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<プリンタメーカー座談会>クラウドとマネージド・サービスが新たなテーマ 2010年度は市場に晴れ間のぞく(前編)

2011/03/24 19:56

週刊BCN 2011年03月21日vol.1375掲載

官需は昨年の反動から減少
メーカー間の競争激化も影響

 ──では、逆に今年のマイナス面などもお聞きしたいと思いますが、反省点や期待に反して伸びなかった分野などはありますか。

 岡田(NEC)
 官公庁、地方自治体での需要が思ったほどには伸びなかったですね。これは今年度に入ってからの財政の厳しさなどが影響しているように思います。製品別では、モノクロ機の置き換え需要を取り込んでもう少し伸ばしたかったのですが、計画値に届かなかったのが残念な点です。この背景には官公庁の需要がモノクロ中心ということもあります。

 宮西(エプソン販売) 官公庁・文教をはじめとした大口案件の売上が減少している点です。市場の需要そのものが期待ほど伸びなかったことや価格競争により大口案件が受注しにくくなったことが影響していると考えています。10年度は、大口案件の減少を小口のランニング売上げの増加でカバーしている形になっています。

 深野(OKIデータ) 当社は、シェアの小さかったA3モノクロ市場に、COREFIDOを投入して3倍増という強気の目標をたてましたが2倍程度に留まったのが残念な点です。文教分野などではCOREFIDOの5年間無償保証がランニングコストの低減ということで支持されましたが、やはり競争激化の影響はありますし、プリンタの単体売りだけでは苦しいと感じています。

 松永(キヤノンMJ) 対前年比ということでは伸びてはいますが、もっと大きな期待をしていたということではSMBの成長を期待しましたが、他の市場の伸びほどには届きませんでした。

 宮崎(富士ゼロックス) シングルファンクション機は前年同期レベルに留まりましたが、POP出力などのニーズが増加しております。また、量販店などの店頭での出力サービスの需要はかなりあると感じています。まだまだ工夫次第で大きく開拓していける分野で、11年度以降はそうした未開拓分野に向け、さまざまな仕掛けを考えていきます。

 大澤(ブラザー販売) 当社の場合、官公庁での案件獲得はこれからということで、課題になっています。シングルファンクション機は残念な結果で計画には届きませんでしたが、一方でA4複合機は好調でした。ただ、競争は厳しさを増していると感じます。

 中尾(リコージャパン) 当社は、官公庁については大型案件を中心に販売は好調でした。ただ、当社ではLA(ラージアカウント)と呼んでいる民間の中堅のお客様については、出力機を集約化する動きもあり、期待通りの伸びを示すことができませんでした。

業種・業務等への特化がさらに進む
パートナーとの連携は大きなカギ

 ──ここからは2011年度における戦略を伺っていきたいと思いますが、まずは、どの層をメインターゲットとされるのかについて、聞かせてください。

 中尾(リコージャパン)
 11年度で重視しているターゲットですが、一つはLAのお客様です。そこにはPPCと併せた最適な出力環境をご提案していきたい。例えば、当社ではレーザープリンタでも、「M-PaC」(カウンター制保守)というメニューでは、PPCのようにどれだけ出力したのかを可視化することでき、お客様にメリットをご提供できると思います。もう一つは、MA(民間大手)のお客様に対して、ONE to ONEマーケティングをさらに高め、業種展開を深化させ、さらに深く入り込んでいきたいですね。

 大澤(ブラザー販売) 当社の場合、やはりSOHOなどの小規模事業所がメインのターゲットと考えています。特に1─3名程度の本当に小口の層に対する訴求を継続して図っていきますが、同時に、もう少し大きな規模の企業に対しても市場開拓を図っていきたいと思います。そのためにも商品ラインアップの拡充はもちろん、パートナー様と共同で是非、新市場の開拓を進めていこうと思います。また、11年度はサービス・サポートの充実を図ることも課題としています。

