Special Issue
<ライフサイクルマネジメント特集>環境激変! IT資産管理のニーズ高まる
2010/04/28 19:56
週刊BCN 2010年04月26日vol.1331掲載
クラウド/SaaS化が後押し
IT資産管理システムは、クライアント/サーバー型システムの維持管理コストの削減需要の高まりとともに発展してきた。当初は、クライアントの機種やCPU、メモリのスペック、導入済みソフトの種類などの情報=インベントリを収集するタイプがメインだったが、今は情報セキュリティやソフトライセンス(ソフトの使用許諾)状況など、さまざまな情報を統合的に管理する方式へと変わりつつある。さらに、パソコンやサーバー、ネットワークなどのIT機器の発注や修理、棚卸し、廃棄などのITライフサイクル全般を専用のワークフローシステムによって、ユーザー社内の関連部門や外部業者などと情報を共有していく。こうしたIT資産管理システムと連動させることで、より効率的な管理を実現し、維持運用コストの低減に結びつける動きも活発化している。
近年では、クラウド/SaaS型の浸透や、Windows 7への移行が本格化しており、従来のクライアント/サーバー型を刷新するアーキテクチャを導入するタイミングで、IT資産管理システムを見直すユーザー企業が増えている。
大手ユーザー企業は、自社内にプライベート・クラウドを設置し、グループ企業で共有し、アプリケーションはSaaS方式で利用することで、個々のパソコン端末にソフトをインストールする手間を省くケースが増えた。また、今のところユーザー企業で多く使われているWindows XPから、Windows 7へ切り替える動きも着実に拡大している。ユーザー企業では、将来の拡張性を見越して64bit版のWindows 7の一部導入を始めるケースもみられ、クライアントを巡る環境が大きく変わりつつある。
IT資産管理システムも、こうしたクライアント周りの変化に迅速に対応する必要がある。IT機器の「インベントリ情報」、アクセスログなどの「セキュリティ情報」、SaaSなど月額課金ベースのサービス型ソフトに対応した「ソフトライセンス管理」に対応し、なおかつ機器やソフトの発注から導入、運用、廃棄に至る一連の“ITライフサイクル”全体を支える仕組みが求められている。
有力SIerの1社で、IT資産管理システム「ITAM(アイタム)」を開発するコア(簗田稔社長)は、インベントリやセキュリティ、ソフトライセンスなどの情報を一元的に管理する“構成管理データベース”を軸としたアプローチを採用。ユーザー企業が、構成管理データベースの情報を共有することで、統合的なIT資産管理を実現するものだ。特徴的なのは、データベースの情報を活用するワークフローエンジンを別途開発し、IT機器やソフトのライフサイクル管理(LCM)を効率的に行えるように設計されている点である。ITAMを担ぐSIerやソフト開発ベンダーなどのビジネスパートナーも増えている。
インベントリの収集や、セキュリティ情報に特化したソフトでは、一元的なIT資産の管理は難しい。ましてや、分散型のクラサバ方式から、集中型のクラウド/SaaS方式へとシステムやサービスの統合化が急速に進む時期に差し掛かっている。IT資産における統合的な管理手法の導入も、もはや避けては通れない。Windows 7への移行のタイミングで、IT資産管理システムのリプレース需要が高まるのは必至だ。SIerやソフトベンダーにとって、大きなビジネスチャンスになっている。次ページ以降では、IT資産管理ビジネスに取り組む有力ベンダーの取り組みをレポートする。