Special Issue
【特別レポート】盤石な開発/生産/販売/サポート体制を構築するLANケーブル事業
2008/11/26 19:55
週刊BCN 2008年11月24日vol.1261掲載
サンワサプライ プロフェッショナルサポートセンター「ネットヘルプ」に問い合わせ急増!
ギガビット時代のネットワークレベル向上へ 機材選定、施工支援によりトータルコストを低減
プロフェッショナルの悩み 技術進歩とのギャップサンワサプライは、ネットワークにかかわる課題を解決するサポートセンター「ネットヘルプ」を設置している。同センターは、テスターなどの機材の選定から、ネットワーク構築、施工の相談にまで踏み込んだ「プロフェッショナルサポート」を実施しており、購入前から購入後までトータルにサポートしているのが大きな特長だ。
ベガシステムズの若尾社長は、「6月の開設以降、販売店や施工業者、設備業者からの問い合わせが予想以上に急増しました。その内容は、高度な技術から初歩的な質問まで実に様々です」と、ネットヘルプの反響に自信を深める。
ひとつのサポートにかかる内容は、案件毎に詳細に記載され保存されている。案件によっては、紙面をすべて埋め尽くすほど細部にわたり、課題から解決策までが克明に書き込まれる。
そうした問い合わせの内容の中に、いままで見えてこなかったネットワークの課題があぶりだされてきたと若尾氏は指摘する。
例えば、ケーブルの物理的な構造は、本来ならば機材選定や施工を行う販売店や施工業者にとって基本的な情報だが、「そこに重要性を感じていないため、いざトラブルがあったときに対応ができていない」(若尾社長)という。
特に最近は、ネットワーク工事の施工を電気工事業者が代行して行うケースが増えており、部材と施工が別々の業者によって行われるため、現場のトラブルが後を絶たない。
「現場でお客様から指摘を受け、従来のやり方に不安を抱き、問い合わせしてくるケースが多い。ただ、もっと深刻なのは、取り扱ったことのない機材にもかかわらず、これまでの経験でやりすごしてしまうケースです」と若尾氏は現状に警鐘を鳴らす。
実際、必要な付属品を使用せずに性能が出ないという問い合わせもあったほどだ。これに対し、「ネットワーク関連の一個一個の部品は、極限までコストを抑えるために、工夫を凝らしています。そこに不要なものはありません。必ず存在価値があります。残念ながら、工事業者、施工業者は、そこが欠落しているようです」と異議を唱える。
サンワサプライでは、LANケーブルの性能を引き出すために、パッチケーブルの両端に取り付けるコネクタを改良、開発し、性能を最大限に引き出している。他社とは形状が異なるが、加工、施工は決して難しいわけではない。
しかし、過去に実績を積んだ販売店や施工業者であっても、昨今の技術進歩が速い中、加工、施工レベルを一定に保つことは極めて難しい。専門会社でなければなおさら対応は遅れがちだ。
「新しい技術に対応するための部品の必要性、施工方法、対処方法などを、きちんと説明するのがネットヘルプの存在意義です」と若尾氏。
新規あるいは既存のネットワークが、トラブルに見舞われる危険の芽を摘む、その最適解を導き出すのがネットヘルプの役目なのだ。
会話を通じて課題を解決 納得の答えで基礎力向上を支援
ネットヘルプは、販売店や施工業者や企業の駆け込み寺として、適切なアドバイスが求められるが、それは決して押し付けであってはならない。
「問い合わせをしてくる人は、プロフェッショナルです。従来の部材や機材の選定、施工がなぜ“是”ではないのか、相手が納得するよう説明することが肝心です。サンワサプライが想定した正しい使用方法、用途を理解してもらうためには、ホームページによる一方通行の情報発信ではダメなのです。会話を通じて、その中から課題、問題点を引き出し、適切なアドバイスを提供する。配線ひとつとっても、なぜその方法が適切か、状況によって許容できる回避方法はなにかなど、問い合わせ頂いた人のネットワーク技術力、基礎力の向上をアシストしてあげることがネットヘルプの使命です」(若尾氏)。
サンワサプライでは、同社ホームページ内に「LANPRO」(http://www.sanwa.co.jp/lan/)を開設し、ネットワークの基礎知識、加工、施工のポイントを紹介している。そこで得た知識、感想を踏まえ、電話によるサポートを行うことで、より的確なアドバイスができるのだ。
昨今、サポートなどの情報提供をホームページで完結させる企業が少なくないが、そこに会話を加えることが、相手に納得する答えにたどり着く理想の形を生み出している。
