Special Issue
ハイブリッド型のニーズが高まる クラウド時代の運用監視サービス
2011/11/24 19:56
週刊BCN 2011年11月21日vol.1408掲載
BCPやDRがクラウド移行を後押し
業務システムをさまざまなロケーションで運用できることは、ユーザー企業にとってシステムの有効活用やコスト削減の面で、多大なメリットにつながる。これまで、自社の電算室(サーバールーム)で運用することが多かった日本のユーザー企業だが、東日本大震災と電力事情の悪化を受けて、設備の整ったDCに移設する動きが広がっている。さらに、サーバー仮想化技術を駆使したクラウドコンピューティングを活用すれば、クラウド間の連携が格段に容易になり、「Windows Azure Platform」や「Amazon Web Services(AWS)」といったパブリッククラウドの利活用もしやすくなる。
クラウド化によって情報システムは広域化、グローバル化がしやすくなっていることに加え、震災や電力事情の悪化によってBCP(事業継続計画)やDR(災害復旧)に対するユーザー企業の関心も高まっている。具体的には、クラウドを活用して情報システムを分散したり、遠隔地でバックアップしたりするリスク管理のニーズが拡大。ユーザー企業は、自社の電算室のみならず、SIerが運営する信頼性の高いDCで運用されるエンタープライズクラウドサービスや、Windows AzureやAWSなどの安価で利便性の高いパブリッククラウドを組み合わせて、自らの情報システムの最適化を急ピッチで進めようとしているのだ。
ロケーションフリーで統合監視
しかし、実際に自社でプライベートなクラウドを所有したり、SIerの運営するエンタープライズクラウドやパブリッククラウドベンダーのサービスを活用したりする局面で問題となるのが、システム運用である。プライベートやエンタープライズの運用ならSIerによる運用支援が期待できるが、パブリッククラウド系のサービスは、その仕組み上、人手がかかるサポートはほとんど見込めない。そこで注目を集めるのが既存システムとパブリッククラウドの両方のサーバー運用を監視する統合型の監視サービスである。
大手SIerの日立システムズは、このニーズをいち早く察知し、2011年4月からSaaS方式による統合監視サービス「App Bridge Monitor(アップブリッジモニター)」の提供を始めている。運用監視系のシステムは、古くから販売されているものの、既存システムとパブリッククラウドの両方をSaaS型で監視できるサービスは世界的にみても先駆的である。料金体系は、時間課金方式を採用するケースが多いパブリッククラウドとの相性をよくするため、サーバーまたは仮想マシン(VM)1台あたり1.25円/時(税抜き)からという設定で、申し込み完了後からすぐに使い始められる。
図の「App Bridge Monitorによる監視イメージ」で示したように、Windows Azureに標準で対応しているばかりか、AWSやユーザー先の電算室、SIerのDCでなどを分け隔てなく監視できる。ユーザー企業の運用担当者や開発者は、プライベートやエンタープライズ、パブリックのいずれのクラウドも統合的に監視していくことで、管理工数が大幅に軽減でき、システム運用の信頼性も高められる。今はサーバーやデータベースの統合監視が中心だが、日立システムズでは今後、ジョブ管理系の分散バッチ支援サービスや処理能力を制御するスケールコントローラ機能の拡充を図っていく方針を示している。
次ページでは、「App Bridge Monitor」サービスについて、より詳しくレポートする。
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