り振ることになるが、例えば端末が故障したり、紛失したときに、ユーザーは通信キャリアに申請して、新しい端末に電話番号を振り直してもらったり、回線を止めたりする作業が発生する。
クラウド環境へ移行して、せっかくメンテナンスフリーになったにもかかわらず、端末側の運用次第では管理の手間が減らないどころか、場合によってはユーザーの負担が増えかねない。この負担を軽減するために、スマートデバイスやパソコン、クラウドなど新しいコンピューティング環境の運用を丸ごとITベンダーが受託するBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)や、こうした環境をサービスとして提供するBPaaS(Business Process as a Service)といった「ビジネスサービス」が求められている。
次ページでは、スマートデバイス環境をトータルで提供する日立システムズのビジネスサービスの取り組みをレポートする。
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