Special Issue
<特別企画>ソフト資産管理に商機あり! 明るみになった不正コピー事件がきっかけに
2010/10/18 19:55
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顕在化する違法コピー、自治体中心に次々と明るみに
北海道や奈良県奈良市など自治体を中心に、ソフトウェアの不正利用の実態が相次いで見つかっている。ソフトウェアの著作権保護を目的とした米国の非営利団体BSA(ビジネス・ソフトウェア・アライアンス)が、昨年5月にまとめた「第6回世界ソフトウェア違法コピー調査」によると、日本は違法コピー率が過去最少の21%となったという。しかしながら、メーカーの損害額は約1350億円にまで膨れ上がっている。世界と比べれば、目に見える違法コピー率は低いが、「明るみになった違法コピー問題は氷山の一角」(業界関係者)と、多くの企業・団体で法的リスクを伴ったままという見方が大勢を占めている。SAMコンソーシアムの浜端潔史副理事(マイクロソフトのアンチパイラシーマネージャ)は、「SAMの重要性を知る自治体や企業は10%に満たないと思う」と、国内の現状を認識する。また、SAMコンソーシアムの篠田仁太郎・クロスビート取締役は「違法コピーの根は深い。ライセンスを販売する側がこれを暗に認めている」と、ライセンスを販売する側の認識を変える必要性を痛感している。
ライセンスを「売る側」では、不正と知りつつユーザーの要望に渋々応じ、コスト面に配慮する形で違法コピーを容認している実状も浮かび上がっている。一方で、メーカー側のライセンス体系の複雑さも、「売る側」の障壁となっている。あるSIer幹部は「マルチベンダーで各メーカーのライセンス体系を熟知し、ユーザーに対して適切な利用を促すには大変な労力がかかる」と、「SAM」を実行するためのツール類などの必要性を説く。SAMコンソーシアムなどから提示される管理手法も煩雑で、専門的に扱えるようになるまでに時間を要する。
現在、「ソフトウェア資産管理(SAM)」や違法コピーの防止に取り組む団体では、「SAM」に「強制力」をもたせる動きを活発化している。SAMコンソーシアムでは「『ISO/IEC19770-1』をJIS化する」(篠田取締役)ことを検討。プライバシーマークやISMSの評価・認定を行う日本情報処理開発協会(JIPDEC)は、SAM導入のための基礎を示した200ページ以上に及ぶユーザーズガイドを制作し、「SAM」の徹底を呼び掛けている。違法コピーの撲滅とIT資産の効率的な活用に向け、動きが活発化しているのだ。
このガイドは、SaaS/ASPなどサーバーベースでソフト機能をクライアントパソコンやシンクライアントに提供するものを含んでいないし、他の団体が提供するSAM基準もクラウド時代のソフト資産管理を網羅していない。しかし、次世代を見越して、これらを網羅した管理手法が登場することは確実だろう。クラウド時代になれば、ライセンスなどの管理はますます“ブラックボックス化”するからだ。
ITベンダーにとってはチャンス到来、13年までの年平均成長率は10%弱
半面、煩雑化するソフト資産管理に関連するビジネスは、不景気で求められているコスト削減と相まって、ITを販売するベンダーにとって商機となる。正規に購入したライセンスの総数を把握し、パソコンにインストールされているソフト総数を確認。そのうえで、インストールされているソフト数が購入ライセンス数を超えていないかを見定める――。簡単にいえば、これがソフトライセンスを的確に把握・管理するための術だ。ただ、膨大なPCに大量のソフトが導入されている現実を考えれば、ITツールなしでは実現は難しい。ソフトライセンス管理機能をもつIT資産管理ツールの出番だ。IT調査会社のテクノ・システム・リサーチは09年8月、国内PC(IT)資産管理ソフト市場(ライセンス、関連サービス)を調査している。その調査結果から、2007年から2013年の年間平均成長率を9.2%と試算。2013年の市場規模は、321億円に達するとみた。メジャーなソフトカテゴリに比べて、市場規模は小さいものの、2013年までのIT産業全体の年間平均成長率はマイナス(IDC Japanによる分析)だけに、有望分野であることは間違いない。
テクノ・システム・リサーチの藤崎武志アナリストは、「ソフトの不正コピー問題は現時点ではPC資産管理ソフト市場を活性化させてはいない」としながらも、「今後についてはソフト資産管理機能が求められる可能性は十分にある。メーカーもPRとしてSAMを謳っているケースが多く、起爆剤となりそうな気配を感じる」と説明している。
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