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<中国導入事例>日立情報システムズ 日系製造業にクラウド型の「TENSUITE」を導入

2011/09/29 19:55

週刊BCN 2011年09月26日vol.1400掲載

 日立グループの商社に勤めていた日本人が創業したGENICグループの製造会社であり、半導体・液晶製造装置メーカー向け多品種・小ロットの樹脂切削部品・PVC溶接加工及びユニット組立品の製造などを手がけるGENIC電材『「捷而科電材(上海)有限公司(・正式名称)」』は、多品種・小ロットの生産管理を効率化するために、日系企業向けにITシステムを提供する上海科富信息技術(楊軍総経理)の提案を受け、日本の日立情報システムズが開発した、中国国内用にクラウド型で展開する在庫管理システム「TENSUITE・クラウド」を導入した。それ以前は現地のシステムを検討していたが、同社の特殊な業務形態に合致した製品が見当たらず、Excel中心の管理をしていた。だが、「TENSUITE・クラウド」を導入したことで、在庫管理をリアルタイムに把握でき、適切な生産判断を可能にした。

導入企業:捷而科電材(上海)有限公司

特殊な生産管理にも対応!

 GENICグループは、日本と中国の“架け橋”を担う企業で、2002年に日系の装置産業向けに中国国内から部品を調達して納品する商社「捷尼克貿易(上海)」を設立、事業を開始。創業から数年が経って同社の認知度が高まるとともに、顧客の調達品目・種類も増加、その一つである樹脂切削加工、樹脂溶接を製造する目的で05年1月に上海市の松江工業区に製造会社「捷而科電材(上海)」を設立した。

 同社の主要顧客は、日本や欧米などの半導体・液晶製造装置メーカーといったグローバル企業だ。最近では、太陽電池用の部材を商社として取り扱いも開始し、事業領域を拡大している。多くの日系企業は、装置や部品の原価を引き下げる目的で中国国内で部品を調達している。しかし、「中国の人件費や物価が高騰し、ものによっては日本の工場で生産したほうが安価となるケースがある。加えて、特注製品が多く、付加価値を高めながらも安価な製品を生産しなければならない。こうした顧客のニーズに応えるために、スピードと効率化を追求する必要性が高まった」と捉えて、山本董事長兼総経理はシステムの最適化に着手した。

 今回、捷而科電材(上海)が採用したシステムのベースとなったのは、日立情報システムズの「TENSUITE」である。TENSUITEは、日本国内の製造業や卸売業などに向けて3000システムの導入実績がある。これを広州にあるデータセンターから中国の企業向けにクラウド型で提供しているのが「TENSUITE・クラウド」だ。

 この導入を手がけたのは、主に中国国内の日系企業向けにERP(統合基幹業務システム)などのシステム構築を事業としている上海科富信息技術である。同社の楊総経理が捷而科電材(上海)の山本董事長兼総経理の相談に乗るなかでシステム導入を検討し始めたという経緯がある。「日立グループの製品であり、信頼できる人(楊総経理)からの紹介で、しかも手頃な値段だった。無料の試用期間もあって、フィット&ギャップを事前に確かめることができる」(山本董事長兼総経理)という理由で導入を決めた。2011年4月に製造工場関係の部品や帳票類などを棚卸しして、6月には、日立情報システムズの担当者が訪れて最終調整。わずか2か月でカットオーバーにこぎ着けた。

 当初、捷而科電材(上海)は中国大手ERPの生産管理システムを検討していたが、「身軽な状態で事業を拡大したい」(山本董事長兼総経理)と考えて、できるだけ資産を保持しない方針を打ち出すとともに、検討対象としたシステムの費用対効果に疑問を抱き、この導入を断念している。

 システムを手がけた上海科富信息技術の楊総経理は、「『TENSUITE-クラウド』は、世界中どこからでもインターネット経由で在庫状況などを確認することができる。しかも月額料金は2000元(約2万5000円)からと安価だ」とアピールしている。捷而科電材(上海)の山本董事長兼総経理は、中国国内や世界を飛び回っている。「工場へ来たり、生産管理の状況を把握する女性職員に電話したりすれば、在庫の状況などは把握することができる。しかし、供給責任と納期を遵守するうえでは、より迅速な判断が求められる。『TENSUITE・クラウド』を導入したことで、インターネットがつながれば、世界中どこでも在庫などを把握でき、生産状況を“見える化”することができた。これによって、毎日午前中に行っていた在庫確認等の作業が最大で20時間も削減できた」と、高く評価している。

 現在、捷而科電材(上海)は、次のステップを検討しているところだ。楊総経理は「生産実態に応じて、工程管理や端材管理までができるソリューションを検討したいとの要望を受けているので、早期に提案する」という。上海科富信息技術はこの導入を機に、「TENSUITE・クラウド」を年間50社の導入と関連ソリューションの提供拡大を狙う方針だ。

■COMPANY DATA

捷而科電材(上海)

捷尼克貿易(上海)/捷而科電材(上海) 董事長兼総経理 山本佳則 氏

捷而科電材(上海)の製造工場は、上海中心部から杭州方面に車で40分程度の場所にある工業団地「松江工業区」内にある

 GENICグループは、商社部門の「捷尼克貿易(上海)」、製造部門の「捷而科電材(上海)」、日本国内の商社「ジェニック」からなる。2002年6月に日中の製造業の“架け橋”となる貿易商社として設立。上記3社でグループ会社を形成。半導体・液晶製造装置メーカー向け多品種・小ロットの金属・樹脂切削部品及びユニット組立品の調達・製造などを手がける。従業員数65人。山本佳則董事長兼総経理は同社創業前、日製産業(現・日立ハイテクノロジーズ)に9年勤務、うち中国に6年駐在していた。


上海科富信息技術

 正式名称は「上海科富信息技術有限公司」。代表を務める楊軍(Yang Jun)総経理は日立製作所内のITシステム担当技術者の経験者。2001年5月に中国に進出する日系企業向けシステムのベンダーとして同社を設立。現在、従業員は22人。主に、生産・貿易関連の日系企業向けのERP導入や企業内のシステム構築と保守サービスを展開している。取り扱い製品は、SAPのERPや日本ベンダーの基幹システムがメイン。最近では、日系銀行のシステム切替マネジメント支援も手がけている。
上海科富信息技術
総経理 楊軍 氏
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