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<シー・シー・ダブル特集>中国・江陰市に合弁会社を設立 中国進出の日本ベンダーを支援

2010/09/16 19:55

週刊BCN 2010年08月30日vol.1347掲載

 ICT(情報通信技術)ソリューションやサポート・ヘルプデスクなどを展開するシー・シー・ダブル(CCW、金成葉子社長)は、昨年10月、日本国内のITベンダーが中国企業などへ製品を販売する際の橋渡し役を担うことなどを目的に、中国江蘇省江陰市に現地法人「江蘇信必達信息科技有限公司(江蘇CCW)」を設立した。金成社長は、「中国のITベンダーで、サポート・サービス業務を体系化しているところは少ない」として、地場の有力国営企業と組み、日系ハードメーカーやトレンドマイクロなどソフトメーカーのサポートやテスト・検証、コールセンター業務などの提供を中国市場向けに拡大する計画だ。

中国大手SIerの長博集団と合弁

 新会社の江蘇CCWは、資本金1億円(約700万元)で設立。新会社の主要株主には、CCW(出資比率20%、09年10月時点、以下同)と江陰市(10%)のほか、中国内の大手国営企業である同市内の長博集団(40%)、日本と中国の少額出資を束ねる無錫CCWファンド(30%)が名を連ねる。長博集団は、政府系の自治体、国営企業に影響力をもち、業種別では造船、運輸、ホテルなどのエンドユーザーを多く抱える。同集団はホールディング会社であるが、江蘇CCWを通してIT分野にも進出することにした。

 江蘇CCWは、株式上場を予定する長博集団の実質的な連結子会社になっている。現在のスタッフは、営業担当が約10名、日本で研修を受けた技術担当が約10名、それにバックオフィスを含めて約30名の陣容で、全員が現地採用の中国人だ。初年度の売り上げは、1億2000万円を目標にしている。

 江陰市は、人口約118万人の江蘇省無錫市に位置する県級市。07年の市GDP(総生産)総額は1190億元(約1兆4000億円)で、中国全体の200分の1を占め、中国各省の中でトップクラスの経済都市だ。中国に株式上場する企業の1割が同市に本社を置く、最も発展著しい都市だ。

 金成社長は「資本力のある内外の企業が本社を置く江陰市に、ハブとなる当社の子会社を構え、日本で展開しているシステム構築、運用・保守サービス、テスト・検証・品質保証、トラブルシューティングなどを、中国内の日系企業や現地企業に対して、ワンストップで提供する」と、江蘇CCWの役割を語る。長博集団が中国内で獲得したシステムインテグレーション(SI)案件に、CCWがもつ技術・ノウハウを提供していく方針だ。当面は「日本ITメーカーのエスカレーション(事業拡大)を支援して、事業を拡大したい」と金成社長は言う。

 具体的には、例えば日本の業務アプリケーションやIT資産管理ツールなどを中国へ展開したいITメーカーの販売代理店となって、江蘇CCWは、エンドユーザーへの導入に際して、技術支援や製品保証のためにソフトウェアの高度テストと検証を行い、納品する工程などを担う。導入後には、トラブルシューティングなど、さまざまなサポート・サービスを提供する、という具合だ。また、日本のSIerが手がけるSI案件に対しても、同様のサービスを提供することを検討している。

 高度テスト・検証に関しては、CCW がパソコン・サポートなどの受託で関係の深い富士通が江陰市内に開設したPCクラスタ性能検証センターと連携し、CAE(Computer AidedEngineering)を活用してソフトの動作や性能などを検証作業を行う。なお、検証センター設備は江陰市が提供しており、当センターを活用すべく、同市にさらに企業が進出してくれることを市が望んでいる。


中国でワンストップサービス提供

 CCWが自社の技術・ノウハウを使った中国での展開に商機があると判断したのは、「中国のSIerには、エンドユーザーに導入前のユースウェアや導入後の運用・サポートのサービスが十分備わっていない」(金成社長)という事情があるからだ。「長博集団は、将来は株式上場を果たし、グローバル・カンパニーへと成長する計画を立てている。このためには、サポート・サービスの拡充は必須で、その支援を当社が担う」(同)という。

 CCWは日本国内で、ICTソリューションベンダーとしてハードウェア/ソフトウェアメーカ、SIer/NIer(ネットワークインテグレータ)、企業ユーザーから案件を受託。システムの企画・設計から移転・撤去に至るまでワンストップ・サービスを提供し、技術・ノウハウの実績を生かして、BPO(コールセンター業務)やBTO(教育事業、試験センター運営代行)などの業務委託も展開している。

 国内では、各地のITベンダーと協力し、地域IT産業の活性化や「地産地消」促進を目的に、複数の合弁会社を設立している。06年には沖縄県にCCW琉球を設立し、地域人材を採用しアジアのハブとなるITエンジニア教育拠点を構築。07年には、山梨県のシステムインナカゴミと合弁でYS&Sを設立し、地元のネットワーク関連及び地産地消コールセンターづくりの支援業務を担っている。また、同年には北海道釧路市の地場ITベンダーと合弁で北海道ICTソリューションサービスを設立し、高度IT人材育成の拠点として地域に貢献している。

 中国江陰市の江蘇CCWは、日本国内の動きとは異なり、中国全土が対象になるが、地域IT産業の発展を目指した事業展開は同じ。金成社長は「江蘇CCWに関しては、まず、中国に進出したい日本のITベンダーの役に立ちたいという思いがある。今後も出資を募り、事業を拡大する」と、中国展開に確かな手応えを感じている。
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外部リンク

シー・シー・ダブル=http://www.support.co.jp/