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<データセンター事業者座談会>BCP対策の見直しで注目集まるDC市場 主要5社のキーマンが現状と戦略を語る(後編)

2011/08/25 19:56

週刊BCN 2011年08月22日vol.1395掲載

 ニコラ(KVH) 三つのトピックがあります。その一つはクラウド、二点目がスペースや周辺設備を必要に応じて柔軟に増減できる環境を提供するモジュール型、そして三点目が海外も含めたサービスの充実です。当社は、2010年にクラウドサービス(IaaS)を開始し、データセンターとネットワークを基盤に統合的なインフラサービスを提供しています。DCの拡充も図っており、千葉・印西市のDCは、都心からの容易なアクセスと強固な地盤が特徴で、将来を見据えて最大4棟が構築可能な土地を確保しています。これらによって、今後拡大が見込まれる他のクラウド事業者や、当社の主要顧客層である金融サービスのBCPやDRニーズに対応した、アジアの中核的なクラウド・BCPDCを目指しています。当社のネットワークは、東京、大阪、シカゴ、ニューヨーク、シンガポール、香港、上海、シドニーなど、アジア、北米の主要な金融都市を接続しています。さらに国内、アジア、ヨーロッパのパートナーと連携して提供サービスエリアを拡大し、質の高いグローバル・ソリューションを提供します。

 古田(エクイニクス) 当社のワールドワイドでの過去4年間の成長はM&Aを含めて38%(年率換算)に至ります。2013年に20億ドル(約1600億円)を目指していますが、これは十分に達成できる見込みです。とくにアジア市場での成長率が高く、最も重視している市場です。そのため投資もこの地域がメインになっています。今後、オーストラリアのメルボルン、大阪、韓国、インド・ムンバイなどにDCの拠点を拡張することを検討しています。

 大槻(エクイニクス) 当社のDCは世界各地で得たCO2削減や災害対策のノウハウを取り込んでおり、これに日本独自の設計を付加しています。本年6月に運用を開始したTY3 IBXデータセンターを含め、建設するDCは、常に最新の設計思想を意識しながらも、日本の良い部分を取り入れ、さらに進化した高効率のセンターを実現してまいります。

IDCフロンティア
山中 敦氏
「新白河データセンター(仮称)」のPUE値は、世界トップレベルである1.2以下の水準を実現します」
 山中(IDCフロンティア) DCとクラウドという二つのトピックがあります。まずはDCについてですが、福島県白河市に建設予定の「新白河データセンター(仮称)」は、北九州データセンターのアジアン・フロンティアと同様に、需要に応じて建設を行うモジュール方式および大規模な外気空調方式を取り入れています。さらに、北九州で得たノウハウを基に、温度、風速、気圧などのシミュレーションにより、年間を通じて90%以上の外気利用が可能となる、さらに進化した空調システムとしています。この外気空調方式による電力削減と併せて、エネルギーロスを減らすことで、PUE値は世界トップレベルの1.2以下の水準を実現できる設計としています。

 もう一つのトピックであるクラウドサービスのNOAHでは、営業マンが全く介在しないセルフポータル型サービスの実現を目指しています。こちらが考えるシステムやビジネスのモデルを押し付けるのではなく、APIの公開やSIerとも密に連携し、要望に対して柔軟に変わっていけるサービスを目指します。

ニーズに対応した拡張性と柔軟性

 ――地方型と都市型という観点から自社の強みをどう考えますか。

 山中(IDCフロンティア) 当社の強みは、地方型と都市型のどちらのニーズにも対応できる点があります。地方については、バックアップ用途やスケールアウト型のニーズがあり、一方、都市型についてはスケールアップ型が向いていますが、首都圏、関西圏をカバーし、地方としても西日本側に北九州、東日本の拠点としての白河をもっていることです。先ほど、エクイニクス・ジャパンの古田さんがおっしゃったように、どれほど強固な施設でも絶対はない。DCも同じことで、一つの施設を極端に強固にするより、地域の分散に勝る対策はないと考えます。その意味からも選択肢を提供できることは強みだと思います。

 古田(エクイニクス) エクイニクスはもともとインターネット・エクスチェンジからスタートした企業であり、キャリアをはじめ各分野の企業が、地理的に離れた場所ではなく、一つのデータセンター・キャンパス内で相互接続できる環境(インターコネクション・ポイント)を提供しています。その意味からも、DCの場所は自ずと決まってきますね。

