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<業務ソフトメーカー座談会>クラウド、モバイルで新機軸の事業モデルを 主導権争いに火花を散らす
2012/02/16 19:56
週刊BCN 2012年02月13日vol.1419掲載
エンジニアが足りなかったということ以外にも、いろんなところで“バケツに穴が開いた”状況でした。東海・北陸地区は、兄弟会社のナゴヤピーシーエーが営業する権利をもっていましたが、2010年11月に営業の権利を譲り受け、ようやく他社並みの全国体制を築くことができました。また、M&Aによる医療情報システム分野への参入や、就業管理システムの新会社「クロノス」を設立しており、それぞれが業績に貢献しています。
SEが充足し、商圏も拡大でき、2011年には「PCA Xシリーズ」を発売することができました。OBCに遅れること1年。30年を超える歴史のなかで、大きな差をつけられてしまったことは問題だと感じていました。ただ、開発環境に「Microsoft .NET Framework 3.5」を採用している点では同様ですし、基本的な機能も劣りません。今秋には「PCA Xシリーズ」クラウド版もリリースします。また、2012年1月からのテレビCMの開始や大幅な人員増加を図るなど、積極的な経営を進めています。
弥生 岡本浩一郎社長 |
「4月に立ち上げる『弥生オンライン』がチャレンジ商材。既存パッケージのターゲットよりもさらに小規模な法人・個人事業主を、会計事務所と一緒に開拓していこうと考えています」 |
ここ3年で、当社は、この座談会に出席しておられる皆さんとは違う方向で事業を進めてきました。2007年時点では、皆さんに追いつこうとしていました。それまで、主に家電量販店で販売していましたが、訪販に力を入れるために、ネットワークシリーズを積極的に売り出しました。ところが、残念ながら思うようにいかなかった。企業が成長するうえで新たなチャレンジは必要ですが、既存の基盤をしっかりと固めてやっていかないといけない。結果的に、ターゲットの積極拡大は、当社の経営基盤を揺るがすことになりかねない状況になっていました。小規模法人、個人事業主のお客様からすると、「そっちに行っちゃったのか」とみられて……。
その失敗を踏まえて、2008年の社長交代のタイミングで大きく方針を変えました。核となるお客様は小規模法人であることを明確にしました。2010年には、少し業績が回復して、2011年は過去最高の売り上げと利益を計上しました。
製品面では、2007年時点で十分ではなかった開発投資を増やしました。「.NET Framework」ベースの開発に切り替えて、開発環境は「Visual Studio 2003」だったのが、今は「Visual Studio 2010」になっています。また、「Windows Presentation Foundation(WPF)」というテクノロジーを本格的に使い、これが製品面できちんと成果に現れてきました。
前のシリーズである「弥生会計11」の確定申告機能にWPFを全面的に採用し、使い勝手が従来とまったく異なる次元のものとなりました。2011年の7月には「やよいの見積・納品・請求書 11」をリリースし、12月には「弥生給与12」の年末調整機能をつくり直しました。今年4月には、クラウドサービス「弥生オンライン」が立ち上がります。2~3年かけて開発してきたモノが、ようやく日の目をみることになります。
業績は各社とも好調
――2011年は東日本大震災が発生し、IT業界に大きな影響を与えた1年でした。震災後の業績はどう推移しましたか。岡本(弥生) 2011年は非常によい結果が出た年でした。2010年の春くらいから明確に上向きのトレンドがみえてきたと思います。たしかに震災の影響を心配していましたが、数字をみると、6月にはほぼ影響がないくらいに回復して、9月の決算期以降も極めて順調です。
残存者利益で、家電量販店でアクティブなのは当社以外ではソリマチくらい。直近の12月時点では、会計ソフトの金額ベースのシェアが80%を超えました。家電量販店をキーに、小規模法人向けにアピールしてきたことが結果につながっています。
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