Special Issue
<さくらインターネット 田中邦裕社長インタビュー>仮想プライベートサーバーサービスを立ち上げ
2010/10/28 19:55
週刊BCN 2010年10月25日vol.1355掲載
SIerやソフトベンダー意識したサービス拡充へ
──SIerやパッケージベンダーにも使い勝手のいいサービスづくりに力を入れておられますね。とりわけクラウドコンピューティングの基盤整備が急ピッチで進められているようですが…。田中 ご存じの通り、クラウド基盤を使ったSIニーズや、パッケージソフトのSaaSへの横展開が急増している状況です。当社のクラウド展開に対する期待が高まっていることを肌で感じ、ご期待に沿えるサービスメニューの拡充を急いでいます。かねてよりデータセンター(DC)のスペースを貸し出すハウジングや、サーバーを貸し出すホスティングをSIerやユーザー企業にご利用いただいてきましたが、そこに新たなメニューとしてクラウドサービスが加わっていく形ですね。
──具体的には、どこに力を入れているのですか。
こうした需要拡大に対応するため、DC設備も拡充しています。当社は東京都内と大阪に計5か所のDCを運営しています。ここ数年、規模が小さく、設備的にも古いDCは、大きいものへ統合するスクラップ&ビルドを推進してきました。この9月には、大阪地区の拠点DCである堂島DCをサーバーラック換算で約190ラック分拡張しました。
──安さだけなら、ほかにもありますよね。市場を見渡すと、共用サーバー型なら月額100円台も見られます。
田中 仮想化技術を使えばサーバーリソースの増減がほんの数分で行えるため、エラステック(伸縮可能)に大規模システムを組むことができる。共用や専用サーバー型では、さすがにここまで動的ではありません。当社VPSは現状1プランのみでの展開ですが、上位プランの提供に加えて、今年度中にはIaaS型のパブリッククラウドサービスを提供する予定です。
──業務システムのインフラとしてSIerやソフトベンダーが使うとなれば、システム運用の自動化など、管理負荷を軽減する仕組みが必要になりませんか。
田中 おっしゃる通り、ある程度の規模がある業務システムならば、何らかの運用管理システムが動いているわけで、パブリッククラウドサービスではAPI(接続口)を公開し、顧客企業が使っている運用システムとの連携を可能にする予定です。
──米国では、パブリック系のクラウドリソースを統合的に使える専用の制御ソフトを開発するベンダーも出てきていると聞きます。
田中 国内でもSIerやソフト開発ベンダーの手によって、パブリッククラウド向けコントロールパネルの開発が進むと見ています。パブリッククラウドにおいては、当社サービスの売り手になってくださるようにSIerやソフトベンダーが開発した制御ソフトとの連携には、前向きに取り組んでいきたい。
──御社が北海道石狩市に総敷地面積5万m2超、ハーフサイズのラック型サーバー換算で最大60万台稼働できる巨大DCの建設を決めたのには驚きました。しかも、運用コストは半分以下になる、と。
田中 石狩DCは、外気を導入して冷却する方式を採用し、電気代の半分近くを占める空調使用を抑制します。土地建物の減価償却も合わせると、現在主流の都市型DCと比較して運用コストは半分以下。2011年秋には全8棟の計画のうち、第1棟目が竣工します。その頃には、当社、VPSのサービスラインアップが増え、IaaS型パブリッククラウドサービスも拡充しておりますから、より大規模なシステムの運用も可能になるでしょう。今後は日本のクラウド市場でシェアを伸ばしていく方針です。
──本日はありがとうございました。
【インタビューを終えて】
使い勝手のよいVPSサービス
既存システム移行の呼び水に
VPSやパブリッククラウドなどのサービスは、オンラインでエントリー(利用申込)すれば、ものの数分で使えるようになる。従来のように物理サーバーを設置する制約がなく、リソースもほぼ無限に拡張できる。この点が、これまでの共有サーバー型や専用サーバー型のホスティングと異なる点だ。例えば、業務システムで月末処理のときだけサーバーを借りるとか、ウェブで商品キャンペーン用に使い、終わったら解約するなどの使い方が増える。こうして利用していくうちに、既存システムの少なからぬ部分は、安価で使い勝手のよいクラウド型へ移行していくだろう。SIerは、こうしたユーザーのニーズに応えていけば、自らのビジネス拡大につなげることができよう。
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