SMBは提案次第で大きなビジネスチャンス

　──大きなキーワードである仮想化、クラウドですが、自社の戦略との兼ね合いはいかがですか。

　浅野（シマンテック）　ひと括りにクラウドといっても、単にストレージとしてクラウドを使うオンライン・ストレージから、そこに付加価値をつけるものまで、さまざまな手法があります。オンライン・ストレージはコンシューマ分野でスタートし、低価格、あるいは無料サービスのイメージもあって、ビジネスモデルとしてはかなり難しいと感じます。当社の取り組みの例の一つとして、富士通が提供するクラウドサービス経由での製品提供があります。エンドユーザーが、富士通が提供する仮想サーバーサービスを使用する場合、当社のバックアップやアンチウイルスをメニューから選択して組み込めるようになっています。

　春木（日本HP）　自分たちで十分なデータ管理ができない方々にとって、クラウドはとても便利なサービスです。一方、企業のポリシーで外部に持ち出せないデータもあります。基本は自分たちで管理したいが、最大データ量に合わせて環境を整備するのでは過剰投資になる。こうしたケースでは、ある一定量を超えた分についてクラウドを選択するというニーズも出ています。

　吉田（アクロニス）　皆さんがおっしゃるように、クラウドにもさまざまな形態がありますし、当社ですべてに対応できるわけではありません。当社のご提供範囲は、データの引っ越し、リストア、仮想化のプラットフォームへの対応です。それ以外の部分は、さまざまなベンダーやパートナーに補ってもらう、サービスを提供してもらうなど、役割分担をして一つのソリューションにしています。

　平居（クオリティソフト）　当社の「Quality Quick Recovery」はアプライアンス製品ですが、ユーザーからの「こんなことがしたい」という多様なニーズにお応えしていくためにも、パートナーとの協業が重要で、それによってどんな提案ができるかを模索しています。

　──最後に、パートナー施策について聞かせてください。

　春木（日本HP）　当社のビジネスは、パートナー様との協業がかなりの部分を占めています。各種のパートナープログラムを用意していますが、パートナー様の強みを発揮できるよう、プログラムのどこに力点を置くかをテーマとしています。例えば、ディストリビュータ向けには製品がスムーズに流れるような施策、SIerにはエンドユーザー向けの説明資料を充実させるなど、パートナー様のニーズに合わせた対応を目指します。

日本ヒューレット・パッカード（日本HP） インフォメーション・マネジメント 統括本部　統括本部長　東アジア担当 春木菊則 氏

バックアップは問題がない限り放置されるが、そこにSIerのビジネスチャンスがある。

　吉田（アクロニス）　昨年12月にパートナープログラムをスタートし、製品への理解を深めていただくために月2回のトレーニングを開催しています。また、製品の開発・機能については、多機能だけでなくシンプルさを求める声もあるので、そうした声にも対応します。

　浅野（シマンテック）　当社のパートナープログラムには「SMBスペシャリゼーション」というものがあります。例えば、セキュリティとバックアップで製品の提供ベンダーが異なると、エンドユーザーを煩わせてしまうことになりかねません。当社には多くの製品がありますが、「SMBスペシャリゼーション」の認定SIerには、個々の製品を別の担当が受けもつのではなく、一本化して担当できるように支援しています。

　平居（クオリティソフト）　SIerのビジネスのなかに、当社の製品をどう当てはめてもらうのがベストかを考慮した施策を進めます。とくにSMBに向けてはCDPの認知を広める啓発活動とあわせて、お客様がいかに使いやすいものにできるかを念頭に、監視サービスとの連動等の施策を進めていきます。日本HPの春木さんにおたずねしたいのですが、米国ではSIerとユーザーの関係はどうなのでしょうか。

　春木（日本HP）　米国ではSIer任せにせず、自分のビジネスは自分達で守るという意識が強い。一方、日本のSIerはいい意味でクッションであり、その存在があるからユーザーは本業に専念できる。ただ、バックアップは何ごともない限りそのまま手をつけないというSIerも少なくありません。そこにビジネスチャンスが眠っているわけです。ぜひ、SIerにはユーザーへの積極的な提案をしていただきたいですね。