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サイボウズ 構想4年、満を持してクラウド開始 「cybozu.com」を立ち上げ、基盤を構築
2012/01/05 19:55
週刊BCN 2012年01月02日vol.1413掲載
セキュリティに強いこだわり
青野慶久社長 |
クラウドへの取り組みについていえば、パートナーがサイボウズのソフトを活用してクラウドを提供することはあっても、サイボウズ自身が自社のクラウド基盤を活用してサービス提供することは、これまでなかった。ただ、この数年、水面下では調査・研究を重ねていたのだ。
実は、今回開始した「cybozu.com」は、構想から数えれば、およそ4年を費やしている。「調査・研究期間を経て、クラウドに多額の資金を投じようと決めたのは09年。クラウドが受け入れられる環境になったと肌で感じた」と青野社長は、当時を振り返ってこう話す。
「cybozu.com」とは、サイボウズがクラウドを提供するためのIT基盤を、自社で構築・運用し、自社のソフトを中心に、複数のメニューをラインアップして従量課金制で提供するもの。セキュリティにこだわり、一般的なID・パスワードによる認証に加えて、企業ごとにサブドメインを発行することで個別のログイン画面を提供。その上、より強固なセキュリティを実現するため「2ファクター認証」を採用し、「クラウド=危険というユーザーの不安を取り除いた」(青野社長)。これはID・パスワードという利用するユーザーだけが「知っている」認証に、IPアドレス制限やPKI認証など利用ユーザーだけが「持っている」認証を加えて二重化し、セキュリティ強度を高めるという仕組みだ。
新たなチャンスをパートナーに
サービスメニューは、まずは、主力ソフトの「サイボウズ Office」と「Garoon」をクラウド化したサービスを開始。それと同時期に新開発した「kintone」と呼ばれるアプリケーション開発環境の提供を始めた。「kintone」は、プログラミングの知識をもたなくても、業務アプリをウェブ上で容易に開発できる基盤で、ワークフローや情報共有、業務管理などのアプリを簡単につくることができる。「“ファストシステム”がキーワードで、ファストフードのように速くて安いけど、一定の品質を満たしているのが強み。これまで多くの時間と費用を投じてアプリを開発してきたやり方を劇的に変える」(青野社長)。「kintone」の月額料金は880円から(1ユーザー)。「自社のクラウド基盤を構築し活用しているからこそ、この低価格を実現できる」と青野社長は鼻を高くする。
こうした特徴をもつクラウドを、サイボウズはパッケージソフトの販売と同様に、パートナー企業との協業で拡販しようとしている。青野社長は、「クラウドになれば、SI事業を手がけるITベンダーのビジネスが減るといわれるが、そうではない。むしろ『cybozu.com』はビジネスチャンスを広げるチャンスになると確信している。『cybozu.com』は、APIを公開しており、ITベンダーが関連するアプリを容易に開発することができる。また、それを『cybozu.com』のラインアップに加えて弊社のパートナーが販売する可能性もある。『kintone』を開発ツールとして活用し、効率的にアプリを開発することも可能になる」とメリットを挙げる。
発売してから間もないが、「パートナーからの反響は非常に大きい。モバイル端末とセットで販売したいというパートナーがいたり、海外での販売に興味を示してくれるITベンダーがいたりと、高い評価を得ている」と青野社長は手応えを感じている。
サイボウズが満を持して投入した「cybozu.com」。多くのユーザーに受け入れられたソフトの機能や技術を移植し、国内にあるサイボウズのクラウド基盤で運用するサービスは、ITベンダーにとって、クラウド事業を推進するための武器になるだろう。
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