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<特集 デジタルサイネージ>エコ・サイネージへの挑戦 消費電力を抑えるマルチディスプレイの未来

2011/06/09 19:55

週刊BCN 2011年06月06日vol.1385掲載

 「デジタルサイネージ」を構成するLSI(半導体)、マザーボード、ソフトウェア、ディスプレイに関係する先端技術をもつ国内外のITベンダー4社が陣営を組み、各社のテクノロジーを融合した低消費電力駆動で、かつ多機能な「ecoサイネージ」の開発・販売に本腰を入れる。日本のデジタルサイネージ市場はここ数年、需要が堅調に伸びている。しかしながら、世界の先進国・新興国に比べると普及速度は遅く、利用シーンも限られている。ここにきて、消費電力への関心も高まってきた。そこで同陣営は、低消費電力駆動を実現しながらも、1台のサイネージプレイヤで最大6台のディスプレイに対して同時に異なるコンテンツを表示することができる安価なデジタルサイネージシステムを製品化し、今後、同市場の活性化を狙う。

岡谷エレクトロニクス
Lanner
アクセル
SCALA

(左から)Lanner Tony Chiu Sr.Sales Manager、Lanner Sophia Tseng Sales Departmen Senior Manager、アクセル 岸本貴臣 営業グループマネージャー、岡谷エレクトロニクス 橋本和典 第一営業本部カスタムソリューション推進部部長、SCALA ギヨム・プル 社長

低消費電力駆動とマルチディスプレイ対応の製品

 同陣営が推進する「ecoサイネージ」の開発において、要素技術となるソフトウェアとグラフィックスLSIは、それぞれサイネージ専業ベンダーのSCALA(米SCALA社の日本法人)と組込み機器グラフィックスLSIメーカーのアクセルが提供し、サイネージプレイヤの設計から生産までを台湾のLanner社が担う。LSIや通信などの先端技術を用いたシステムソリューションを手がける岡谷エレクトロニクスは、国内顧客のニーズに基づいてサイネージプレイヤ、ディスプレイ等のハードウェアシステムの構築をおこなう。販売は、岡谷鋼機グループが持つ販売網に加え、SCALAの国内販売代理店とも連携して拡販する計画だ。

 今回の4社アライアンスで中心的役割を果たす、デジタルサイネージに特化したソフトを開発・販売するSCALAのギヨム・プル社長は、日本市場の現状をこう説明する。同社は東京各所に設置されたサイネージにソフト提供しているが、「電力不足の影響で、サイネージを消灯する傾向が強まっている。しかし、病院や銀行、監視システムなど止められないサイネージも多い。低消費電力駆動で、かつマルチディスプレイ表示ができるサイネージが求められている」。同社は、各ユーザーに適したコンテンツの制作と最適なデジタルサイネージネットワークを実現できるソフト「Scalaシリーズ」を提供する。

 一般的に、同陣営が目指すマルチディスプレイ対応を実現する場合には、高性能PCに複数枚のグラフィックス・カードを装着する必要がある。しかし、「複数のグラフィックス・カードに頼ると、システム構成が複雑で消費電力も高くなる。また、コストアップも避けられない。そして、このようなグラフィックス・カードはコンシューマー向け製品が主流のため、供給面に不安があり、システムメーカーから受け入れられない。そこで、これら課題を解決できるアクセルが参加しました」(SCALA ギヨム社長)。

 アクセルは、ATM、POS、医療機器、計測機器などの組込み機器向けのグラフィックスLSI「AG10」を手がける半導体メーカー。アクセルの岸本貴臣・営業グループマネージャーは「国内のサイネージでは、容易にコンテンツを作成したり、メンテナンスフリーに対するニーズが高く、同時に多機能かつ小型なサイネージプレイヤが求められている」と、これに応えられる既存の国内ベンダーは少ないと話す。

 「AG10」は、同時に4台のディスプレイに対して異なるコンテンツを表示できる高いグラフィックス性能を実現しながらも、ヒートシンクレスという優れた低消費電力で駆動することができる。また、表示解像度の組み合わせに制限されるPCやワークステーションに搭載されるグラフィックス・プロセッサにはない機能をもつ。「変則的なアスペクト比のディスプレイにも柔軟に対応できる」とアクセルの岸本マネージャーは語る。

 SCALAとアクセルの要素技術を組み込んで、サイネージプレイヤとして商品化するのがLanner社の役割だ。同社のTony Chiu Sr.Sales Managerは「台湾国内外の公共・産業用インフラを手がけているが、コンテンツ管理・運用がより重要になっている。当社のVideo Over IPを含むネットワーク・コミュニケーション基盤の構築技術を使って、SCALAとアクセルの製品を組込み、安価で屋外でも耐久力のある商品ができる」と話す。また、同社のSophia Tseng Sales Department Senior Managerは「当社の技術とアクセルの製品が融合することで、ファンレスでメンテナンスが容易なユーザー本位の製品を長期供給することができる」として、各社の技術を持ち寄る優位点を強調する。

 一方、岡谷エレクトロニクスは、「ecoサイネージ」開発の工程や供給体制などの全体を取り仕切る。同社は、「業種業態や設置場所に応じた顧客ニーズを集約して、3社に必要な開発を依頼し、ソリューション体系をつくる」(橋本和典・第一営業本部カスタムソリューション推進部部長)。そのうえで、SCALAの販売代理店などにハードウェア商品を卸す役割も果たしていく。

