Special Issue
<ストレージ特集>有識者の見解と有力メーカーの戦略を知る
2012/09/17 19:56
週刊BCN 2012年09月17日vol.1448掲載
【アナリスト・インタビュー】ITR 生熊清司シニアアナリスト
ストレージは今後も伸びる 求められる効果的なデータ格納技術
国内IT市場の調査と、ユーザー企業のIT戦略立案支援ビジネスを展開するアイ・ティ・アール(ITR、内山悟志代表取締役)。同社の生熊清司氏は、国内IT市場全般に精通するアナリストだ。IT業界全体が低調ななかにあって、ユーザー企業のIT投資状況とストレージ市場の動向をどうみているのか。生熊氏に聞いた。ITRの生熊清司
リサーチ統括ディレクター/シニア・アナリスト
外資系のコンピュータメーカーとソフトメーカーを経て、1994年に日本オラクルに入社。データベース(DB)ソフトのマーケティング業務などを担当した後、06年にアイ・ティ・アール(ITR)に移籍した。リサーチ統括ディレクター兼シニア・アナリストとして調査業務を統括。ハードとソフト、サービスを問わず、国内IT市場の動向に精通する。
●売り上げを伸ばすためのITがカギ
ストレージは投資対象の上位に
──ユーザー企業のIT投資意欲は、回復しているのか。
生熊 慎重な姿勢は変わらない。業種・業界を問わず、ユーザー企業のビジネスは厳しく、その影響でIT投資額の増加にはなかなか厳しいものがある。
──ユーザー企業の情報システム担当者は今、何に力を入れて取り組んでいるか。
生熊 既存のIT環境を見直しているところだ。仮想化技術を活用してサーバーを統合したり、クラウドに移行したりして、情報システムの運用コストの削減を図り、戦略的な新規のIT投資に使うことができる費用を捻出しようと躍起になっている。
──ユーザー企業は、浮いた費用を何に使おうとしているのか。
生熊 われわれが調べた「投資額が増加する製品・サービスの上位5項目」を見れば明らかだ(図参照)。2011年度のトップは、モバイル端末・スマートフォンの導入で、その次はサーバーの仮想化だった。この2項目は、今年度も上位に入るだろう。4位のPCと5位のストレージも注目で、前年度から順位を上げており、優先度が高まっている。
──ストレージが投資対象に入る理由は何か。
生熊 活用していなかったデータを、有効利用しようと考えているからだ。システムの奥に埋もれていたデータを引っ張り出して分析することで、売り上げを伸ばすためのヒントを得ようとしている。
リーマン・ショック以降、ユーザー企業は、コストの削減を目的にITを導入する動きがしばらくの間、顕著だった。しかし、今は違う。それだけではない。コストの削減だけでは、持続的な成長には限界があると感じて、“売り上げを伸ばすためのIT”が必要だと気づいたのだ。そのために、これまで使っていなかったデータ、とくに非構造形式のものを積極的に活用して、ビジネスに生かそうとしている。
●重複排除と階層管理は不可欠
処理が速いSSDに注目
──ユーザー企業が求めるストレージとは何か。
生熊 急激に増えるデータ量に合わせてストレージを増設していては、お金がいくらあっても足りない。ユーザー企業は、1GBあたりの単価を下げたいと願っている。その要望に応えるためには、データの重複排除技術は必須となる。また、データを効率的に管理するために、データの重要性と形式に合わせて、格納するストレージを分ける階層管理技術も欠かせない。
──メーカーが今後製品開発を進めるうえで、必要なことは?
生熊 SSD(Solid State Drive)の活用だ。SSDは、HDD(Hard Disk Drive)に比べてデータの読み込みと書き込みが速く、高速処理に適している。データが増えるのは間違いなく、ユーザー企業はそれらを短時間で活用したいと考えて、高速化を今以上に求める。SSDはこれまで価格が高かったが、今はだいぶ価格が下がってきた。メーカーはSSDを活用したラインアップを増やすべきだ。
──今後もストレージを重要視する傾向は続くのか。
生熊 続くことは間違いない。どの企業にも、「人」を管理するための人事部があり、「お金」を管理するための経理部が存在する。私は、それと同じように、データ(情報)を管理するための、今でいう情報システム部門とは違う、別のデータマネジメント部門が必要だと考えている。企業にとって、データは人とお金と同等の重要な資産。その位置づけは今後も変わらないはずだ。ストレージは、その大切な資産を守り、活用するためのIT基盤として、今後も重要性は増していく。
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