Special Issue

<クラウドインテグレーション特集>クラウド拡大でDCサービスが多様化 SIer、ISVが利用する時代へ

2011/04/07 19:56

週刊BCN 2011年04月04日vol.1377掲載

 クラウドコンピューティングの普及に伴って、巨大なデータセンター(DC)を保有するホスティング事業社やインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)の業態が大きく変化している。従来は、ユーザー企業にDCを貸し出し、賃貸料を徴収して利益を得ていた。最近は、「場所貸し」だけでなく、各事業社固有のサービスを組み合わせたり、DCを保有しないシステム・インテグレータ(SIer)や独立系ソフトウェアベンダー(ISV)に場所を提供してクラウド・サービスを展開するための支援を行う動きが活発になっている。

サーバーの半数はデータセンターへ
「場所貸し」から脱却


 世界のIT関連調査会社が推計するところによると、サーバー、ストレージなどハードウェアの基幹システムは、今後3~5年で半数がデータセンター(DC)に置かれるようになるという。クラウドの普及に伴って、ユーザー企業の「所有から利用へ」の意識が拡大し、オンプレミス(企業内)にあるシステムをホスティング事業社などのDCへ移動させる動きが活発化するということを端的に表している。

 巨大なDCを保有するホスティング事業社などの業態の主流は、クラウドが浸透する前までは、顧客の通信機器やサーバーなどを事業社の回線設備が整う施設に預ける「コロケーション(ハウジング)」や機器の運用も含めて事業社に任せる「ホスティング」によって、賃貸料や利用料で収益を上げていた。この流れと並行して、EC(電子商取引)サイトなどを展開するインターネット事業社がホスティング事業社の場所を貸りて、自社のサービスを展開する用途として活用されるようになった。

 最近では、従来型の「場所貸し」の料金単価が下落傾向にあり、新たな収益源を得る必要が出てきたこともあり、新しい潮流となっているクラウド関連のサービスで収益を得ようとするホスティング事業社が増加している。

クラウドの普及とともにサービス競争が激化
ISVも基盤を借りる時代


 これらホスティング事業を属性別に分けると、以下のように分類できる。(1)ビットアイルなどが属する「ホスティング系」(2)既存のISPが入る「プロバイダ系」(3)通信キャリアの「キャリア系」(4)システム構築会社による「SIer系」(5)電力会社の子会社が属する「電力系」(6)Amazon EC2などの「外資系」――である。これらのうち最大勢力は、主に大手のネットワークサービスやECサイトなど優良顧客を多くもつ「ホスティング系」になる。

 クラウドの普及と歩調を同じくして、これら事業社の競争も激化。一部では単価下落の動きが顕著になっている。そこで各社は、通信機器や回線、ハードウェアの堅牢性などを売りにするだけでなく、クラウドや仮想化、セキュリティなどのサービスを付加したり、マルチキャリアに対応していることを前面に打ち出し、顧客の囲い込みを急いでいる。

 このようにサービスを付加した事業社が狙う次のターゲットが、DCをもたないSIerやISVである。ユーザー企業の多くは、システム全体の統合策を進めて全体の運用保守コストを引き下げたり、運用管理の煩雑さを解消する策を講じ始めている。その際の選択肢として、DCへ預けるという手段を用いている。こうしたユーザー企業を抱えるSIerの場合、自社にDCがなければ、顧客要求に応えることが不可能となる。そんな事情で、ホスティング事業社の場所を借りて、クラウド事業を開始するケースが増えているのだ。

 一方、ISVの場合も同じ傾向にあり、既存顧客や新規顧客を含め、SaaS型でアプリケーションを利用するニーズの高まりに解を出す必要性に迫られている。しかし、イチからDCを建設してSaaSアプリを開発するとなると、膨大な初期投資が必要となる。先行きが読めない新規事業を展開するには、リスクが大きすぎるのだ。そこで、通信環境・回線やセキュリティ環境の整うホスティング事業社のIaaS、PaaS環境を借り、安価に新規事業を開始するISVが増えている。

 この流れは、クラウドの利用ニーズの広がりとともに早まってくることが予想される。

[次のページ]

関連記事

<コスト最適化特集>必要なとき、必要な分だけ リソース供給でコスト最適化

<クラウド・ホスティングサービス特集>ビットアイル 「サーバオンデマンドNEXT」が本格始動

ビットアイル、クラウドサービス「サーバオンデマンドNEXT」を提供