Special Issue
<トレンドマイクロ×ヴイエムウェア トップ対談>「安全なクラウド環境構築と効率的な管理が焦点に」
2010/02/18 19:55
週刊BCN 2010年02月15日vol.1321掲載
トップ対談■セキュリティと仮想化のリーダーがクラウドを語る
クラウドは確実に進展
仮想化導入は“当たり前”の時代に
──2009年はIT産業界がクラウドに沸いた年でしたね。トレンドマイクロの大三川取締役は、クラウドの進展状況をどうみていますか。大三川 日本のクラウドへの取り組みは、世界と比較してみれば遅れているのが現実だと思います。たぶん2~3年、他国は日本の先を行っているでしょう。ただ、2009年は国内でもユーザー企業・団体のクラウドへの意識がかなり高まったと感じています。
──関心が高まるなか、トレンドマイクロはクラウドに対してどう取り組まれてきたのでしょうか。
大三川 09年は「Protection FROM the cloud」というコンセプトを掲げ、「クラウドからの保護」を重視してきました。トレンドマイクロのセキュリティ基盤であるTrend Micro Smart Protection Networkを通じて「レピュテーション」と呼ぶテクノロジーを活用したクラウド型サービスの浸透に力を注ぎました。
クラウド型サービスの提供は05年から始めていましたが、その頃はクラウドという言葉がありませんでしたから、大々的にクラウドサービスとは謳っていませんでしたけど、その頃からトレンドマイクロは自社ビジネスにクラウドを活用していたのです。
ユーザーの関心は高まっていますから、今後はその経験を生かして、ユーザー企業のプライベートクラウドやデータセンター事業者、PaaS/SaaSサービスベンダーのクラウド環境を守るサービスを提供する時期に入ったと思っています。
──ヴイエムウェアの三木社長は、クラウド環境の構築に欠かせない仮想化技術の国内普及状況についてどのような意見をお持ちですか。
三木 仮想化は、1~2年前と比較すると、ユーザーさんにとって“当たり前”の技術になっています。仮想環境の構築は数年前から始まってはいました。ただ、その時は「パフォーマンスは大丈夫? このアプリでも動作する?」など、パートナーさんやユーザーさんから不安を聞くこともありましたが、今は違います。“使っていくべき”テクノロジーという認識をみなさんお持ちで、導入に疑問を抱く方はほとんどいません。
09年のサーバー出荷台数は、相当落ち込みましたよね。ですが、ヴイエムウェアのビジネスはおかげさまで順調に伸びました。とくに、昨年後半から著しい成長がありました。大企業のユーザーは、仮想環境をもっと広げて社内の標準インフラとして活用しようという動きがみられ、これまで二の足を踏んでいたSMB(中堅・中小企業)の活用も増えてきたことが理由です。SMBの仮想化技術の導入は、まさに2009年が「元年」と言えたでしょう。
両社の協業がもたらすメリット
仮想、物理からクラウドまで、環境を問わない包括的セキュリティの実現
──仮想環境や、その延長であるクラウドでは、ユーザー企業が打たなければならないセキュリティ対策も変わってくるはず。大三川さんはその点をどうみていますか。大三川 今後のIT環境の特徴としては、「物理環境」と「仮想環境」そしてこれらが「ローカル」と「クラウド」に混在することになります。それぞれの環境間で、データが行き来するわけですから、当然物理環境だけを守っていればよい時代とは違い、セキュリティ対策も変わり、多岐にわたります。
──先ほど「クラウド環境を守るサービスを提供する時期」と話していましたが、それが2010年のクラウド戦略になりますか。
大三川 2009年は「Protection FROM the cloud」を掲げていましたが、今年はそれに加えて、「Protection FOR the cloud」も標榜しています。クラウドの保護、クラウド環境を守るためのソリューションを本格的に提供開始します。
実現するためにトレンドマイクロが用意した具体的なソリューションが、1月21日に発表した「Trend Micro Deep Security」(以下、TMDS)です。物理環境、仮想環境はもちろん、クラウド環境におけるサーバのセキュリティ対策をも、まとめて施せる画期的なソフトウェアで、昨年5月に買収したサードブリゲイド(カナダ)の技術を活用して製品化しました。TMDSを活用することで、SaaS/PaaSベンダーやDC事業者が安全な仮想、クラウド環境を効率的に構築できるようになります。
──TMDSの具体的な機能を教えて下さい。
大三川 サーバを守るために必要なファイアウォールやIDS/IPS、Webアプリ保護、改ざん検知、セキュリティログ監視の5機能を持ち、それが物理環境だけでなく、仮想環境にも対応しています。バーチャルアプライアンス製品の「Deep Security Virtual Appliance」は「VMware vSphere」に対応しており、仮想化を導入したサーバ上にインストールすれば、ゲストOSに必要なセキュリティ対策を提供できるようになります。
またTMDSのエージェントがインストールされていない仮想マシンを検知し、セキュリティ対策を施せるようになっています。ヴイエムウェアが公開している「VMware VMsafe」というAPIを活用することで、開発をスムースに進めることができており、ヴイエムウェアの力をお借りしています。
