Special Issue

ESET社とキヤノンITSが日本の法人市場に本格参入 法人向け販売体制とソリューションを強化

2010/11/04 19:55

週刊BCN 2010年11月01日vol.1356掲載

 キヤノンITソリューションズ(以下キヤノンITS)は、ウイルス対策ソフト「ESETセキュリティ ソフトウェア シリーズ」の法人向け販売体制強化のため、2011年1月より「ESETセキュリティ パートナープログラム」を開設する。加えて、他社ハード/ソフトウェアメーカーとの協業および製品プログラムのキッティング・バンドルでの販売を推進する。これに合わせてESET社は、アジアおよび日本市場に向けたマーケティング強化を図り、今年8月にアジア市場の拠点としてシンガポールにアジア支社を設立。日本市場の専任担当に、元キヤノンITSの執行役員で当時からESETビジネスに深く関わっていた稲田清崇氏が就任した。両社の日本の法人市場に向けた戦略を聞いた。

法人向けの販売体制強化で、サポートを強化し、
安心してESET製品を導入できる体制を整備


ESET社
ESET ASIA PTE LTD
ビジネス ディベロップメント ディレクター
稲田 清崇 氏
 キヤノンITSが国内総販売元となっているESETセキュリティ ソフトウェア シリーズは、既知のウイルスはもちろん、亜種・新種ウイルスに対する高い検出率が支持され、PCのヘビーユーザーを中心に、最近急速にユーザーを拡大している。実際、その検出力は、コンピューターウイルス感染防止・識別・除去の国際誌「Virus Bulletin」で、権威ある「ウイルス検出率100% AWARD」を業界最多の64回(2010年10月時点)獲得した実績を誇る。日本市場においては、すでに約6万社に採用され、約100万台のPCをウイルスの脅威から保護している。

 キヤノンITS 商品事業本部 セキュリティソリューション事業部 ESET営業部の崎山秀文部長は、「日本市場におけるESET製品の販売比率は、法人と個人でほぼ半々です。企業のお客様の多くは、ESET製品のウイルス検知能力の高さと動作の軽さを評価し、他社製品から乗換えられるケースがほとんどです」と語る。

 法人の需要が多いのは、キヤノングループの販売力が大きく貢献している。実際、中小企業だけでなく、最近では数千、数万ものクライアントをもつ大企業にも幅広く採用が進んでいるという。

 「これまでは、企業向け販売は中小企業が中心でしたので、ユーザーはリセラーを通じてESET製品を購入して自身でさまざまな設定を行っていることが多かったわけです。そのため、専任のシステム担当がいない、知識や技術をもたない企業からは、技術サポートが欲しいというニーズがありましたが、リセラー側では十分な対応ができなかったという現状がありました。今回の『ESETセキュリティ パートナープログラム』開設を契機として、法人向けの販売体制を強化し、企業ユーザーに対するサポートのさらなる強化を図り、安心してESET製品を導入できる体制の整備を図りたいと考えています」と、崎山部長は背景を語る。

ESETセキュリティ パートナープログラム開設
認定パートナー制度で技術力を認定


キヤノンITソリューションズ
商品事業本部
セキュリティソリューション事業部
ESET営業部 部長
崎山 秀文 氏
 キヤノンITSが2011年1月よりスタートする「ESETセキュリティ パートナープログラム」は、パートナープログラムに加入した販売パートナーに対し、製品戦略の共有および理解の深耕を図り、技術支援の提供およびパートナー専用Webサイトを通じた販売支援情報の提供など、各種支援を実施していくというもの。プログラムでは、大企業から中小企業まで幅広いユーザー層の法人向け販売支援を目的に、販売パートナーの販売額および製品の取り扱い形態に合わせた数種類のカテゴリを設ける予定だ。

 プログラム開設に伴って設けられるカテゴリの一つが「認定パートナー」だ。

 「これは販売パートナーにESET製品の機能と設定のノウハウ、技術を習得してもらい、企業への導入をスムースに行えるようにすることを目的としています。そのためパートナーの数を増やすことよりも、他社製品からの乗り換えに伴う作業といった実践的な技術力、ノウハウを確実に身に付けていただくことを最優先に考えています」と崎山部長。認定技術者といった制度も検討していくという。

 また、新たにESET製品の販売を手がけたいというベンダーに対しては、「登録パートナー」を設けて、専用Webサイトを通じて販売制度やライセンスの扱いといった営業関連の情報を中心に提供していく。

 一方、法人向けの販売体制強化のもう一つの柱となるアライアンス体制の強化では、PCメーカー、デバイスメーカー、ソフトウェアベンダーなどと協業して、ESET製品のキッティングやバンドルによる販売を推進していく計画だ。

