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<システム・テクノロジー・アイ特集>伸び盛りの「LMS」を大幅強化 積極投資でシェアトップを狙う

2009/03/19 19:56

週刊BCN 2009年03月16日vol.1276掲載

【CASE STUDY】キリングループ
「iStudy」導入で「使い勝手」向上
コンテンツ作成ツールが決め手に

 キリングループは昨年、社員研修用システムをグループ全体で相互利用できるように再構築した。キリンビール単体で利用していた既存オンライン研修システムのサポートが終了するのを機に、システム・テクノロジー・アイの学習管理システム(LMS)「iStudy Enterprise Server」に入れ替えた。同LMSが本稼働した昨年9月末以降は、社内の研修コンテンツ作成者や受講者の「使い勝手」が向上し、保守料金などを含めて月額100万円弱のコスト削減を実現した。キリン側で示した厳しい要件を最も満たすシステムだったことが採用の決め手になった。

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グループ全体利用のLMSへ 利用・運用者の負荷軽減が条件

 キリングループ内では、昨年9月末に新システムが稼働するまでの間、グループ各社が個別に導入したシステムを利用しており異なるドメイン間でのコンテンツ相互利用ができない状況だった。このほか、有料のASP型システムなどを利用していた。同システムが2009年末にサポート終了するのを機に、同年4月から「新システム導入」の検討を開始した。

 グループ全体の情報システムを担当するキリンビジネスシステムが中核となって「グループ各社が独自導入するのではなく、グループ全体で相互利用でき、コスト削減も実現できる社員研修用システムにする」(木場一成・情報技術統轄部ワーキングスタイル変革グループリーダー)ため、複数の条件をRFP(提案依頼書)に盛り込み、LMSを提供する6社に提案を依頼した。

 このRFPに記載された条件は、グループ全体で利用でき、研修コンテンツを利用するユーザーの負荷が少なく安定したシステムで、研修運営者の運用負担を少なくする──などである。また、新システムを導入するにあたり、各グループ会社が個別システムを構築せず、外部へ発注していたコンテンツ作成や研修の運用工数を減らしてコスト削減を実現することを目標に掲げた。

 このような条件を課した背景には、既存のオンライン研修システムで、次のような利用・運用上の問題を抱えていたためだ。一つには、社員がローカル環境で使うWindows環境のIDと同研修システムのログインIDが異なり、「パスワードを忘れたり、入力が面倒などで利用率が上がらなかった」(木場リーダー)。さらには、受講案内や状況を伝える「リマインダーメール」の文面がサーバー内に1パターンしかないため「受講すべき内容が異なる社員ごとに分けて案内を発信できないほか、未受講者だけへの催促ができないため、受講者から管理者へのクレームが多く運用負担が増していた」(同)と、利用者・運用者とも不便さを感じていた。

 また、利用上で最もコストを割いていたコンテンツ作成は、「年度初めに計画した研修コンテンツを月1回程度しか公開できず、教育の機会を失いかねない状況だった」(木場リーダー)と、1回開催分の受講用のコンテンツ作成を20~30万円で外部へ発注していた費用を削減でき、適宜コンテンツを作成・発信する方法を模索していた。

コンテンツ内製化し無料で作成 セミカスタイマイズが容易に

 新システムの選定にあたってキリンビジネスシステムは、LMSを提供する6社に対してRFPを出し「提案書」の作成を依頼。多ベンダーが競合するなかでキリングループのLMSとして採用したのがシステム・テクノロジー・アイの「iStudy Enterprise Server」を提案したシーエーシーだ。木場リーダーは選定のポイントをこう説明する。「RFPの要件を最も満たしていた。特にコンテンツ作成ツール『iStudy Creator NX』の評価が高く、外部委託していたコンテンツ作成を内製化できコスト削減効果が特に期待できた。ライセンス費用の考え方もグループ全体で利用する目的に合致しており、ランニングコストも他社に比べ安価だった」。

 コンテンツ作成はそれまで、外部の作成会社に依頼。期間は1か月程度を要していた。これにコンテンツをサーバーに搭載する準備やユーザー登録などの運用作業などが加わり、1本のコンテンツを立ち上げるまで2か月程度かかっていた。また、社内アンケートを頻繁に実施していたが、これについては有料のASPサービスを利用しており、開催のつど費用が発生するほか、コンテンツの立ち上げにも時間を要していた。「飲料業界では酒類などを扱ううえで必要となる知識が多岐にわたり、季節に応じてタイムリーに内容を提供できなければ受講率も上がらない。従来の仕組みでは、オンライン研修にせよアンケートにせよ外部業者への作業費用が発生するために社内稟議など面倒な事務処理が多く、変更を断念するケースもままあった」(木場リーダー)と、良質なコンテンツであってもタイミングを逸すれば無駄になりかねなかったようだ。

 従来は「実力テスト」形式で問題すべてを回答したあとに正否結果が表示され、正解の解説を読み返さない傾向があった。だが、「iStudy Creator NX」を使うことで「1問1答」形式でコンテンツを実装可能で、1問答えるたびに解説を強制表示でき、内容に対する習熟度の向上が期待できる。

 「Microsoft Office」などで簡単にコンテンツ作成できる「iStudy Creator NX」は、利用・運用上の課題すべてを一気に解決へ導いた。現在では、「コンテンツを無料で2週間程度で公開できるまでになった。自由な発想でユーザー教育ができるとあり、小さな研修やアンケートを活発に実施・利用している」(同)という。さらに「ログインIDが異なり問い合わせが殺到し多忙を極めた運営者も、『iStudy Enterprise Server』に搭載のシングルサインオンで手間が解消され、どのグループ会社もアクセスできることを実現した」(同)と、グループ会社別に「個々のシステム導入をしない」ということなど、冒頭に解説したキリン側が提示した条件はほとんど満たせたことになる。

 「採用後に感じたが、セミオーダーでカスタマイズを提供してもらえる」(木場リーダー)と、稼働後のメリットを感じている。これまでコンテンツは、対象者を決めて受講させる1回だけの利用が中心だったが、次のステップとして「ライブラリ機能」を実装して常に受講できるコンテンツを用意できる仕組みにする。社員は受講したい時に閲覧・検索して興味のあるコンテンツを利用でき、全体の教育進捗状況を把握もできるため研修に対する意識向上につなげていきたいと考えている。