三木 クラウドを構築するためには、1社では限界があります。ヴイエムウェアは仮想環境を構築するプラットフォームを提供するベンダーであり、セキュリティは当然手がけることができません。であるならば、セキュリティのリーダーであるトレンドマイクロと組んで、セキュリティ製品を開発してもらいやすいようにしているわけです。当社にとっても、トレンドマイクロとの協業によるメリットは非常に大きいと思います。
仮想化のメリットは複数ありますが、コストの削減がユーザーさんにとって魅力ですよね。そのなかで、セキュリティ分野のコストはそれなりのポーションを占めています。今回トレンドマイクロが用意したTMDSでは、セキュリティコストも下げることができるので、大変魅力的な製品だと思っています。
──販売や構築などを行うパートナーのビジネスにとって、TMDSはどのような価値をもたらしますか。
大三川 TMDSは、安全なクラウド環境を構築するために必要な機能が揃っており、パートナー様のクラウド環境構築を強力に支援できるツールだと自負しています。今回は第一弾で、第二、第三の製品も予定しており、クラウド環境を守るコンポーネントをどんどんリリースしていき、パートナー様のクラウドビジネスをセキュリティベンダーの立場から支援していきます。
──三木さんは、パートナー支援という観点で2010年はどんな戦略を考えていますか。
三木 仮想環境やクラウドでは、運用をどう効率管理するかが焦点になります。当社だけでは限界がありますから、主要なIHV、ISVと協業してクラウド環境を効率管理するためのソリューションをともに作りあげていくつもりです。
また、今年はデスクトップの仮想化分野も進むとみており、このエリアのソリューションも強化してパートナーの仮想化ビジネスを支援できればと思っています。
「Trend Micro Deep Security」の強み
環境やプラットフォーム問わずに総合対策を可能に
トレンドマイクロが1月21日発表し、3月1日から受注を始める「Trend Micro Deep Security」(以下、TMDS)は、同社がクラウド環境を保護するために用意した総合ソリューションとしては事実上初の製品。「これまで当社が提供できていなかったエリアをカバーする戦略的ソリューション」(福井順一・プロダクトマネージャー)。
TMDSの特徴は主に3つある。物理環境と仮想環境、クラウド環境すべてをサポートし、統一したセキュリティ機能を提供できる点。2点目が(1)ファイアウォール(2)IDS/IPS(3)Webアプリ保護(4)改ざん検知(5)セキュリティログ監視といった5つのセキュリティ機能を1つのエージェントソフトに実装していること。そして3番目がWindows、Linux、Solaris、HP─UX、AIXなど主要なOSを幅広くサポートし、旧バージョンにも対応している点がある。
プライベートクラウドやデータセンターを問わず、仮想、物理、クラウドそれぞれの環境や、異なるOS環境でも、それを気にすることなくセキュリティ対策を施せることができるわけだ。製品の1つである「Deep Security Virtual Appliance」を活用すれば、エージェントソフトがインストールされていない仮想化を導入したサーバを検知してセキュリティ対策を施すことができ、ますます効率的にセキュリティシステムを構築できる。
「明日のIT環境に対応した 新しいセキュリティ対策 セミナー」 主催:トレンドマイクロ株式会社 特別講演:ヴイエムウェア株式会社 開催日:3月2日(火)東京 3月4日(木)大阪 http://www.event-info.com/trendmicro/bcn |
トレンドマイクロ株式会社 〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-1-1 新宿マインズタワー TEL:03-5334-3601(法人お問い合わせ窓口) |
拡販のためにはパートナーの力が必須としており、リリースを機に技術支援を中心にパートナーのサポート、トレーニングを始める方針。福井プロダクトマネージャーは、「クラウドは運用が重要。TMDSを活用すれば、運用中のセキュリティ状況などを顧客にレポートでき、中長期的なビジネスにつながる」とパートナーのビジネスチャンスを示している。
TMDSは、エンドユーザにおける真の問題解決の為、物理環境から仮想環境まで、ローカル環境からクラウド環境までを幅広く守るソリューションとして、更なる機能強化を図る計画だ。
Trend Micro Deep Security 2010年3月1日より受注開始
・ Deep Security エージェント: 84,000円(税別)/1サーバ (物理、仮想問わず)
・ Deep Security Virtual Appliance: 230,000円(税別)/1CPUソケットあたり(8コアまで)
・ Deep Security マネージャ: 2,375,000円(税別)/1管理サーバあたり
http://jp.trendmicro.com/jp/products/enterprise/tmds/index.html
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