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<日本ストラタステクノロジー特集>vSphere4対応のftサーバーが融合

2009/06/30 19:55

週刊BCN 2009年06月29日vol.1290掲載

 「フォールト・トレラント(ft)サーバー」(無停止型サーバー)ベンダーの日本ストラタステクノロジーは、企業システムの統合ニーズが高まるなかで、仮想化ソリューションに対応した製品ラインアップを強化している。5月下旬には、ヴイエムウェアのクラウドOS「VMware vSphere4」対応のftサーバー2機種を提供開始。システム開発するSIerはこれにより、シンプルで柔軟性のある「高可用性仮想化ソリューション」を簡単に提供できるようになった。また、多店舗展開する中堅・中小企業(SMB)向けには、投資コストを抑えディザスタ・リカバリ(DR)を実現できる仮想化プラットフォーム「Stratus Avance Software Version1.5」の販売を始める計画だ。

外部ストレージ不要に

 日本ストラタステクノロジーが「VMware vSphere4」の対応版として提供開始したftサーバーは「ftServer 6210システム」と「ftServer 4410システム」の上位2機種。これにより、ヴイエムウェアの「VMware ESXサーバー」(バーチャルマシンを実現する制御プログラム=仮想化OS)が両機種で実行可能になった。

 両社の親会社は「グローバル・アライアンスパートナー」の関係にあり、ストラタステクノロジーのftサーバーは従来機種から「VMware Infrastructure3」(V13)に対応していた。

 「VMware vSphere4対応のftServerでは、さらに機能向上を図り、障害復旧時のメモリ同期がヴイエムウェアのカーネルに完全対応した」(松本昌洋・営業本部プリセールス推進部長)

 その結果、信頼性が高まり、高可用性のあるシステムインフラが提供でき、よりシンプルで柔軟性を備えた仮想化環境を構築できるようになったという。

 今回の対応版ftServerは、「VMware vSphere4」が持つ6種のエディションすべてが稼働可能。従来型のV13対応版のftServerが持つ機能に新機能を付加しており、「VMware vSphere4」と仮想マシンをftServerの冗長化された内蔵ディスク上にセットアップできるようになった。内蔵ディスクの片側に障害が発生しても、動作に影響を及ぼさず、外部ストレージを使用しない最小ハードウェア構成で構築が可能だ。

 これまでは「外部ストレージが必須で、大型の共通基盤での提案が中心であった」(松本部長)。また、NFS(Network File System)とiSCSI接続の外部ストレージを選択できるため、中堅クラスの企業への導入を促進でき、パートナーであるSIerはユーザー企業のすそ野を拡大できる。

障害時のインパクトを軽減

 サーバー統合の際に「VMware vSphere4」の機能を使うことで、仮想マシンの移動や最適化、サーバー障害発生時に仮想マシンを別のサーバーで起動できる。

 しかし、これによってアプリケーション処理やデータ保護が担保されるわけではなく、自動的に業務処理を再開・継続することも困難だ。

 松本部長は「複数のサーバーを統合した環境では、停止した場合のインパクトは分散したサーバーの何倍にもなる。そのインパクトとリスクを対応版ftServerがカバーする」と、仮想化の技術的な課題や費用面の問題を一挙に解決へ導いたという。

 仮想化技術を利用することにより、企業システムに高可用性と利便性がもたらされた。クラスタ構成で困難だったパッチ適用後の障害回復が仮想化環境では、適用前の状態に復元できるなど、数多くのメリットがある。

クリックで拡大 ただ、仮想化でシステムを統合し、それが増大することで、障害発生時のインパクトや問題切り分けの複雑さ、I/O性能低下など、技術的な課題があった。

 松本部長は「仮想化機能を充実させることで、論理サーバー当たりのコストを抑制できた。技術、費用の両面で障壁が低くなった」と、コスト削減を重視し、しかも信頼性の高いシステムを要望する企業に最適な提案ができると訴求する。新機種では仮想OSに「Windows Server 2008」の選択も可能にし、VMwareソフトや「Red Hat Linux」など従来のゲストOSを含め、ワンストップでサポートを提供。SIerにとっても安心してユーザー企業に提供できる環境が整うことになった。

99.99%を実現する仮想基盤も

 これとは別に、日本ストラタステクノロジーは昨年末、ftServerを導入するほどの費用を捻出できないSMBで、しかも地方に分散するシステム環境を持つユーザーに対し、ハイアベイラビティ・仮想化プラットフォーム「Stratus Avance Software」販売を開始した。6月10日には、異なるロケーションにサーバーを設置して構成することができる機能などを追加した同Version1.5を発表した。

 「Avance」は、同社が培ってきたftServerのノウハウを投入。一般的なx86サーバー2台構成で稼働し、フォーナイン(99.99%)の高可用性を実現した。Version1.5は、すべての管理操作をブラウザで実行可能。

 また、iSCSIデバイスをサポートし、従来のサーバー間で実行するミラーリング(RAID)に加え、単体サーバー内でハードウェアRAIDに対応している。

 松崎展晃・営業本部ストラテジック・テクノロジーアライアンス部部長は「『無停止』とまで信頼性はなくてもいいから安いモデルがほしいというニーズに応えた製品。“ニアft”といえる」と語る。シトリックスの仮想化ソフト「XenServer」を搭載し、サーバー2台構成で標準価格は98万円(1年間の保守サポート費込み)。同社のftServerを取り扱ってこなかったSIerなどを、同製品で開拓する計画だ。一般的な仮想化ソリューションの抱える課題を同社製品が解決へ導くことになる。


日本ストラタステクノロジー=http://www.stratus.co.jp/
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