Special Issue
日立製作所 SMB向け運用管理ソフト、第二ステージへ
2010/10/28 19:55
週刊BCN 2010年10月25日vol.1355掲載
バージョンアップに新ソフト投入、ブランド変更も
ブランド名変更し新ソフトも投入ソフトウェア事業部 販売推進部 主任技師 後藤邦仁 |
同社が最も力を入れた「使いやすさ」と「コストパフォーマンス」は、ユーザー企業とパートナー企業から、高い評価を受けている。
SMB向けのPC運用管理ソフトは開発するメーカーが多く、IT業界のなかでも激戦の市場。そのなかでユーザーやパートナーから集めた意見や評価を元に、さらに多くのユーザー企業に利用してもらおうと、従来の製品を継承しつつ、バージョンアップと新製品を追加して今年10月に新たに立ち上げたブランドが「Hitachi IT Operations」だ。
Hitachi IT Operationsの製品ラインアップは大きく2つ。1つは「IT資産管理」「セキュリティ管理」「ソフトウェア配布」を担う「Hitachi IT Operations Director」だ。この製品は、従来のJP1/Desktop Navigationの使いやすさはそのままに、大幅に機能を強化している。そして2つ目は、サーバーやネットワーク機器、ストレージといった情報システムを構成するPC以外の機器の稼働を監視する新製品「Hitachi IT Operations Analyzer」だ。同製品は、日立製作所が国内で開発し、米国を中心に世界市場に向けて09年4月から販売を開始した。
つまり、従来のSMB向け運用管理業務をクライアントPCだけでなく、サーバーやネットワーク機器、ストレージも対象としてサポートし、それを支援するソフトのシリーズを「Hitachi IT Operations」としたのだ。
「これまで、『JP1/Desktop Navigation』と『Hitachi IT Operations Analyzer』は、日本と海外で販売拠点は違いますが、SMBという同種のターゲットに向け提供し、それぞれ高い評価を得られました。このため、ブランドを統一して両製品を展開することで、より多くのお客さまに使っていただけると判断しました」と後藤主任技師は、その狙いを語っている。
進化したPC運用管理ツール
では、機能強化を図った「Hitachi IT Operations Director」と、新製品の「Hitachi IT Operations Analyzer」の優位性を詳しくみてみる。
まずPC運用管理ツールの「Hitachi IT Operations Director」。基本機能は「IT資産管理機能」と「セキュリティ機能」「ソフトウェア配布機能」だ。
「IT資産管理機能」では、ネットワークに接続されたPCのOSやメモリおよびハードディスクの容量などハード情報と、インストールされているソフトの各種情報、IPアドレスやMACアドレスなどのネットワーク情報、利用者や部署などの情報を自動収集するのが基本機能。新版では、細部に管理者の手間を軽減させる仕組みを盛り込んだ。
前版「JP1/Desktop Navigation」でも評価が高かった「見やすさ」をさらに発展させた
まず、モニタ装置やマウスなどのIPアドレスをもたない機器とUSBメモリ、椅子や机などの備品も一つの台帳で管理できるようにした。これは、IT機器以外もまとめて管理している総務部担当者などにも役立つ機能だ。USBメモリの管理機能では、登録済みのUSBメモリ以外は、利用できないように制限をかけることができ、USBメモリに格納しているファイルの名称を一覧表示できるようにもしている。
また、ソフトウェア管理の強化では、インストールソフトの情報を収集できるだけでなく、ライセンスの利用を許可したPCかどうかを画面上で簡単に識別できる。こうすることで、許可なくインストールしているPCを容易に特定でき、適切なライセンス管理が行えるのだ。
動画を活用したウィザード形式であるため設定が容易
そのうえで、ハードやソフトを問わず、契約料金や契約期間などの資産の利用条件も一元表示できるようにし、社内にある資産をより効率的に管理できるように工夫している。
一方、「セキュリティ機能」では、各ユーザー企業が設定したセキュリティポリシーに適合していないPCを迅速・正確にチェックする。「ウイルス対策ソフトの定義ファイルが最新か、ウイルスチェックを定期的に行っているか、OSは最新状態にされているか」などの情報を自動収集し、情報漏えいや企業内のウイルス感染を防ぐ。
