Special Issue
<プリンティングソリューション特集>中堅・中小企業への提案が伸長のカギ(上)
2008/11/28 19:56
週刊BCN 2008年11月24日vol.1261掲載
カシオ計算機
オフィスと業種を両輪に好調な推移
エコロジーはもちろん、運用時のTCO削減も訴求
セキュリティと環境配慮 今できる対策を実現「2008年の上期マーケットを振り返ると、台数的にはカラーが伸びており、モノクロは前年の水準にやや届かずといった状況にあります。また単価が全般的に下がっていることもあって、業界全体としては厳しい状況にあると感じています」と、国内営業統轄部・システム企画部・VCI企画室・リーダーの西田公浩氏は語る。
しかし、カシオの状況は一般の市況とは異なる。08年6月に市場投入された「SPEEDIA(スピーディア)N3600」が好調に推移しているのだ。好調のポイントとなっているのは「セキュリティ」と「環境への配慮」にある。
「N3600」はコピーガードやID印刷など、セキュリティプリント機能を標準装備している。これらの機能により、印刷物の盗み見や持ち出しが防げる。「セキュリティ」で最初に思いつくのが一般オフィスでの活用だが、「N3600」では、アルバイトなど人の入れ替わりの多い業種での活用が予想以上に多いという。
「N3600」は、ユーザーごとの印刷権限やセキュリティ権限を管理者が設定できる。柔軟な権限設定を認証サーバの導入なしで実現できるため、多くのユーザーが1台のプリンタを共用する場合も、十分実用的なソリューションとなっている。「“N3600”は追加投資なしでセキュリティ対策を実施できます。導入して実際に効果が出てきたためか、最近では“N3600”のリピートも増えております。セキュリティ対策などは始めないと意味がありませんが、“N3600”については、すぐにでも“はじめられる”という部分が高く評価いただいていると思います」(西田氏)。
注目のカーボンオフセット対応製品を広げる
さらに「環境への配慮」では、プリンタ業界初の「カーボンオフセット付き回収協力トナー」を提供。プリンタが排出するCO2を、温室効果ガス削減プロジェクトで相殺するカーボンオフセットをつけることで、印刷にかかる実質的なCO2排出量ゼロを実現している。また、カートリッジは回収後にリユースすることで、消耗品コストの削減にも寄与している。
N3600に対応する「カーボンオフセット付き回収協力トナー」は、従来機種(N3500/N3000)でも利用可能だ。今すぐにでも実践できるエコロジーということができるだろう。「10月からは、カラーの高速・高耐久モデル“N6100”や、モノクロモデル“B9000”用の“回収協力トナー”もカーボンオフセット付きに切り替えました。すでに該当機種を利用しているお客様は製品を買い直すことなく、しかもこれまでと同じトナー価格で環境への配慮を高めることができます。官公庁はもちろんのこと、CSRに積極的に取り組んでいる企業からも注目されています。カーボンオフセット対応機種の拡大に関してお問い合わせも多く、高い評価をいただいています」(西田氏)。
販売パートナーには“グリーンIT”をキーワードとした推奨商品として利用できるなど、ビジネスチャンスを広げる製品として活用されている。
また、「エコロジー=エコノミー」という部分も忘れてはならない。エコロジーを推し進めれば無駄をなくすことにつながり、セキュリティを高めれば、無駄な印刷も必然的に減ってくる。つまり、全体のコスト削減にも大きく寄与するのだ。プリンタは、導入コストに目がいきがちにはなるものの、運用コストの低減がTCOの削減につながる。そういった観点からも、下期は展開を行っていくという。
「N6100」はプリントボリュームの高い企業から支持を得ているロングセラーモデルだ。非常に高い耐久性をはじめ、市場の先駆者として蓄積してきたノウハウを集大成した機種で、こうした機種を擁するのも同社ならではの強みとなっている。 カラーでは「N3600」「N6100」を両輪に展開しているカシオ計算機。顧客の声に応え続ける姿勢は市場でも注目され、下期の展開に注目が集まる。