日本は質の高いポテンシャルの大きなマーケット
ユーザーからの要望をいち早く製品に反映


 こうしたキヤノンITSの法人向け販売体制およびソリューション強化、推進のキーパーソンとなるのが、元キヤノンITSの執行役員で、セキュリティソリューション事業部長を務めていた稲田清崇氏だ。稲田氏は、ESET社が今年8月に設立したアジア市場の拠点となるアジア支社のビジネス ディベロップメント ディレクターであり、日本市場の専任担当を務める。また、日本以外のアジアパシフィック地域への販売強化にも取り組んでいく。

 スロバキアに本社を置くESET社は1992年設立し、社員数は約500名。売上高は210ミリオンドルで、最近5年間で2860%という驚異的な成長を遂げている。

 「ESET製品のグローバルでの売上は、欧州およびアフリカが62%、北米が25%と多くを占めていますが、これまでアジア市場は9%に留まっていました。しかし日本は、そのアジア市場のうち約6割を占めており、ESET社でも、日本を非常にポテンシャルの大きなマーケットと見ています。それは単にマーケットとしての大きさだけでなく、グローバル企業が多く、世界で最も厳しい目をもつユーザーがいる質の高いマーケットであることが大きな理由です。つまり、厳しい目に晒され、鍛えられた競合製品のなかでユーザーから支持され、高シェアを獲得する製品となることが、他のアジア市場、さらに世界的にも強くアピールすることになります」と稲田氏は力説する。

 実際、日本市場から寄せられた改善点などの要望に、ESET社の技術陣が感心することが少なくないという。それだけに今後は、ユーザーからのさまざまな要望を本社にフィードバックして、いち早く製品に反映させるなど、技術的なサポートの強化を図る方針だ。

アジア拠点の開設と日本市場の専任担当で
ESET社の日本市場に対する本気度を示す


 キヤノンITSの崎山部長も、「企業におけるウイルス対策ソフトの選択は、大企業と中小企業では着眼点が異なる」と語り、次のように説明する。

 「中小企業はウイルス対策製品の機能・性能本位で製品を選択するケースがほとんどです。しかし、大企業におけるウイルス対策製品の採用は、自社のセキュリティやコンプライアンスにも関わり、一度導入すれば数年は使用を続けることを前提としています。それだけに、機能・性能に加えて、導入した製品が今後も確実にバージョンアップなどを続け、継続して使用できるのか、サポート体制はどうかといった点を重視します。とくに外資系ベンダーの製品の場合、突然、日本市場から撤退してしまうことになれば、企業はセキュリティ体制を根本から見直さざるを得なくなります。こうした点がネックとなって、機能・性能を高く評価しながらも、今までは採用を見送っていた企業も少なくありませんでした。その意味からも、今回、ESET社がシンガポールにアジア支社を開設し、日本市場の専任担当に稲田氏が就任したことは、ESET社の日本市場に対する本気度を示すとともに、ユーザーの決断を後押しすると考えています」

 稲田氏は、「製品のテクノロジーには絶対の自信を持っています」と強調したうえで、「2社の連携がより強化されたことで、日本の企業ユーザーのニーズ、信頼にお応えできるようになりました。その第一弾の具体的な取り組みとなるのが、今回のパートナープログラムですが、法人販売をより強化し、アジアでのシェアを2年で2倍にすることが目標です」という。

軽さと強さを両立した
ESETセキュリティ ソフトウェア シリーズ


 ESETセキュリティ ソフトウェア シリーズがユーザーから支持される最大の理由は、パソコンへの負荷を抑え、スムースに使用できる「軽さ」と、既知のウイルスだけでなく亜種・新種のウイルスも非常に高い確率で検出する「強さ」を両立したことにある。実際、その検出力は、専門誌などでの多くの表彰を獲得した実績が裏付けている。また、エンドユーザーにおける満足度調査でも、「動作の軽さ」「ウイルス検出率の高さ」が高く評価されている。

 最新の個人向けパッケージ製品のV4.2では、動画や画像ファイルのダウンロードで約40%、文書ファイルへのアクセスで約30%、パフォーマンスの向上を図っている。一方、強さの技術的な裏付けとなるのが「ThreatSenseテクノロジー」だ。既知のウイルスに対する防御は、ウイルス定義データベース(シグネチャ)で行うが、検出の難しい新種や亜種のウイルスに対しては、遺伝子技術を応用した独自のアドバンスドヒューリスティック機能を用いることで、ウイルス・スパイウェアなどのあらゆるマルウェアに対しても効率的で高い検出を実現している。

 なお、エンタープライズ版のV4.2は、2011年の第1四半期にリリース予定で、日本のユーザーの声を幅広く反映させた製品となるという。目玉となる機能の一つであるグループ機能は、人事異動や新規PCの追加などの際に、管理者が容易にグループ分けできるようにしている。また、仮想化対応、Windows以外のプラットフォームへの対応も順次、進めて行く計画だ。

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