新版の強化点はログ収集・管理だ。最大の特長は、企業の内部情報が社外へ持ち出されるような、情報漏えいの可能性が高い操作を、不審操作として検知し、通知することだ。「膨大なログから重要なログを見つけ出すのは管理者にとって大きな負担」(雨宮主任技師)。新版では、検知された不審操作の前後の操作を自動的に抽出できるため、 不審操作の過程を簡単に知ることができるようになった。さらに、不審操作に関連したログだけを保管する機能で、大幅なデータ容量の削減が可能だ。
そして、3つ目の機能として用意したのが「ソフトウェア配布機能」だ。各PCに配布したいソフトやファイルをウィザードで操作するだけで、必要な設定を完了し、自動的にソフトを配布できる。アニメーションで「今、どんな操作をしているのか」を表示するガイド機能は他社製品にはなく、ソフトウェアの配布をツールで手がけたことがない管理者にも手順が分かりやすい。配布だけでなく、万一インストールが禁止されているソフトを見つけた場合は、管理者がネットワークを通じて自動的にアンインストールすることもできる。
豊富な機能を盛り込みながら、従来からの低価格は継続している。100ライセンスで42万円、追加分は10ライセンスで6万3000円とし、サポートサービスは500ライセンスで年間18万9000円(すべて税込み)とした。
新投入の稼働監視ツール
ソフトウェア事業部 販売推進部 主任技師 雨宮廣和 |
特徴的なのが「Root Cause Analysis(RCA)」と呼ばれる機能だ。システムを構成する機器で障害が発生した場合、その問題の根源である機器を特定し、考えられるトラブルの理由を自動的に列挙して管理者に伝えるのだ。理由が複数ある場合は、優先度の高いものから順に表示することで、管理者を迷わすことなく、迅速に復旧できるように支援する。
管理画面も強みだ。情報システムを構成する機器は、たとえSMBでも数十台は保有・運用している。その複数ある機器がどのネットワークでどの機器とつながっているかを把握するのは手間がかかる。「Hitachi IT Operations Analyzer」では、その手間を軽減させるために、分かりやすい管理画面を用意している。
それが「トポロジカルリスト」と呼ばれる画面だ。サーバーとストレージ、そしてネットワークがどのように接続されているかを自動的に把握し、その構成図をグラフィカルに表示するのだ。問題が発生すれば、構成図に表示された機器の色が変わり、その機器のアイコンをクリックすることで具体的な問題とその要因を表示するので、管理者は迅速に対応できるわけだ。
機器と機器との接続状態を自動的に把握し構成図として表示する
「Hitachi IT Operations Director」と同様に、機能だけでなく、その価格競争力も強みとなっている。価格は、10ライセンス毎に25万2000円、サポートサービスは10ライセンス毎に年間6万3000円(すべて税込み)とした。
「SMBのお客さまは、まだ情報システムの運用管理ツールを導入していないケースが多いはず。高額なライセンスが障壁の一つになっているのであれば、Hitachi IT Operationsでは価格面でもご満足いただけると思います」(後藤主任技師)。
利用・購入方法もユニークだ。期間限定の試用版を専用ウェブサイトからダウンロードして、90日間利用できる。ライセンス購入で提供されるライセンスキーを入力すれば、そのまま継続利用できるのだ。「お客さまが試用版から正規版に切り替える時、ほとんど手間がかからないようにしました」(雨宮主任技師)。
SMB市場へ新ブランドで再スタートを切る日立。だが、その販売方法としてパートナーを経由した販売を重視する姿勢は変えない。後藤主任技師は、次のように説明する。
「従来のパートナーさまへの支援内容を今後も継続・強化して販売パートナーさまがより売りやすくするのが基本的な販売戦略です。試用版利用者の情報をパートナーさまに提供して、販売に結び付けてもらえるような施策も考えています」。
わずか1年でSMB向けPC運用管理ツール市場で存在感を示した日立が、新たに用意した「Hitachi IT Operationsシリーズ」。圧倒的なブランド力とSMBを徹底的に意識した製品が、これまで以上に注目されるのは必至だろう。同社の今後の展開に注目したい。
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