Special Issue

BEA統合後初 新アプリ・サーバーを提供開始

2009/01/26 15:49

週刊BCN 2009年01月26日vol.1269掲載

 日本オラクル(遠藤隆雄・社長CEO)は2008年11月、オラクルによるBEAシステムズ(BEA)統合後初の新アプリケーション・サーバー「Oracle WebLogic Server10g R3」の提供を開始した。新製品は、BEAの「WebLogic」を中核コンテナに採用し、データベース連携や開発環境に優れたオラクルの「Oracle Fusion Middleware」機能を融合。双方のアプリケーション・サーバー機能の強みを最大限活用することにより、企業にシステム提供するSIerなどのパートナーでは開発工程や運用管理工程、システム拡張・増強、障害時対応などの手間を省き大幅に工数を簡素化できるようになった。また、価格も従来の半額程度に下げ、価格と機能の両面でメリットを享受できる製品へと生まれ変わったことも大きな魅力だ。

「Oracle WebLogic Server10g R3」
開発工程・導入・障害対応コストを大幅低減 パートナーに付加価値生む

新価格はおよそ半額

 「Oracle WebLogic Server10g R3」は米オラクルが米BEAシステムズを統合後、両社のアプリケーション・サーバーを融合し国内で初めて提供するミドルウェア製品。Javaのオープン標準技術「OSGi(Open Service Gateway initiative)」に基づき統合した「商用アプリケーション・サーバー」だ。機能をモジュール化して統合したことで、必要機能だけの追加・削除やパッチの適用、より動的なノード管理を可能にした。また、組み込み用途にも使いやすい、メモリ構成に応じた最適化が可能となっている。新製品は障害対応機能の自動化レベルなどで3タイプを揃えた。機能の優位性に加えて各タイプ別に従来に比べ35~55%安い価格で提供し、違いを鮮明にした。

 新製品は、アプリケーション・サーバーそのものの機能に加え、企業向けにシステム開発するSIerなどの作業の手間やコストを低減する。そのために、両社製品の良さを生かし、さまざまな作業工程で利用する「自動化機能」と呼ばれるツール類(購入ライセンス料金に包含)をふんだんに盛り込んでいるのが特徴だ。「パートナーの中には『オープンソースのアプリケーション・サーバーで十分』と商用製品を敬遠するベンダーもいる。そこで新製品は価格を大幅に下げたほか、開発および運用側の作業工程で生じる手間を格段に減らせる製品にしている」と、担当する杉達也・製品戦略統括本部Fusion Middlewareビジネス推進本部担当シニアマネジャー。オラクルが得意とする開発環境と運用支援機能を実装し、パートナーへ全体的な使い勝手の良さを提供できるという。

さまざまな自動化ツールを提供

 「Oracle WebLogic Server10g R3」では、Java統合開発環境「Oracle JDeveloper」、インメモリ・データグリッド製品「Oracle Coherence」、マッピングツール「Oracle TopLink」、統合運用管理製品「Oracle Enterprise Manager」など、「Oracle Fusion Middleware」製品との連携性を実現している。また、Ajax対応のリッチクライアント製品「ADF RichClient 11」を搭載しているため、このユーザー・インタフェース(UI)・コンポーネントを追加することで、Web上でも使い勝手のよいリッチクライアント・アプリケーションを簡単に設計・開発できる。

 パッケージソフト開発ベンダーなどは、自社のパッケージ製品をWebアプリケーション化する際に有効活用できる。杉担当シニアマネジャーは「マイクロソフトのVisual BasicでWindowsアプリケーションを開発するようにリッチUIのWebアプリケーションを開発できる」と、開発が簡単で使い勝手の良い製品であることをアピールする。

 SIerなどが企業にシステムを導入する際には、障害対応のための自動化機能が作業コスト削減に威力を発揮する。杉担当シニアマネジャーは「開発工程や運用管理工程、システムの拡張・増強、システムを付加する際の問題分析、障害時の解析・チューニングなどを自動化できる」と、パートナーへ利用を促す。

 例えば障害対応機能では、トラブルの際に、ログを自動収集・アーカイブすることによって人手による作業を軽減できるほか、ログには現れない詳細な情報を直接Java VMから収集することもできる。本番環境から、パフォーマンスのオーバーヘッドなく詳細情報を収集できるため、多大な作業コストがかかる再現環境の構築や再現テストなしでも障害の原因究明ができるようになる。加えて、JavaからDBアクセスする処理を追跡してトレースする分析機能も包含。システムの面倒を見る立場での作業負荷を大きく改善する。また、高速・高機能Java VM(仮想マシン)「JRockit」を使うことで、Java開発者を悩ませるガベージ・コレクション(プログラムが動的に確保したメモリ領域のうち不要の領域を自動的に解放する作業)をJava VMレベルで制御できるという。「旧WebLogicを使うユーザー企業やパートナーには、オラクル・ミドルウェアの良さを簡単に享受できる。逆にオラクル製品を扱っていた場合は、より柔軟で付加価値の高い機能を利用できる」(杉担当シニアマネジャー)ため、幅広い層のユーザー企業へ提供できると説明する。

グリッド環境も充実

クリックで拡大 「Oracle WebLogic Server10g R3」を含む最上位エディションは、「次世代グリッド型アプリケーション基盤」へと進化している。サーバーなどITインフラは導入初期にピーク時を想定した容量を計画するが、この方式だとIT投資がかさむ。「小型パソコンや安価なワークステーションを並べてメモリ横断のインフラを構成する機能で遊休リソースをシェアし、無駄な台数のサーバーを確保する必要がなくなる」(杉担当シニアマネジャー)と、データベースで実現している機能をアプリケーション・サーバーでも展開するという。パートナーにとっては、テスト工程を含めたシステム開発工程の大幅な削減が可能になり、パートナーがユーザー企業に説明する際にも、開発・運用管理手順の簡素化や総所有コストを減らせるメリットなどを説明できる。同社や旧BEAの新旧パートナーにとって、新たなビジネスチャンスを生む「キラー製品」になりそうだ。
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外部リンク

日本オラクル=http://www.oracle.com/lang/jp/