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東洋ビジネスエンジニアリング、複数のクラウド基盤を研究の末、Windows Azure Platformを選択、原価管理製品を対応

2011/03/22 19:55

 国内外の製造業を中心に、幅広い企業から支持されている東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G、石田壽典社長)のERP(統合基幹業務システム)パッケージ「MCFrame(エムシーフレーム)」。2009年1月には、ここから原価管理機能を切り出してクラウド・SaaS型サービス「MCFrame online 原価管理」の販売を開始した。10年11月には、サービスを稼働するクラウド基盤として「Windows Azure Platform(以下、Windows Azure)」を活用し、オプションサービスを始めている。現在のSaaS型の提供方法より料金を安くできるなど、メリットが大きいと判断したからだ。荒川尚也プロダクト事業本部技術部部長と常盤木龍治プロダクト事業本部営業本部営業1部マネージャーに、Windows Azure対応の理由を聞いた。

原価低減活動のPDCAサイクルを支える4つの原価計算が可能なMCFrame

 「MCFrame」は、加工組立系とプロセス系の製造業や流通・サービスの企業257社(2010年12月現在)の導入実績をもつ。このうち、クライアント/サーバー型(C/S)の「MCFrame CS」には、販売管理機能を含む生産管理と原価管理の製品をラインアップしている。「MCFrame 原価管理」の特徴は、標準・予算・実績・実際の4つの原価計算機能を実装し、迅速かつ正確な原価計算は無論のこと、原価構造や利益構造の可視化・分析により、原価低減活動を全面的に支援可能な点である。

常盤木龍治プロダクト事業本部営業本部営業1部マネージャー

 最近では、企業・ビジネス規模の大小を問わず、会計士や税理士から原価計算の精度向上を指摘されるケースが増えている。また、海外に生産拠点を構える製造業が増え、海外工場の原価計算に対する要求も高くなってきた。しかし、規模が小さい製造業ほど、ユーザー数が少ない原価管理システムに費用をかけられない。このためB-EN-Gでは、低価格で早期に導入できるクラウド・SaaS版の原価管理システムを出したのだ。今回、日本マイクロソフトが提供するパブリッククラウド基盤である「Windows Azure」を採用したのはこの延長線上にあり、中堅・中小企業のより幅広い顧客層へのビジネス展開をねらった同社の戦略的な判断だったといえる。

Windows Azure Platform対応で運用管理・監視コストを低減

 荒川部長は、「『Windows Azure Platform』に対応したことで、既存のSaaSより1社当たりのユーザー数が多くなるほどアプリケーションの提供を安価にできる。また、運用管理・運用監視の工数(費用)が低減できるほか、既存のSaaS環境とのセキュアな連携が容易に実現出来る。」自社データセンターで運用するSaaSだけでなく「Windows Azure」を採用することで、「MCFrame」のビジネス上のメリットが生み出せるという。

荒川尚也プロダクト事業本部技術部部長

 自社のデータセンターでSaaSビジネスを展開する場合、インフラ構築・運用に必要なハードウェアとOS、ターミナルサービスなどのミドルウェア、データベース、データセンターを設置する物理的なコストが必要になる。しかし、「ユーザー(市場)が希望する価格で提供するには、インフラコストの負担が重すぎる」(荒川部長)のだ。「Windows Azure」を使えば、「Azure利用料」は付加されるものの、インフラコストの負担がなくなるので、より安価にサービスを提供できるだけでなく、価格体系の自由度が増す。

 SaaSを自社で展開するには、上述のインフラコストやアプリケーション自体の開発コストのほかに、データセンターの運用管理/運用監視の工数(費用)が発生する。特に、利用頻度が激しく上下するアプリケーションでは、処理のピーク時に応じてハードウェア資源をサイジングすることが求められる。ITベンダーは、「Windows Azure Platform」を使えば、自由度の高いシステムを顧客に提供できるようになる。

 また、常盤木マネージャーによれば、「実際原価を正確に出すには、複数点在する製造現場の担当者がタイムリー且つ容易に各種実績データを登録できる環境がなければならない」という。中堅・中小の製造業の現場では、日報等紙ベースまでは管理しているが、現場が低負荷でシステムに出来高等の実積を入力することができず、それに伴って正確な原価計算が課題になっていた。

実積入力支援機能(MCFrame onlineオリジナル機能)

 B-EN-Gの「MCFrame online 原価管理」の実積入力支援機能は、マイクロソフト「Silverlight」を採用し、リッチ・インターネット・アプリケーション(RIA)としてウェブブラウザ上で実行できる。操作性に定評のある「Silverlight」のユーザー・インターフェース(UI)から、製造現場の担当者が簡単に、しかもリアルタイムに数値を打ち込むことができる。複数点在する工場で入力したデータは、「Windows Azure AppFabric」のサービスバス機能を介してB-EN-Gのデータセンターで動く「MCFrame online 原価管理」と同期し、原価管理部門は煩わしいデータ作成作業から解放される。

Windows Azure Platformのサービスバス経由で他システムと連携拡大

 WindowsAzureでは、クラウド上に構築したサービスだけでなく、オンプレミス(企業内)のサーバー上に構築したサービスとも連携して動作する。「MCFrame online 原価管理」は、Windows Azure AppFabricの「サービスバス」などAzureの機能を最大限利用することを狙っている。「オンプレミスや既存のSaaSと連携し、ハイブリッド型(適材適所)の運用が容易になるし、ファイアーウォールを越えた利用もできる。また、『Windows Azure Platform』環境では、サービスレベルや可用性の異なる既存の部品構成表や販売情報など、他のSaaSサービスとの連携もできる」と、荒川部長は自社ビジネスの拡大につながると話す。


 製造業では、スクラッチ開発したシステムやオフコンなど旧システムを温存する傾向がある。これに対して、処理ピークに応じてハードウェア資源のサイジングや調達をせずに、B-EN-Gやパートナーの手でさまざまなシステムを付加提供できることへの期待が大きくなっているのだ。

 実はB-EN-Gでは、「MCFrame online 原価管理」をWindows Azureに対応するとき、他の外資系のサービス基盤での開発も試みたという。そして、「サービスバスの構造と安定度、UIの使い勝手、ハイブリッド型での運用性などを比較して、Azureを選択した」と荒川部長。さらに、新たに発表されたWindows Azure Platform上で既存のアプリケーションを動かすもうひとつの選択肢として、「VM Role」への期待もにじませる。「VM Role」は、開発者がより自由にカスタマイズできる仮想マシンだが、「新規サービスの追加や制限緩和などで、自由度が高まる」(荒川部長)と見込む。B-EN-GのMCFrameビジネスは、今後もWindows Azureを中核に進んでいく。
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外部リンク

東洋ビジネスエンジニアリング=http://www.to-be.co.jp/

マイクロソフト=http://www.microsoft.com/ja/jp/