オフィスプリンタ市場では、現在エントリー向け製品が好調に推移している。その要因は「サイズ」と「コスト」にある。これまでカラーレーザープリンタは、筐体サイズが大きめであるため、設置場所が限定されていた。また、多店舗展開している企業は、それぞれの店舗にプリンタを設置したいと考えても、導入コストがハードルとなり、実現が難しかった。これらの課題を解決できる製品として、エントリー向け製品が伸張しているのだ。
オフィスのカラー化は一段落 数年前、プリンタ市場ではオフィスのカラー化が大きなテーマとなっていた。モノクロプリンタからのリプレースを進めるにはどうすべきかについて真剣に討論し、そこから多くの提案が生まれた。カラーの出力はモノクロの出力に比べて情報量が多く、訴求力も強い。「伝える」道具としては、明らかにカラーのほうが優れている。しかし、こうしたメリットを強く打ち出しても、カラー出力は「コスト高」というイメージが強く、本格的な普及には至らなかった。現在、各プリンタメーカーは、カラー出力のコストを下げるための機能として、トナーセーブモードだけでなく、機器自体の省エネも推進し、トータルコストの削減を実現している。こうした努力を積み重ねてきた結果、オフィスのカラー化は進み、多くの企業にカラープリンタが導入・運用されるようになった。
エントリー製品が新たなビジネスチャンスを生む カラーのメリットは充分熟知していても、これまで導入できなかった市場があった。例えば、店鋪のバックヤードや調剤薬局など、プリンタの設置スペースをほとんど確保できない市場だ。これらの市場では、設置スペースが少なくて済むモノクロプリンタやインクジェットプリンタなどが導入されている。しかし、速度・品質といった面から、カラーページプリンタを利用したいという潜在的ニーズはあった。その市場が、今、エントリー向けのカラーページプリンタに注目している。
エントリー向けカラーページプリンタは、サイズがコンパクトで、導入・運用コストが安い。最近では、業種・業務を意識して、サイズはそのままに用紙対応力や大容量トレイを装備している製品も登場している。
実際、業種・業務での出力には、さまざまな「用紙」が使われている。POPやポスターといったものから帳票まで、その用途はさまざまだ。当然、「用紙」の厚みもばらばらだ。
より多種類の用紙に対応できなければ、業務で活用できる製品とは言えない。このあたりの課題は、ハイエンドモデルが得意とする領域だ。こうした背景から、ハイエンドで培ったノウハウを生かしたエントリー向け機種が少しずつ出始めている。
不況感が強まっている現在、無駄な投資はできない風潮ではあるが、生産性の向上を実現する提案は、好調に推移している。業種・業務で使えるエントリー向けプリンタは、新たな市場を生む商材として期待されている。
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