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<x86サーバーメーカー座談会 2012>「クラウド時代でもサーバー市場は伸びる」 7社のメーカーが集結、各社が語る戦略と強み
2012/06/28 19:56
週刊BCN 2012年06月25日vol.1437掲載
NEC
浅賀博行 氏
シスコシステムズ
中村智 氏
デル
布谷恒和 氏
日本IBM
小林泰子 氏
日本ヒューレット・パッカード
橘一徳 氏
日立製作所
高群史郎 氏
富士通
芝本隆政 氏
(司会・進行/『週刊BCN』副編集長 木村剛士 写真/大星直輝)
大震災直後に始まった年度 混乱のなかでもプラス成長
──昨年度(2011年4月~2012年3月)は、2011年3月11日に起きた東日本大震災による混乱がまだ収まっていない時期に始まりました。大変な一年だったと思いますが、まずは昨年度のビジネスの感触を教えてください。浅賀(NEC) 前半は大震災直後の社会全体の混乱があり、元気と落ち着きを少し取り戻した頃には、タイの洪水が発生。部材の調達難という新たな問題が発生し、まさに激動の一年でした。
そうしたなかでも、NECは販売台数を着実に伸ばし、前年度に比べてプラス成長しました。シェアは、おかげさまで16年連続のトップポジション(※1)。ブレードはとくに好調で、前年度比30%増という大幅な伸長率で、ブレードでもシェアNo.1(※2)を獲得することができました。
震災後、データセンター(DC)を構築する事業者が増え、サーバー需要を獲得できたことや、スマートフォンの普及で通信事業者・ネットサービス事業者がサーバーを増強したことが主な理由です。
中村(シスコシステムズ) シスコは、2009年に国内サーバー市場に参入したので、ここにお集まりのみなさんに比べれば、かなりの後発です。サーバー事業を始めて3年ほどが経ちますが、今でもチャレンジャーという認識には変わりません。
実績は、母数が小さいのでまだまだ頑張らないといけないレベルですが、前年度比の伸び率は、売り上げベースで約2倍。「仮想化に強いシスコ」「持ち前のネットワークの強さとサーバーコンピューティングと組み合わせたソリューションをもつシスコ」を前面に押し出して、拡販を進めました。Cisco UCSのユーザー様は、中堅規模以上の企業・団体・クラウドサービスの事業者が多いのですが、昨年度はとくに、官公庁や大学の研究施設からの引き合いが多かったです。また、第一段階として導入いただいたお客様が、サービス規模の拡大に合わせて追加リソースを拡張するケースも見受けられました。そのリソース追加に伴うコスト増加率の小ささも特徴の一つなので、その点が理解され始めていると感じています。
布谷(デル) 販売台数は微増です。NECの浅賀さんがおっしゃったように、昨年度は激動の一年でした。不安定な時期が長く続きましたが、そんな状況でも最低限のことはやった、という感触です。
販売台数を伸ばすことに貢献したソリューションを、あえて一つ挙げるとすれば、VDI(バーチャル・デスクトップ・インフラストラクチャ=デスクトップの仮想化)ですかね。ユーザー様は、仮想化技術をサーバーだけでなく、デスクトップ(端末)にも利用したいと考え始めました。大震災が起きて、BCP(事業継続計画)とDR(災害復旧)を真剣に考え、VDIに対する関心度合いは一気に高まりました。私が所属するサーバーチームの近くにはストレージやクライアントPCのチームもいるため、VDIは共通のソリューションということで継続的にクロスセリングをすすめています。
小林(日本IBM) 全体を通じて、悪くはありませんでした。台数と金額ともにプラス成長。サーバーを仮想化するニーズが、大企業のユーザー様だけでなく、中堅・中小企業(SMB)にも広がってきたことが、需要を下支えしていると思います。サーバー統合・集約のニーズは、非常に根強いですね。
そしてVDI。当社ではVDIを「デスクトップ・クラウド」と呼んでいますが、このソリューションを検討するユーザー様も増えてきた感触で、好材料になりました。「デスクトップ・クラウド」は、業種・企業規模を問わずに求められているので、引き合いは、デルさんと同じように、日本IBMも非常に多かったです。
橘(日本HP) 台数は微増でしたが、金額は台数以上に伸びました。一昨年度に比べて、高額モデルを購入するユーザー様が多かった年だったと思います。
昨年度をひと言で表すと、パートナー様への感謝と反省の年。大震災直後のユーザー様のサポートは、当社だけでは対応できなかったことが多く、パートナー様の力をお借りし、助けていただいて、本当に感謝しています。その一方で、後半にはハードディスクドライブ(HDD)を十分に提供することができなく、ご迷惑をおかけしてしまいました。
高群(日立製作所) 厳しい一年でしたが、若干のプラスで終えることができました。昨年度を振り返って嬉しかったことは、パートナー様を経由した販売台数が大幅に伸びたこと。パートナー様経由の事業は、昨年度比10%以上成長しました。営業担当者とSEが一体となった支援部隊を設置して、パートナー様の事業をサポートする体制をつくったことなどが、パートナー様に好評でした。
大震災の後、通常のビジネスがストップして、“空白の時間”があったんですね。その時間を、パートナー様とのコミュニケーションに費やすことができたのが、不幸中の幸いでした。その時に聞いたパートナー様の要望に応え、それが成果に結びついたのかな、と思っています。
芝本(富士通) われわれは、前年度比でみると結構好調で、売り上げでみれば前年度比10%強です。ただ、これは、一昨年度内に出荷する予定だったサーバーが、大震災の影響で出荷できずに、昨年度にずれたことも要因として、認識しています。一方で、年度の後半は、BCPに必要なシステム投資プロジェクトが動き出したり、DC事業者の大型投資案件が増えてきたり、好材料が増えました。「もう少し伸ばしたかった」というのが本音ですが、順調だったと思います。以前から話していますが、富士通はトップシェアを目指していますから、今年度はさらに頑張りたいと思います。
(※1) 1996年~ 2011年暦年 国内x86サーバー(出荷台数、出荷金額) 出典:IDC Japan,Japan Server Quarterly Model Analysis,2012Q1
(※2) 2011暦年 国内x86サーバー(出荷台数、出荷金額)出典:IDC Japan, Japan Server Quarterly Model Analysis 2012Q1
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