Special Issue
<IT業界の主要各社が展開する“次の一手”>NEC “人と地球にやさしい情報社会”へ
2011/10/07 19:55
週刊BCN 2011年10月17日vol.1403掲載
スリムサーバ Express5800/GT110d-S | スレートPC VersaPro タイプVT | クラウドコミュニケーター LifeTouchセキュリティパックモデル |
C&Cクラウドを核としたNECの取り組み
震災をきっかけとしてICTの役割を再認識
岩波利光 代表取締役執行役員副社長 兼 CMO(チーフマーケティングオフィサー) |
「C&C」とは、「コンピュータ技術と通信技術の融合」を意味する言葉。同社は1977年に「C&C」を提唱して以来、コンピュータと通信を融合した技術・サービスを提供し、多くの実績を重ねてきた。最近では、ITシステムの新たな利用形態として「クラウド」が注目を集めている。そんななか、同社は「C&C」の推進で培ってきた技術力を生かして、「C&Cクラウド」という新たな名称を掲げ、ビジネスの原動力としている。具体的には、(1)企業や個人、官公庁に向けた「クラウドサービス」、(2)これらのサービスを支える「クラウド基盤」、(3)ユーザーのインターフェースにあたる「Android端末やセンサ」――の3つの要素からなる。これらを用いて、顧客の多様なニーズに応えられるサービスを提供している。
加えて、今回の東日本大震災では、NECグループ全体で30社、77拠点が被災した。とくに東北エリアの生産拠点では、建屋や設備が損傷するなど、甚大な被害を受けた。幸いにも、社内の重要業務に関係するシステムやデータセンターは震災直後から運用を継続しており、震災後12日目の3月23日には全生産拠点で稼働するまでに回復している。
「多くの企業が今回の東日本大震災で甚大な被害を受けましたが、今後の日本の復興に向けて、『これからのICTに求められるもの』を再認識した」という。一つは、大量データの収集・解析を通じて正確で迅速な情報伝達を行う「予知・予測」、次にBC(事業継続)対策の強化やクラウドサービスの活用による「予防」、さらに、バックアップやライフライン復旧による「再構築」という三つのキーワードだ。
また、これらのポイントを踏まえ、災害に強いICTを構築するには、「『BC対策』と『エネルギー対策』を、『今できること』と『次のアクション』という2段階に分けて実践することが重要」という見方を示している。
例えば、BC対策での「今できること」といえば、あらかじめバックアップ装置を備えたり、安全なデータセンターへ預けることなどが考えられる。「エネルギー対策」での「今できること」であれば、省エネ機器への置き換えといった節電対策が主になるだろう。将来に向けた「次のアクション」を考えるのであれば、「BCP(事業継続計画)の見直しなどによってクラウドサービスの活用や仮想化によるインフラ統合などを行う必要があるといった具合だ。
物販からサービス販売へ
販売店との協業を強調
災害に強いICTを構築するうえで欠かせない存在となっているのが、クラウド・サービスだ。クラウド・サービスは主に、エンドユーザーの業務システムを構築・運用する「プライベートクラウド」と、外部のクラウド・サービスを利用して最適な業務システムをエンドユーザーに提供する「パブリッククラウド」という二つの提供パターンがあるが、「販売店のビジネス拡大に向けては、とくにパブリッククラウドを活用した販売戦略が今後のカギになる」と指摘している。
「販売店は、従来、お客様のプライベートクラウドを構築・運用するための物販ビジネスが主流だった。しかし、今後はパブリッククラウドを活用して、販売店自らがクラウド・サービスを提供する戦略が重要になる。販売店にはこれまで、PCやサーバの販売でご協力をいただいた。今後はこれらに加え、次世代の製品やサービスを通じて、販売店と共同で展開するサービスを提案していきたい」と、あくまでも販売店と共に「C&Cクラウド」を推進する考えだと強調する。