ギガビット時代が転機 新たな課題の解決を期待
ネットヘルプへの問い合わせが増加した背景には、ギガビット時代の到来が強く影響している。
若尾氏は「新しい技術、ネットワーク製品が開発されているのは、ギガビットへの対応が急速に進んでいるからにほかなりません。ギガビットは約10年前からある技術ですが、本格的に末端まで導入されたのはここ数年のこと。ハードウェア環境も整備され、それに伴って、課題が浮上しつつあるのです」と分析する。
ネットワークの歴史を振り返ってみても、10BASEから100BASEまでの移行と、100BASEからギガビットへの転換とでは費やした歳月が大きく異なる。特に製造コストは比較にならないほど高かった。
現在は、ネットワークベンダーの努力もあり、コストダウンが図られ、企業の本格的なギガビット対応が進んでいる。しかし、フルギガビット対応できているのはほんの一部に過ぎず、これからというのが現状だ。
すでにギガビットの配線をしている企業でも、ネットワーク速度はギガ以下というケースが少なくない。そうした中、急に大容量、高速のネットワークが稼動すれば、何かトラブルが起こるケースも十分にありえる。今後はそうした問題が表面化してくる可能性は否定できない。
そのひとつの例が「ジャンボフレーム」への対応だ。
高速化したネットワークで、フレームを小分けにして送る従来の方法では、送信間隔や処理時間が増え、効率が悪くなってしまう。
そこで、より多くのデータを一度に送れるようにフレームを拡張したのが「ジャンボフレーム」だ。高速化が図れる一方、対応機器、対応環境が整っていないと使えないなど課題も残されている。
今後、LANカード、パソコンなどのハード環境、ネットワーク環境が、フルギガビット対応に向けて加速するのは間違いないが、その際、今まででは起こりえないトラブルも想定される。そうした業界全体の先を見据えたサポートも、サンワサプライの「ネットヘルプ」では視界に捉えている。
ネットヘルプの声を現場に還元 パッケージに配線規格を印刷
ギガビット対応の問い合わせでは、配線に関することで戸惑う施工業者の声が目立ったという。
そうしたネットヘルプの声を現場に還元するため、サンワサプライでは今後、パッケージに関連情報を印刷する予定だ。
「現場ではパソコンを起動してホームページを見ている暇はありません。ホームページを見なくても、対応できるよう配線や規格、ジャンボフレーム対応など、必要な情報を印刷するアイデアはネットヘルプのひとつの成果といえるでしょう。ギガビットと100BASEではどこが違うのか。ネットヘルプが一番力点を起きたい部分はここにあります」(若尾氏)。
アドバイスをおくるだけでなく、必要な情報をフィードバックする情報源として、「ネットヘルプ」にかかる期待は大きい。
安全、安心、低コストを徹底 トータルコストを削減へ
さらに、今後のギガ対応として見逃せないのが施工のコストダウンである。「ネットヘルプに聞くと、工事費用、トータルの施工コストが削減できるといわれるようにしたい」と若尾社長は意気込みを語る。
現状、ネットワークは、専門業者ではなく電気工事業者が請け負うことも少なくない。
しかし、ネットヘルプでは、企業がネットワークを自ら施工できるよう、50台規模までの小規模なネットワークであれば、無手勝流ではなくプロの指導のもと、ネットワーク構築ができるように指導していくという。
「コストダウンに向けて、自社で構築して費用を削減する。あるいは基幹部分を施工業者に任せるといった部分的な構築で、コストを削減するなど、それぞれのニーズに応じた適切なアドバイスを提供していきたいと思います。一般的に、安全で、安価な、しかも高度な構築方法をプロに聞くと高価になると思われがちですが、そうした概念を打破していきます」と若尾氏。
それに伴って、ネットワーク関連製品も徹底的なコストダウンを図っていく方針だ。
サンワサプライでは、自社製品、他社製品を問わず、快適なネットワークの構築に向けて、包括的にサポートを提供する姿勢を今後も貫いていく。
若尾氏は、「サンワサプライも、ネットヘルプも、より簡単に、高品質なものを、誰でも加工、施工できるようにするのがポリシーです。今後もさらに磨きをかけていきたいと思います」と今後の抱負を語る。
ギガビット時代の到来でますます重要不可欠になるネットワークのサポート。サンワサプライのネットヘルプは、販売店や施工業者、設備業者、そして企業にとって、なくてはならない存在になるだろう。
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