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<トップ対談>NEC×RSAセキュリティ 統合ログ管理で戦略的提携の実現を果たす

2009/03/25 19:55

週刊BCN 2009年03月23日vol.1277掲載

 NECとRSAセキュリティが統合ログ管理分野で提携し、アプライアンス製品の発売に踏み出した。両社が製品化を実現したのは、NECのPCサーバー「Express5800」と、RSAセキュリティの統合ログ管理ソフト「RSA enVision」を組み合わせたもの。国内PCサーバー市場で13年連続のシェアNo.1*を継続するNECと、統合ログ管理市場でリーダー的な存在のRSAセキュリティが組んだ意図は何か。NEC第一システムソフトウェア事業部長・森正氏とRSAセキュリティ代表取締役社長・山野修氏に話を聞いた。


両社の主力製品を組み合わせニーズに対応
RSA enVision powered by Express5800

アプライアンス製品を国内投入 相乗効果で最適な製品に

 ――まず、統合ログ管理分野で提携した背景を聞かせてください。

 当社と(RSAセキュリティの親会社である)EMCは、これまでも多くの分野で提携してきました。セキュリティ分野でも密接なパートナーシップを組もうということになり、実現したのがRSAセキュリティとの統合ログ管理分野での提携です。地道かつ着実に提携を進めていき、お客様のニーズにマッチした製品が提供できたと確信しております。また、最近はコンプライアンス強化に対応するため、急速に統合ログ管理へのニーズが高まりつつもあり、ベストなタイミングで製品を市場投入することができました。

山野 当社の統合ログ管理アプライアンス「RSA enVision」は、海外で1400社以上、日本で150社のお客様が導入しています。統合ログ管理市場では、リーダー的な存在になっていると自負していますが、この先を考えた場合、サポートも含めたさらなる展開が必要となってくると実感しています。そこで、定評のあるNECのハードウエアとそのサポート力を「RSA enVision」の付加価値とすることで、お客様への満足度を高め、普及を促進していく足がかりになるのではないかと考えました。当社は「RSA enVision」をアプライアンスで提供していますが、ソフトウェアだけを取り出すことになったのは、NECとのパートナーシップの深さを表しています。今回のようなソフトウェアだけでのOEM提供は、ワールドワイドで初の試みです。

 ――このたびの提携が実現したことで誕生したアプライアンス製品「RSA enVision powered by Express5800」の特長を教えてください。

 当社が提供するPCサーバーの「Express5800」に、RSAセキュリティの統合ログ管理ソフトである「RSA enVision」を組み合わせることでアプライアンス化を実現しました。「RSA enVision」はワールドワイドで知名度の高い製品で、国内外ともに幅広く導入されています。高速なログ収集やログの適切な解析、レポート作成などは機能面での大きな特長です。

 「Express5800」に搭載したのは、国内PCサーバー市場でトップシェア*というお客様からの高い信頼感があるからです。そこにブランド力の高いRSAセキュリティのソフトを搭載することでお互いの強みを活かした製品となっています。

 内部統制関連で統合ログ管理に対するニーズが急速に高まりつつある現在、完成度の高いアプライアンス製品を市場投入できたことで、お客様の期待に応えることができると確信しております。

山野 ログ管理ソフトというのは昔からありますので、決して「新しいもの」というわけではありません。しかし、「RSA enVision」は他社製品では実現が難しいログ管理、コンプライアンス、セキュリティ・オペレーションの3つの観点を持っているのが最大の特長です。従来型のログ管理は、サーバーやアプリケーションのログ管理がメインでしたが、「RSA enVision」では「統合」という観点でネットワークに散在する機器やサーバー、アプリケーションのログを一括で収集し、さまざまな角度から解析が行えます。多目的にログを活かせるという点で、最近は統合ログ管理が脚光を浴びているのもうなずけます。

 「RSA enVision」は、ワールドワイドで提供していますが、日本では07年7月に市場投入し、2年弱で実績は着実に伸びています。おかげさまで暗号と認証に続き、この市場でもリーダー的な存在となりました。今回のNECとのアライアンスで一段と市場の活性化にはずみがつくと確信しています。

内部統制への適切な対応がユーザーのメリット

 ――製品の導入によりどのようなメリットがあるのですか。

 まず対象ユーザーとして想定しているのが、中~大規模の企業や団体です。なかでも、官公庁や自治体、金融機関、教育機関などで高いニーズがあるとみています。

 こうしたお客様が導入するメリットは、自社のシステムで何が起こっているかが把握できるという点です。これまでのログ管理製品はログを収集することに重きを置いており、どのように活用すればいいか分からないというケースが多かったといえます。その点、「RSA enVision powered by Express5800」は用途に応じてレポートを作成するためのテンプレートや、ログ解析機能を提供しており、簡単に活用していただけるようになっています。このメリットはとても大きいと考えています。