エクイニクス・ジャパン
大槻 顕人氏
「世界各地で得たCO2削減や災害対策のノウハウを取り込み、日本のよい部分を取り入れ、さらに進化した効率の高いDCを実現します」
 大槻(エクイニクス) また当社は、以前は通信サービスを提供しておりませんでしたが、数年前からは顧客のご要望に応えてデータセンター内でのインターネット接続も提供しています。昨年からはキャリアのイーサネットサービス同士のNNI(Network Network Interface)接続を支援するサービスの提供なども始めており、より一層ネットワーク密度が高いデータセンター環境を提供しています。

 齋藤(KVH) 千葉・印西市のDCは、敷地総面積が約3万m2、将来的に現在の規模の施設を3棟建設することが可能で、最新の技術と設備を取り入れながら段階的に拡張を図ります。また、大口顧客向けにホールセールモデル(フロア貸し)の提供も特徴的なコンセプトとしています。当社は、金融機関が主なターゲットということもあり、要求されるセキュリティや設備仕様に合わせて、各階ごとに要件に合わせた構築ができるなど、高い柔軟性の提供も強みとしています。

 田中(さくらインターネット) ユーザーのニーズに合わせて最適なパフォーマンスを提供するため、ハイブリット・DC戦略を打ち出しています。トラフィック重視の案件はこれまでの都市型DCである東京・大阪で。一方、CPUやストレージを多く使用するものや増設要求に対しては、郊外型DCの石狩で対応するという方針です。また、同業者のニーズに応えるため、電源などのフレキシビリティを高くしました。

 安藤(ビットアイル) 当社は設立時からホスティング事業者などのユーザーが多く、そのため立地性は重要で、これまでは東京中心の一極集中でやってきました。その基本は変わりませんが、リスク分散も今後は検討していかなければならない課題としています。これまでのお話でも繰り返されていますが、たとえTier4の施設でも万全はないわけですから、今後は、地方や海外を含め、別地域の施設の検討も始めています。

国際標準との違いを埋める努力を

 ――最後に、IT製品やファシリティなどの機器メーカー、ベンダーへの要望はありますか。

 安藤(ビットアイル) DCに本当に適応した製品を提供してほしい。多種多様な機能は必要ないのでシンプルで信頼性の高い製品を望みます。実のところ、DCに適した製品は海外に多いと感じています。また、メーカーには、高価な新製品ばかりを勧めるのではなく、既存製品をうまく活用して組み合わせることでわれわれのニーズに応えるソリューションを実現してほしいですね。現状のコロケーションセンターは、ユーザーごとのバランスが決してよいとはいえません。そこで、施設全体だけでなく、局所的に細かくコントロールできるセンサーや制御の仕組みを実現してくれることを望みます。

 田中(さくらインターネット) 一つはサプライチェーンの工夫です。当社でも月に数千台のサーバーがDCに入るのですが、手配がとても遅いと感じます。もう一つは、国際標準との違いです。電源などを含め、海外の標準品が日本のJIS規格と合わなくて使用できないといった例がとても多い。この点はメーカー1社だけの問題ではありませんが、業界全体のテーマとして見直してほしいですね。事業者としては、信頼性の高い製品を安価に提供してもらうことです。

 齋藤(KVH) ネットワーク機器やストレージ機器など、何トンというような非常に大きな設備をセンターに何台も搬入するケースがありますが、その際の対応が大変です。それとやはり、国際標準への対応です。是非、国内規格も歩み寄りをしてほしいですね。

 大槻(エクイニクス) 規格を含めて、DCで使用することを前提とした製品づくりを検討いただければとおもいます。DCでの利用が前提となっていれば、お客様の導入期間の短縮化が図れ、お客様、機器ベンダー、DC事業者すべてにメリットを提供することが可能です。

 山中(IDCフロンティア) とくに、IT機器についての環境対応を高めてほしいと思います。例えば、外気温が40℃でも問題なく連続稼働できるIT機器などがあれば、DC側の負荷だけでなく環境負荷も削減できます。

 ――本日は、どうもありがとうございました。

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