Special Issue
<OSK特集>トップに君臨し続ける「SMILEシリーズ」が30周年 常に業界をリード、着実な進化
2009/11/10 19:55
週刊BCN 2009年10月26日vol.1306掲載
黎明期
現在、国内業務ソフトウェアでトップに君臨するOSKが開発した「SMILEシリーズ」の原型は、オフィスコンピュータ(オフコン)時代に形づくられた。親会社の大塚商会は1976年、NECのディーラーとしてオフコンを販売するなかで、「大塚商会のターゲット層に導入する際のツールが必要」と判断し、開発ツール型の「SMILE」を開発した。
当時のオフコン導入は、「100%カスタマイズ」が常識だった。これをパッケージ型で簡易的に導入する方式に改めた大塚商会と、ソフトウェア開発を担当するOSKの先駆的な取り組みが、IT業界に衝撃をもたらしたことはいうまでもない。
それから2年後の1979年には、「ノンカスタマイズ」でオフコン導入できるパッケージとして初代SMILEが誕生したのだ。当時、オフコンと同時に「DOS版」のコンピュータが勢いを増していた。しかしOSKは「DOS版」へ傾注せず、旧来のオフコンやNEC製小型版オフコンの「N8」向けに「SMILE」を適用し、ユーザー企業へ導入していった。
浸透期
ところが、1980年代後半にマイクロソフトの「Windows OS」が登場し、「MS-DOS」とともに汎用的なパソコンが普及し始め、「オープン化」が進むと、大塚商会とOSK周囲の環境が一変。これに呼応するように、財務・税務・会計など基幹システム向けのパッケージが競合他社から相次ぎ発売された。
初代SMILEの開発責任者だったOSKの宇佐美愼治社長はこう振り返る。「1993年にDOS版で『PC-SMILEα』を出すまで、社内で激しい議論が繰り広げられた。この時は『基幹システムのパソコンにパッケージは向かない』という意見が大勢だったからだ」。この「DOS版」は、先駆的に基幹システムを開発していた山口県のNECディーラーのノウハウを借りて1年がかりで開発した。次にWindows版開発に着手することになったのは、「ユーザー側からでなく、営業側からの後押しで、これからは時代を見据えてWindows版を開発すべきとの意見が上がった」(同)という。このような経過を踏まえ、1995年にWindows版としては他社に先んじて「SMILE」を出した。
この後「SMILE」は、Oracleデータベースにも対応したが、基本的にマイクロソフトのアーキテクチャに傾注。「完全32bit対応版」や「Microsoft SQL Server対応版」を次々とリリースし、次の大きな変革へと向かった。
発展期
現在の「SMILEシリーズ」が、今のように成長した大きな転機となったのは、2000年に出荷した「SMILEie」といっても過言ではないだろう。「SMILEie」は、「SQL Server 2000」に対応し、他のソフトベンダーがほとんど手がけていなかった「完全統合型Web基幹業務システム」だ。
日本特有の業務形態にマッチした「物理3層構造」にしてあり、カスタマイズ開発にかかるコストや導入までの余分なコストを必要としない。今ある他社のERP(統合基幹業務システム)の主流であるWeb版だが、当時は「SMILEie」しか選択肢がなく、競合他社のソフトを次々とリプレースし、現在の地位を築くことに成功した。宇佐美社長は「ASPが勃興し始めた時で、純粋なWeb型システムは他にあまり見られず、当社の『SMILEie』がブロードバンドの普及とともに波及した」と述懐する。
現在・未来
そして現在、07年10月に出荷した中小企業向けで「SMILEis」、08年6月の中堅企業向け「SMILE BS」、今年3月の中堅・大企業向け「SMILE es」と、企業規模などに応じて3階層に分かれた製品展開をしている。「SMILEis」は同社初の64bit対応版で、これを契機に同3階層すべての開発言語統一を進め、製品間の連携を高めた。また「SMILE BS」では「マルチDB化戦略」を打ち出し、これまで無縁だったIBMデータベース「DB2」に対応したソフトを製品化。基幹システムの「SMILEシリーズ」に加えて投入した情報系ソリューション「eValue NS」とともに、販売チャネルは幅広く拡大している。
「SMILEシリーズ」は07年、「SMILEis」の出荷を機に製品ライセンスを大塚商会からOSKに統一した。現在、売上高に占める販売チャネル比率は大塚商会経由の比率が減る傾向にある。宇佐美社長は「『SMILEシリーズ』は、歴史と信頼がある。お客様の業務ソリューションを広げるため業種業務に応じたオプションも数多く開発した。販売パートナーも『SMILEシリーズ』を導入することで、導入の売り上げに限らず、運用・保守で稼いでもらう仕組みづくりを今後も続ける」と語る。
IT技術の変遷の節目に、競合他社の先陣を切ってその当時の最新技術を使った製品を世に送り出してきたOSK。この先の「クラウド・SaaS」時代に向けても、動向が注目される。
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