その中で注目されるのが、これまで培ってきたクラウドサービスのノウハウを生かし、クラウド構築の新たなトピックス、世界初となる次世代ネットワーク技術「OpenFlow」を採用したネットワーク製品「プログラマブルフロー」だ。従来のネットワークは、あらかじめ最大限の帯域を確保しなければならず、初期費用がかかっていた。しかし、プログラマブルフローによってネットワークを仮想化し、負荷に応じてスケールアウトすれば、コストを削減することができる。サーバやストレージに加えて、ネットワークも仮想化するので、管理者の運用がシンプルになるメリットもあるという。「まさに、クラウド・サービスのシステムにマッチした製品だ」と、この先進的な製品を中核としたクラウド市場の開拓に期待が高まる。
また、クラウド・サービスにマッチした新端末として同社が提供するのは次の3製品だ。1つ目は、Android搭載クラウド端末「LifeTouch」シリーズだ。「LifeTouch」シリーズは、7インチタブレット「LifeTouch」をはじめ、二画面の折りたたみモデル「LifeTouch W」、ハードウェアキーボードとタッチパネルを搭載した「LifeTouch NOTE」と、エンドユーザーのライフスタイルに合わせた柔軟なラインアップを用意した。
2つ目は、Windows 7 Professional搭載のスレートPC「VersaProタイプVT」だ。キーボードレスの10.1型タッチパネルを採用したスレートPCは、指先だけで自由に文字や写真を拡大縮小でき、操作が簡単。軽くて持ち運びやすく、例えば展示会での商談やプレゼンテーションでの利用、内蔵のWebカメラを使ってオフィス-現場間でビデオ通話を行うなど、わかりやすく正確に伝える・コミュニケーションを図ることに適している。3つ目は、デジタルサイネージキット「美映エル(ミハエル)」だ。店舗や駅、ホテルなど公共の場でのインフォメーションに活躍。クラウドの端点としての選択肢が広がるだろう。
新たなイノベーションを提供
最後に、今後のNECの取り組みについて代表的なものを紹介した。 環境への取り組みという点では、大手住宅メーカーとの事業提携によって実現したスマートハウスがある。太陽光発電を搭載した住宅とHEMS(ホームエネルギー・マネジメントシステム)を組み合わせた暮らし方をエンドユーザーに提案。利用者はクラウドサービスによって、電気料金をリアルタイムで把握(見える化)できる。
また、医療の分野で広域災害を考慮した医療持続システムに取り組んでいる。これは、各地の支援センターと連携し、地域全体で医療情報を保全・共有。平時は地域医療連携を目的に活用し、災害時にも継続して医療情報を参照できるシステムとなっている。
国内市場では、クラウドや環境をキーワードとして展開していく。その一方で、グローバルも視野に入れた取り組みも拡大している。最近では、中国のエンドユーザーに最適なトータルソリューションを提供するために、中国のパートナー企業・団体と協業し、現地でのサービス提供拡大を目指している。
中国関連では、レノボグループと合弁会社を設立し、両社の強みを生かしてPCの製品力を強化した。東軟集団(ニューソフト)とは、クラウド・サービスの提供で協業し、豊富なサービスメニューを整備した。信頼性の高い総合的なクラウド・サービスの提供を開始し、実績を上げつつある。例えば、中国の大手医薬品流通卸会社である九州通医薬集団に対しては、RFIDを活用した医薬品の物流管理システムを納入するなど、中国国内で着実に新たなビジネスを展開している。
「当社はこれまで培ってきたノウハウや技術をもとに、中国でのビジネスをサポートする体制を整えている。今後、当社とともに中国でビジネスを行いたいという販売店は、ぜひ、お声掛けいただきたい」と、メッセージを送る。
「C&Cクラウド」を核に、未来へ向けたイノベーションでビジネスを開拓しようとするNEC。今後も新たな市場を創出し、国内外のIT市場をけん引していくだろう。
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