国内セキュリティ市場は、リーマン・ショック後の景気低迷のあおりを受けて成長率が鈍化する傾向にあった。しかし、ここにきて、景気回復とともに再び伸びる兆しが出てきた。クラウドコンピューティングの普及に伴ってセキュリティ対策を施す領域が広範になったことや、スマートフォンやiPadなどのモバイル・スレート端末のビジネスシーンでの利用が拡大し、企業としてIT資産管理やログ管理をする範囲が広がる傾向にあることが好調の要因となっている。
運用管理製品は6%の成長 調査会社のIDC Japanが今年2月に発表した国内セキュリティ市場予測によれば、2010年の市場規模は、ソフトウェア製品が前年比2.7%成長し、PCクライアント管理/IT資産管理などの運用管理分野も同6.0%増となる見込み。
一方、セキュリティアプライアンス製品は、景気低迷の影響を受けて、ユーザー企業の新規製品導入に対する投資意欲の低調が響いてマイナス2.8%となった。ただ、セキュリティアプライアンス製品を出すメーカーをみると、すでに昨年後半から需要増の追い風を受ける気運が高まってきており、全体としても2011年には回復基調に乗る見通しで、2009~2014年の年間平均成長率は4.0%と回復のテンポは速い。販売会社にとっては、この領域を狙ったソリューション展開が本格化することが予想される。
ウイルス対策やメールセキュリティなどセキュリティソフト市場は、今後も売上高が堅調に推移すると見込まれる。IDC Japanは、2009~2014年の年間平均成長率は3.1%と弾き出している。これと並行して、セキュリティサービス市場が、大きく成長する兆しが現れてきた。2009~2014年の年平均成長率は8.5%と予測されており、セキュリティメーカー各社の製品を組み合わせた展開が有利に働きそうだ。
クラウドが市場をけん引 セキュリティサービス市場が成長軌道にある要因として、クラウドサービスや社外へ持ち出す端末、フリーメールに対するメールセキュリティやウェブメールセキュリティの利用が大企業を中心に進んでいることが挙げられる。これらを複合的にアプライアンス化したり、PCクライアント管理/IT資産管理ソフトに同梱した製品が好評を博している。
最近では、スマートフォンや社外に持ち出す端末、可搬性の高いUSBメモリなどのセキュリティやログ管理をトータルに管理する製品が普及する傾向にある。とくに、大企業では既存のIT資産管理ソフトを入れ替える時期にあるようで、大量クライアント/IT資産を対象に、PCのインベントリ(CPUの種類やメモリ・HDDの容量、IPアドレス、インストールソフトの種類・バージョンなどの情報)収集や、ソフトウェアの一括配布やログ(操作履歴情報)収集・解析、利用制限など複数の機能をもつ製品が選ばれている。
また、景気の落ち込みを経て、企業のコスト削減やIT資産の運用管理の効率化に対するニーズが高まっているほか、コンプライアンス(法令順守)の観点からソフトウェア資産管理(SAM)に取り組み企業も増えている。競合メーカーがひしめくなかで、操作が簡単でわかりやすいユーザー・インターフェースで複数機能がワンパックで入っている製品は、販売を伸ばす可能性が高い。
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