Special Issue
<バックアップソフトメーカー座談会>災害対策、仮想化、クラウドがキーワード
2011/07/28 19:56
週刊BCN 2011年07月25日vol.1392掲載
岩上(ノークリサーチ) 東日本大震災を受けて新たに導入/検討ないしは関心を持ったIT活用項目のうち、バックアップは年商50~100億円で32.9%、年商5~50億円で28.3%、年商5億円未満で20%といずれも高い値となっています。
一方、クラウドへのシステム移行は、年商50~100億円でもバックアップと比べて10ポイント程度低くなっています。これは、今回の大震災による交通網の麻痺などで「サーバだけをクラウドに預けても社員がオフィスに居なければ業務は停止する」という経験をしたことが要因です。つまり、本当に効果のある対策を講じるには在宅勤務なども含め相応のコストがかかることを実感したわけです。ですが、何もしないわけにもいかないので、「まずはバックアップから始めよう」というのが今の傾向といえます。
――ストレージクラフトさんのビジネスはいかがでしたか。
岡出(ストレージクラフト) 当社は4月に設立したばかりで、ラネクシーさんとの代理店契約も5月なので、まだ、語るほどの実績がなく、これからのビジネスの立ち上がりに期待しています。そこで、これまで実施してきた製品への施策をお話しますと、ShadowProtectは仮想化対応しながら低価格にしたことで、より魅力的なソリューションになるものと自負しています。米国では、MSP(Management Services Provider)事業者2500社に導入いただいており、日本でもMSPが利用しやすいライセンス体系を導入したので、ここをぜひ開拓していきたいと思います。3月11日の影響は確かに厳しさを感じますが、BC/DRの重要性を再認識させたことも事実で、今後に期待しています。
サイオステクノロジー 山崎靖之 氏 |
クラウドを活用したディザスターリカバリーで効率的なBCPを提案する |
吉田(アクロニス) やはり、2011年上半期の売り上げは伸びています。また、大震災の前後では、ビジネスへのアプローチが変わったという気がしています。以前、当社のお客様は1~2ライセンスでの購入が中心で、単体でのバックアップを行っているというケースがほとんどでした。これが昨年末くらいから、仮想化のニーズが顕著になってきたことから、当社も仮想化にフォーカスした施策を行っていました。そして大震災後はBC/DR対策を念頭に、バックアップを検討する例が多くなっています。
いくらしっかりバックアップしても、システムと同じ場所・施設にデータがあっては、今回のような大規模かつ広域災害では意味をなしません。そこで当社でも、中小企業向けに広域災害に対応できるよう、データの外部保管やリモートを含めて迅速に復旧できるソリューションをご提案しています。また、ソフトバンクBBやダイワボウ情報システム、ネットワールドの皆様と販売代理店契約を締結したことで、これまで東京近辺にフォーカスしていたビジネス範囲を拡大するとともに、ユーザーの皆様の生の声を聞いて、新たなソリューションに結びつけていきたいと考えています。
――仮想化対応へのニーズというのは、実際のところ、どうですか。
<オブザーバー> ノークリサーチ シニアアナリスト 岩上由高 氏 |
パートナーとの協業を強化
災害対策、仮想化への対応が必須に
――次に、2011年下半期に向けた販売戦略を聞かせてください。
山崎(サイオステクノロジー) 一つは、IHV、ISVさんに向けた施策の強化を図っていきます。今までも主要なストレージ製品との動作検証を行ってきましたが、今後さらにここにおられるIBMさんをはじめ、メーカー各社との連携強化を図り、よりタイムリーに動作検証を進めていきたいと考えています。次に、製品単体の販売にとどまらず、ソリューションに高めていくためにイニシアティブを取っていきたいと思います。具体的には、事業継続(BC)や災害復旧(DR)対策、その環境構築のためのコンサルティング、システム高可用性の設計サービスなどですが、すでに取り組みを始めています。また、クラウド事業者さんと連携し、そのインフラを活用してDRサイトを構築、中堅、SMB向けに提供するといったビジネスを実現するために上半期から取り組んできましたが、下半期にはこれが具体的にスタートする予定です。
吉田(アクロニス) 二つの施策を考えています。まず一つは、当社製品は単体販売が多く、これを引き続き確実に伸ばしていきたいと思います。新たに流通3社と契約したので、代理店に過度に依存せず、メーカーとして責任をもって取り組んでいきます。また、サーバーやNASとセットで購入されるケースでも、ハード/ソフトベンダーとの協業をより強化し、日本法人が主体となって検証し、販売をサポートしていきます。
二点目は、製品の使い方に対する認知度を向上させるための施策です。従来のような、1、2ライセンスだけでなく、ミッドレンジ以上のユーザーの皆様へのアプローチを、パートナー企業の皆様と共に狙っていきます。そのためDB系アプリケーションや仮想環境の保護、テープライブラリのサポート、パフォーマンス向上といった製品の機能強化も進めていきます。
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