山野 導入するメリットとして最も大きいといえるのがJ-SOX法への対応です。昨年4月から国内では法制度が適用され、上場企業を中心として対応に力を注いでいます。しかし、なかなか対応しきれていないというのが実態ではないでしょうか。

 お客様の多くは、監査法人から指摘を受けていることもあり、「証跡として使える履歴を取りたい」との声を上げています。監査法人によるレポート要求に対して迅速に対応しなければならないからです。1100種類ものテンプレートをそろえたレポート作成機能により、お客様の課題解決に十分対応できるとみています。米国では、SOX法施行の翌年度以降から、統合ログ管理に関するニーズが高まってきました。国内も米国と同様、今年4月以降からそういったニーズが急激に出てくると確信しています。

 ――内部統制に対応しながら、その周辺の課題解決にも役立つということですね。

山野
 そうなんです。アプライアンスですので、導入は簡単ですし、スムーズに稼働開始させることができます。

 また、内部統制では、サーバーにアクセス違反があった場合に「誰が」「どこから」アクセスしたのかを把握しなければなりません。「RSA enVision」ではサーバーとアプリケーション、ネットワークなど統合的に管理できるため、こうした課題にも対応できます。また、不正なアクセスがあった際、わずかな兆候でもリアルタイムに問題を検出できることも特長になっています。

アプライアンスは売りやすい コンサルや全国網保守で後押し

 ――売り手のメリットは何ですか。

 まず、アプライアンスなので、販売パートナー様にとっては手離れ良く売りやすいという点が挙げられます。販売は、当社とRSAセキュリティそれぞれの販売パートナー様が担当します。当社の販売パートナー様にとっては、「RSA enVision」の機能を搭載した製品を提供できるようになりますし、ほかの製品を組み合わせたソリューション創造にもつながると考えています。

 そして、最大のメリットはサポートです。当社グループのNECフィールディングが持つ全国網の拠点で、365日24時間いつでも駆けつける体制を整備しています。ですので、販売パートナー様に安心して販売していただけます。

山野 当社の「RSA enVision」販売パートナー様は、2年という年月をかけて販売ノウハウを蓄積しています。今後は、NECのPCサーバー「Express5800」を組み合わせた販売も行えるようになりましたので、さらに需要を増やせるのではないかとみています。サポートに関しては、OEM提供していますので、NECにお客様のサポートをしていただくことになりますが、もちろん当社もバックエンド・サポートを積極的に行っていきます。

 統合ログ管理製品は、ワールドワイドで情報セキュリティ市場の10%を占めるようになっています。新しい製品カテゴリとして、ますます国内市場でビジネスチャンスが広がります。内部統制のコンサルティングを含めてソリューション展開も行えますので、当社の販売パートナー様にとって、今回のNECとの提携はメリットになると確信しています。

 ――販売代理店の新規開拓は行っていくのですか。

 はい。当社の「Express5800」に関する販売契約を行っていただければ、今回の「RSA enVision powered by Express5800」を販売できます。新規契約していただける企業へ積極的にアプローチしていきたいと考えています。

 ――販売代理店によるソリューション提供として、どのようなことが考えられますか。

山野
 上流工程のコンサルティングを含めたソリューションが最適と考えています。発表した2月には、コンサルティング会社のアクセンチュア様にエンドースしていただいております。内部統制関連のコンサルティングを組み合わせれば、お客様へ大規模導入を提案することができます。アプライアンスの売りやすさとソリューション展開が行える点も販売パートナー様にとってメリットになります。

 ――当面の目標や今後の展開について教えてください。

 売り上げ目標については、SIを含めて今後3年間で200億円を見込んでいます。そのうち、アプライアンスの販売台数は1000台以上を目指しています。当社にとって、PCサーバー販売の底上げにつながると確信しています。

 そのためにも、まずはRSAセキュリティや販売パートナー様と協力しながらマーケティングも含め「RSA enVision powered by Express5800」をいかに立ち上げるかに専念していきます。次のステップで、RSAセキュリティのさまざまな製品を生かした共同開発を行い、今後も良好な関係を築いていきます。

山野 当社としても、今回を機にNECとのパートナーシップをさらに深めていく所存です。

 定評のあるRSAセキュリテイの統合ログ管理ソフトと、実績のあるハードウェアプラットフォームを提供・サポートしているNEC。

 市場をリードしている2社のアライアンスで実現した「RSA enVision powerd by Express5800」は、ユーザー企業、販売パートナー双方にとって、大きなメリットをもたらすだろう。導入・販売しやすいアプライアンスでありながら、ソリューション展開も可能な「RSA enVision powerd by Express5800」の優位性は、他に類を見ない。

 果たしてこの製品は、関心が高まる統合ログ管理市場の台風の目となるか。今後の動向に、注目が集まっている。




*1996~2008暦年国内x86サーバー(出荷台数、出荷金額)
出典:IDC Japan's Japan Server Quarterly Model Analysis Q4 2008
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外部リンク

RSA enVision powered by Express5800=http://www.nec.co.jp/rsaenvision/