カシオ計算機=http://casio.jp/
ニッケンハードウェア
簡単・安い・早いを実現したカード印刷システム
退職した従業員のICカードも再利用できるICカードプリントシステム
さまざまな課題のあるICカードの印刷ニッケンハードウエアは、1966年に鋼製家具部品の製造販売を行うニッケンとして創業。2000年には、オフィスセキュリティ事業に参入し、建築錠前・入退室管理システム・監視カメラシステムなどの販売・施工を開始している。
「システム事業部では、オフィスセキュリティ事業を中心に展開しています。入退室管理システムを販売するなかで、お客様から入退室に利用する非接触ICカードを自社内で簡単に発行できないか、という要望をいただきました。その声をヒントに開発したのが“ぴたっとカード”です」と、システム事業部・部長の岡本秀樹氏は語る。
入退室管理システムで利用される非接触ICカードは、通常社員証として利用できるよう、部署や氏名、顔写真などが印刷されることが多い。これらは、カード印刷店に印刷を依頼するか、もしくは、専用のカードプリンタを導入し印刷するしかなかった。カード印刷店で印刷する場合には、納期が遅かったり、印刷代や送料などが高いといった課題もある。また、社員情報をカード印刷店に渡すため、情報漏えいの危険性も危ぶまれる。しかし、専用のカードプリンタは導入・運用コストが高く、利便性も低い。小ロットの印刷を行うために、導入するにはあまりに障壁が高いのだ。さらに、従業員が退職した後の非接触ICカードの取り扱いも課題となっていた。カード面に直接印刷してしまう方式では、従業員の退職後、そのカードを廃棄しなければならない。パートや派遣社員など従業員の入れ替わりが多い業種では、カードの購入経費が膨らんでしまうため、再利用したいとするニーズが高まっている。
きれいに貼るため随所に工夫
「ぴたっとカード」は、パソコンとインクジェットプリンタがあれば、簡単にICカードの発行をできるプリントシステム。印刷シート、ソフトウェア、専用の貼付治具などをワンパッケージにして提供されている。「デザインを豊富なテンプレートから選ぶこともできますが、カスタマイズしてオリジナルデザインも作成可能です。写真の切り抜きやロゴマークの背景を透明にするといった処理もできます。社員番号をバーコード化したり、QRコードを作成する機能も用意しています」(岡本氏)。
作成したレイアウトは保存することも可能なため、部署ごとやグループ企業などで別のレイアウトを採用する場合にも活用できる。また、印刷シートは強粘着の「標準シート」と再利用できる「再剥離シート」の2種類が用意されている。さらにオプション品として、A4サイズとはがきサイズの追加シートパックがある。「印刷枚数が少ない場合には、はがきシートを使うことで、ムダを最小限に抑えることができます。また、下地が透けない“透け防止シート”の販売も予定しています。これまで以上にカードの再利用が進むでしょう」(岡本氏)。
シートは、耐水性に優れ、気泡ができにくい実用新案登録の特殊シートを採用している。しかし、それだけではない。専用の貼付治具を使うことで、すばやくきれいにカードを貼り付けることができるのだ。「レイアウトなどを印刷しても、きれいに貼れなければ意味がありません。“ぴたっとカード”専用に設計された貼付治具を使えば、シートを決まった位置に簡単に貼り付けることができます。また、印刷面をコーティングする保護シートも、貼付治具で貼り付けられます」(岡本氏)。
「ぴたっとカード」は、社員証のほか、塾・学校などの生徒証や店舗スタッフの名札、病院やクリニックの診察券や会員証などにも活用されている。さらに、オフィスセキュリティ事業を展開している企業にとっても、新たな付加価値として利用できる可能性を秘めたソリューションといえるだろう。販売開始後、約1年半で2000以上の企業に導入された事もあり、市場ニーズの高さはお墨付きである。ニッケンハードウエアでは、販売パートナーを募集中。事務機販売業者、SIer、ICカード関連事業者などと力をあわせてさらなるシェアを確保していく構えだ。
ニッケンハードウェア=http://www.nikken-hw.jp/