今年8月、米ヒューレット・パッカード(HP)は、パソコン事業を切り離すという報道で話題を呼んだ。「BCN Conference」において、日本HPは国内の販売パートナーに向け、パソコン事業について言及した。同社パートナービジネス統括本部の玉利裕重統括本部長は、「HPの戦略と最新状況:クラウドコンピューティング時代のITチャネル戦略」と題したセッションで、パソコン事業の今後の方針に言及し、同社が力を入れているクラウド戦略の概要を説明した。
<2011.10.14開催 BCN Conferenceレポート>  |
| 日本HPの玉利裕重統括本部長 |
米HPは今夏、長期の事業成長を目指した一環として、「パソコン事業の分社化を検討している※」と発表し、ビジネスの重点をクラウドコンピューティングに置く方針を明らかにした。玉利統括本部長は、「米国本社は、今、分社化をはじめとした改革を検討しており、パソコン事業の今後の方向を考えている最中だ」として、「最終決定については、現時点でまだ何ともいえない」と語った。また、日本での事業方針に関して、「パソコン事業が健全性をもっており、今後も展開に注力する。と同時に、パソコンをはじめとするハードウェアにとどまらない方向にビジネスを拡大していきたい」と述べて、サービスを重視する方向性を示した。
玉利統括本部長は、「日本のユーザー企業は、ビッグデータ(大量の情報)の処理やビジネスの継続計画にあたって、このところ、クラウドへの関心を高めている」とみて、クラウド市場のポテンシャルが大きいと判断している。
セッションでは、日本HPのクラウド戦略の柱となるものを披露した。同社がクラウドを切り口として提供するソリューションは、「プライベート(企業内)クラウドの構築」「インフラ提供などのクラウドサービス事業者への支援」「HP開発のクラウドサービスの展開」の三つの分野をカバーする。製品とサービスを融合させて、広い分野でクラウドを展開する戦略だ。
日本HPは、クラウド事業の拡大に拍車をかけるために、パートナー支援を重視している。例えば、サーバー/ストレージ/ネットワーク製品向けのプログラム「PartnerONE」を実施している。「2011年10月時点で、伊藤忠テクノソリューションズ、SCSK、日商エレクトロニクス、横河レンタリース、菱洋エレクトロが『Platinumパートナー』として参加しており、プログラムは好調に進行している」(玉利統括本部長)ところだ。今後、独立系ソフトウェア開発企業(ISV)に向けた支援を強め、「PartnerONE」の拡充に取り組んでいくという。
さらに、日本HPは今、クラウドサービスプロバイダを支援する制度「CloudAgile」の開始に向けて、準備を進めている。「CloudAgile」は、販売協調の推進、新規マーケットの開拓支援、サービス提供加速の支援の三つにおいて、クラウドサービスプロバイダを全面的にサポートするものだ。玉利統括本部長は、「早期にプログラムの開始を目指しているので、ご期待いただきたい」とパートナーに熱いメッセージを送った。
※米国時間2011年10月27日-ヒューレット・パッカード カンパニーは同日、パーソナルシステムズグループ事業に関する戦略的位置づけの検証を終え、PSGを同社の一部として維持、継続展開することを決定しました。