 宮崎(富士ゼロックス) 当社では、公共分野、大手企業、SMBまで全方位のソリューションを展開します。そのキーとなるのがマネージドプリントサービスとクラウドプリンティングなどです。具体的な展開では、プリンタなどの出力機だけでなく上位システムを持つパートナー様との連携が重要と考えています。例えば当社は昨年、日本郵便の「全日本DM大賞」を受賞しました。これはJTBトラベランド様との共同展開で、ダイレクトメールを活用したプロモーション展開により、旅行者のリピート率向上に大きな成果を上げたというものです。このケースではCRMベンダー様との連携が欠かせません。一例として、日本オラクル様と、One to Oneマーケティング・ソリューションを共同構築しております。このようにパートナー様とのサービスやソリューション連携が、今後の大きなテーマと考えます。

 松永(キヤノンMJ) 今年度はどこにターゲットを置くかですが、業種の深堀ということから中央官庁、医療分野、流通小売という3業種に注力していきたいと考えています。また、今年から大手のお客様のカテゴリーで新たにBC(ビックカスタマー)という社員数1000─3000名の層を設定しましたが、この層のお客様に対して、業務内容をしっかりと把握して、カスタマイズしたソリューションを提供していきます。

 深野(OKIデータ) SMBの一般向け製品としてはCOREFIDOを中心に多くのお客様からご支持をいただいているので、今年度もそこをメインターゲットとして引き続き訴求していきます。もう少し詳細に言えば、文教、SOHOといった分野でA4機が中心に売れており、製品ラインアップも拡充させたことから、さらに市場開拓を図っていきたい。また、A4MFPも順調に立ち上がり始めたので、是非、シェアを伸ばしたいですね。一方、A3カラー機については、建設業やリース分野からの引き合いも増えてきておりますが、A3モノクロ機の拡販を積極的に進めたいので、SIerさんとの連携強化が大きなテーマだと考えています。

 宮西(エプソン販売) 当社の場合は、文教市場向けの販売比率が比較的高いという点以外は、販売先については特に業種的には偏りはありません。民間では、中小規模の法人や大企業における部門での調達などの小口案件に強みを持っています。これらのお客様に対しては、お客様、販売店様に選ばれる商品となるよう、引き続き、プロモーションやキャンペーンなどの施策を精力的に行ってまいります。また、システム連携も重要なターゲットです。例えば、基幹系システムとの連携、システムベンダー様における業務システムへの組込みです。この分野については認定商品を増やすといった取り組みを進めていきます。

 岡田(NEC) 当社の製品が最も売れている分野としては、パートナー様を通じて基幹系システム、業務システムと共に導入される部分がとても多くを占めています。そこでまずは、導入いただいたお客様のシステムや環境のレベルアップを実現するための活動・施策を強化する取り組みを進めています。一般OA分野では、複合機に集約化する動きがあるので、クラウドを活用するドキュメント・ソリューションを展開していく計画です。それにより基幹系とオフィス系の両立を図っていきたいと思っています。業種展開では、特に店舗を持つ流通業に対して、POP作成のニーズを取り込むことなどを考えています。また、NECとしてもグローバル化を謳っていますので、海外展開を進めるお客様に対するソリューションも提案したいと考えています。

OKIデータ
国内営業本部 営業推進部 部長
深野文夫氏



【担当領域】
国内向けカラーLEDプリンタからオフィス向けのプリンタ、複合機などを担当する。





COREFIDO B820n
(A3モノクロLEDプリンタ)
印刷枚数:モノクロ毎分35ページ
用紙サイズ:A3
価格(税込):99,540円

COREFIDO MC561dn
(A4カラーLED複合機)
印刷枚数:カラー毎分26ページ
     モノクロ毎分30ページ
用紙サイズ:A4
価格(税込):131,040円

【主力製品】
LEDプリンタとドットインパクトプリンタの2カテゴリーを展開。LEDプリンタでは「COREFIDO(コアフィード)」と「MICROLINE」の2ブランドがあり、COREFIDOは広く一般オフィス向けで、MICROLINEはDTPなどのプロフェッショナルユースが中心となっている。2008年に新ブランドとして展開を開始したCOREFIDOは、5年間無償保証を大きな特徴として、ユーザーの支持を集めているという。昨年、A3モノクロ、A4カラーの複合機を加えて、フルラインアップを揃えた。


(後編)に続く

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