Special Issue
<BCNランキング 09年 上期No.1>トップベンダーの施策・戦略を聞く 09年上期No.1企業の勝因は
2009/07/30 19:56
週刊BCN 2009年07月27日vol.1294掲載
キヤノンマーケティングジャパン
デジタル一眼、初級モデルが好調
「顧客主語」の製品づくり奏功キヤノンマーケティングジャパンは、2009年上半期でデジタルカメラ(レンズ交換型)=デジタル一眼レフカメラ、インクジェットプリンタ、サーマルプリンタ、スキャナの4部門で首位を獲得した。市場環境が厳しいなか、インクジェットプリンタで出荷台数が前年同期を上回るなど、同社の掲げる「顧客主語」に基づく製品づくりが実を結んだ。下半期は、僅差で2位に甘んじている製品部門についてもNo.1獲得に向けて積極的に動き出す。
デジタル一眼レフカメラ、X3がけん引 市場全体を底上げ
昨年後半からの世界同時不況により、2009年は家電量販店市場のさらなる減速が懸念されていた。だがキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)の09年上半期実績(09年1~6月)は、インクジェットプリンタの出荷台数が前年同期を上回るなど、底力を見せつけた。「当社の経営方針である『顧客主語』に基づく『ものづくり』が、厳しい時だからこそお客様に訴求できた」と、佐々木統・常務取締役コンスーマイメージングカンパニープレジデントは総括し、さらに下半期の躍進に向けた布石を打つことができたと胸を張る。
キヤノンMJは、デジタル一眼レフカメラとインクジェットプリンタは僅差で、またスキャナとサーマルプリンタでは大差をつけて計4部門で上半期No.1を獲得した。デジタルカメラ(レンズ一体型)や他のプリンタ3部門は2位で、競合他社の後塵を拝したが、「すべての部門で差は小さく、シェア上位に位置している」(佐々木常務)と、同社がもつ幅広い層で使える製品カテゴリと豊富なラインアップで巻き返しを狙う。
07年は、デジタルカメラ(レンズ交換型)部門で年間No.1をニコンにさらわれた。しかし、昨年は首位を奪還。この勢いをそのままに、今年上半期も快進撃を続けている。これをけん引した製品は、店頭価格が10万円前後の初級機(エントリーモデル)である「EOS Kiss X2」と「EOS Kiss X3」だろう。上半期では、X2が前半の販売増に貢献し、X3が後半から今後にかけてシェアをさらに底上げしそうだ。
同社のデジタル一眼レフカメラは、初級機、中級機(ハイアマチュアモデル)、上級機(プロフェッショナルモデル)を、趣味・嗜好、カメラの習熟度などに応じて選択できる。中級機は「入門用となる初級機が伸びたことで、予想以上に売れている」(佐々木常務)と、手応えをつかみ始めている。また、2位に甘んじたコンパクトデジタルカメラは、カメラが撮影シーンを自動認識して、適正な設定を行う「こだわりオート」を売りにして攻勢に転じる方針だ。
インクジェットプリンタで楽しさ訴求 遊びごころを機能化
一方プリンタ部門では、今年上半期、昨年の年間シェアでNo.1を奪われたインクジェットプリンタ部門で首位に返り咲いた。シェアをけん引したのは「遊びごころと実用性」を兼ね備えた「PIXUS MP630」と、よりコンパクトなスタイルで好評なMP540の2機種だ。 もっと家庭で印刷する楽しさや実用性をアピールしていきたいという。クルクル回して押すだけで操作できる「Easy-Scroll Wheel(イージー・スクロール・ホイール)」や便利自動両面プリント機能などを店頭や各種イベントで強く訴求していく方針だ。また、昇華型プリンタにおいては簡単操作やデザイン性の向上によって、ターゲットとなるお客様へ強くアピールしてNo.1を獲得している。 そして、もうひとつの入力機器として、スキャナがNo.1 になった。同製品トップは同社の“指定席”だが「この市場は成熟している。だが、独立したスキャナを購入するニーズは確実にある」(佐々木常務)。