 いまやデジタルサイネージは、社会インフラとして定着し、必要不可欠なメディアとなった。ただ、市場に出回っている商品は、高価でコンテンツ表現力に乏しい状況にあると同陣営ではみている。この状況を打破する技術と開発力、販売力を備えた同陣営に期待は高まる。


SCALA

●Designer&Player:Windows XP(32bit)、Windows 7(32bit/64bit)、Windows XP Embedded(32bit)、1GB以上メモリ●Content Manager:Windows Server2008R2(64bit)、2GB以上のメモリ

 コンテンツ作成・編集ツール「Designer」、コンテンツ配送・管理ツール「Content Manager」、表示ツール「Player」で構成されるSCALAのデジタルサイネージ・ソリューション「Scala」シリーズは、世界65か国、50万台以上の画面で活躍している。日本語を含む9か国語に対応。コンテンツ作成は、JavaScriptやVBScriptなどの外部システムとの連携が可能。それぞれのディスプレイの解像度・アスペクトに縛られず、複数動画の同時再生やフルHD動画の再生ができる。

<Pick up 岡谷エレクトロニクス取り扱い製品>

組み込み向けグラフィックスLSI「AG10」
●PCI Express ×1/×4 ●ビデオメモリ搭載 ●独立4画面出力:LVDS出力/RGB出力 ●変則的なアスペクト比のディスプレイにも対応 ●最大解像度:1920×1200 ●低消費電力設計(ヒートシンクやファン不要)

 アクセルが提供している「AG10」は、同社最新の組込み機器向けグラフィックスLSI。主にインテル社のx86系プロセッサとWindows OSで構成したシステム向けに開発したデバイスだ。CPUからコマンドを送信するだけで、高度な描画を高速処理できる。また、4画面同時の出力を可能にしながらも低消費電力で駆動。POSシステム、ATM、KIOSK端末など信頼性を求められる用途で高速グラフィックス処理を実現する。

LEC-7900
●グラフィック:Nvidia MCP7A-LP chipset ●CPU:Intel Socket P(Core 2 Duo/Celeron M) ●VIDEO:Dual VGA, DVI-D and HDMI ports ●メモリー:最大 4GB DDR2 memory
LEC-2220P/LEC-2220P2
●グラフィック:Intel HM55 chipset ●CPU:Intel Core i7/i5/Celeron 対応 ●VIDEO:DVI-D and DVI-I ports ●メモリー:最大 8GB DDR3 memory

 Lannerの「LEC-7900」は、内蔵グラフィックスにNvidia MCP7A-LPを採用し、CPUに負荷をかけることなくコンテンツを再生するデジタルサイネージ・プラットフォーム。パートタイムファンを採用し、低消費電力を実現している。CPUの組み合わせで、ロークラスからミドルクラスのサイネージプレーヤとして利用できる。「LEC-2220」は最新のCPUに対応し、ミドルクラスからハイパフォーマンスクラスに最適。パートタイムファンは、外部から容易に交換できる。

<Extra 岡谷エレクトロニクス取り扱い製品>

DS912-QB
●CPU:IntelR Atom E620/E640; IntelR EG20T PCH ●多画面出力:独立2画面 ●メモリー:512MB DDR2 SDRAM onboard(1GB:optional)
LAX100+EXT100
●インターフェイス:PCI Express×1 ●LAX-100出力:D-Sub15 VGAポート×1、24pin DVI-Dポート×1 ●サイズ:120×690mmロープロファイル●EXT-LAX100出力:24pin DVI-Dポート×1、TMDS(HDMI)ポート×4

 DFIのデジタルサイネージソリューション「DS912-QB」は、アクセルの「AG10」を採用したグラフィックボード「LAX100」を搭載することで、4画面出力に対応。縦型・横型どちらのディスプレイにも対応し、画面回転に新たなアプリケーションを必要としない。また、4画面のディスプレイは、それぞれ別の解像度に設定できる。

VWBOX-133A
●最大分割:9画面 ●画面分割モード:3×3●最大対応解像度:3840ピクセル×3072ピクセル

 iNDSのビデオウォールコントローラ「VWBOX」は、従来はハイエンドPC+高級グラフィックカードの搭載が必要だったビデオウォール(複数のディスプレイで画面を構成するマルチビジョン)を、 低価格のイメージプレーヤーからの映像出力でも実現する。1×3や3×3など、さまざまな画面構成の演出ができ、最大9×9面の画面構成まで対応する。

SSAシリーズ
●最高輝度:1000cd/m2 ●動作環境温度:0~50℃ ●LEDバックライト採用

 15~38インチのVESA規格にないアスペクト比(16:3/16:4/16:6)のパノラマサイズLCDモニタ「SSAシリーズ」を中心に展開するLitemax。高輝度・高視野角を実現したオリジナル液晶で、アスペクトのカスタムオーダーにも対応する。

各種製品のお問い合わせ

岡谷エレクトロニクス
TEL:045-475-1502(代表) URL:http://www.oec.okaya.co.jp/ 

岡谷エレクトロニクスは、世界中の優れたプラットフォーム資産を有効活用し、付加価値を付けて、魅力ある製品をいち早く市場に投入する、世界市場で戦えるエンベデッド・ソリューション・プロバイダーです。
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