同社は全製品で「顧客主語」に基づいた訴求を続け、全体の底上げを狙っていく。
キヤノンマーケティングジャパン=http://canon.jp/
東芝
ノートPC部門は不動のNo.1
ラインアップ充実と先進機能が奏功「BCN AWARD」のノートPC部門を、「2007」から「2009」まで3年連続で制した東芝。世界を市場に戦うメリットを最大限に生かし、あらゆるユーザー層とニーズに応えるラインアップと先進性能を強みに、09年上半期も販売台数増を果たした。「Windows 7」へとOSが切り替わる今年下半期に向け、「業界全体が盛り上がるよう、当社としても魅力的な商品を積極的に投入していきたい」との力強い言葉が聞かれた。
dynabookならではのデザイン性で女性層獲得
東芝は、ノートPC部門で2008年まで3年連続で販売台数シェアNo.1を獲得し、BCN AWARDに輝いている。今年上半期(09年1~6月)もこの勢いをそのままに、販売台数シェアがトップに立った。「おかげさまで販売台数は2ケタ以上成長している。これも家電量販店様を中心としたビジネスパートナーの皆様が一生懸命ご販売いただいたおかげと感謝しています」(東芝 PC&ネットワーク社の影山岳志・PC第一事業部PCマーケティング部部長)という。ノートPC専業メーカーならではの、あらゆるユーザー層とニーズに応える幅広いノートPCラインアップを強みとして、販売台数を順調に伸ばした。
東芝のノートPCは、すべてのお客様に「驚きと感動を与える」ことを狙いに企画・開発されている。ハードウェアのスペックのバランスやコストパフォーマンスはもとより、「筐体の色など、デザイン性も重視した」(同)ことで女性層にも支持され、前年同期を上回る販売実績を残した。販売台数増を牽引したモデルは、先進の機能と16型ワイド画面を搭載し、白、黒に加えて、やさしい色味のピンクと3つのカラーバリエーションを揃えたハイスタンダードノート「dynabook TXシリーズ」と、15.4型で基本機能が充実し、コストパフォーマンスにすぐれたベーシックノート「dynabook EX」だ。
Windows 7対策は万全 東芝は“セレクタブルOS!”
下半期もこの勢いを止めることなく、年間シェア1位を狙う。さっそくマイクロソフトが国内で新OS「Windows 7」を発売する10月22日までの買い控えを見越した戦略を構築。64ビット版と32ビット版のOSを選択できる「セレクタブルOS」を搭載した「dynabook TX(※TX/67J2、66J2、66J2BL、66J2PK)」を7月11日に投入。TXは「Windows Vista」から「Windows 7」にアップグレードする場合も、64ビット版または32ビット版を選べる。つまり2世代のOSに渡って利用者がインストールOSを選択できる。影山部長は「新しいOSが出ることはPC市場においてはビックイベント。業界全体を盛り上げるためにも、まずは『優待アップグレードキャンペーンで、ノートPCは今が買い時だ』ということをお客様に強力にアピールする」と、万全の買え控え対策で備える。下半期では「販売を担当する東芝コンシューママーケティングと共に全国量販店等パートナーの皆様との連携を密にし、さらに各店舗を担当する営業マンのラウンディング力を強化。お店と一緒になってユーザーの需要を喚起していきたい。そして当社製品群の中から各ユーザーにマッチしたノートPCを選んでいただきたい」(同)。また「当社のノートPCユーザーの方にはこの次もそしてずっと当社製品を使っていただきたい、そのためにもサービス・サポート力は非常に重要」(同)。そのために同社では、独自の「東芝ノートPCサポート・サービス」も強化している。
世界展開の強みを生かし、ラインアップを充実、外資系にはない細やかなサポートを提供する東芝ノートPC。製品・販売・サポートが一体となった体制で、「BCN AWARD 2010」の獲得を確実にする。
東芝=http://dynabook.com/