Special Issue
<プリンティングソリューション特集>中堅・中小企業への提案が伸長のカギ(下)
2008/11/24 19:56
週刊BCN 2008年11月24日vol.1261掲載
ブラザー
形状、価格で新たな市場を創造する“ジャスティオ”
SOHO/SMB市場で人気高まるA3インクジェット複合機
ブラザーらしさを実現 小型、低価格のA3対応機ブラザーは2008年9月、ビジネス向けおよびホーム向け複合機の新製品を10機種発表した。そのなかで、SOHO/SMB市場で高い人気を博しているのが、最大A3サイズまでのプリントとスキャンができる世界最小クラス*のA3カラーインクジェット複合機「MFC-6490CN」だ。
取締役事業部長の三島勉氏は、「A3対応機の需要が高い日本市場において、ブラザーらしさを追求しました。そのため、SOHO/SMBに向け、狭い空間でも利用できる、マルチファンクションでコストを抑えた製品の開発が不可欠でした」と開発の背景を語る。
発売直後から「MFC-6490CN」はSOHO/SMBを中心に、予想を上回る反響が出ている。好調の要因を、三島氏は次のように分析する。
「やはり、A3対応なのに“小型”ということと、既存製品と比較して“導入コスト”が圧倒的にお得であるという2点が評価されたのではないでしょうか。“MFC-6490C”は、SOHO/SMB に最適なA3カラー複合機だと言えると思います。ビジネスでは、常時必要ではないものの、たまにA3が必要になるケースがあります。そうした便利さ、手軽さも、大きさ、価格が揃ったことがユーザーに支持された要因だと思います。また、ご購入いただいたお客様からは“単体機と比較しても十分に使える”とお褒めの言葉を頂戴しております。特にスキャナに関しては、“A3シートフィードスキャナとしての価値だけでも十分にある”と注目度が高いようです。あと、特別な電源を用意しなくてもいい消費電力も、魅力の一つになっていますね」。
ブラザーでは、プリンティングソリューションにより、新たな市場の創造を目指している。今まで、A3カラー複合機の導入を控えていたSOHO/SMBのA3複合機の積極的な導入は、その第一歩となる。
“ジャスティオ”ブランド浸透へ 外食、小売店以外の市場も視野に
昨今、ビジネスインクジェットは、印字品質や印字速度、ランニングコストなど、レーザプリンタと遜色ないレベルに近づきつつある。そのなかでブラザーらしさを追求していくためには、ブランド戦略や販売戦略がより重要になってくる。「ジャスティオブランドが社内や販売店に浸透してきたのが、この1年の大きな成果です。狭い空間での印刷=ジャスティオ、これから起業しようという方にも同様に、ブランドイメージを浸透させていくことが大切です」(三島氏)。
現在、外食産業や小売店などに向けて、情報の発信をしているが、今後もこの業界に対して製品ブランドを定着させていくほか、さらなる市場の拡大にも力を注いでいく。その1つが、09年3月に開催される流通情報システム総合展「リテールテックJAPAN 2009」への出展だ。ブラザーは、9月1日付けでペンタックスからモバイルプリンタ事業の譲渡を受け、ラインアップをさらに強化したモバイルプリンタの展示も、同展で行う予定。これにより、店舗や販売店、小規模事業所などによるプリンティングソリューションは、A3のPOPまで印刷できる複合機から、デパートのテナントやワゴン販売などの本当に狭小なスペースでの印刷ニーズまで、広範囲の顧客をカバーできるようになる。
そのアドバンテージを生かすために、「当社は、外食、小売業界では、認知度が上がってきていると感じるが、その他の業界業種では販売パートナー様に頼る部分が大きい。ダイレクトチャネルがあるわけではないので、パートナーとともに成長するのが基本戦略です。いろいろな意見をお互いに出し合いながら、一緒に市場を盛り上げていきましょう」と、三島氏は販売店との協調関係をアピールする。新たな市場の創造に向けて、ブラザーの今後のプリンティングソリューションから目が離せない。
*2008年11月時点、ブラザー調べ
ブラザー=http://www.brother.co.jp/
【Column】地球環境に配慮したプリンタ・複合機の活用を
身近な機器から環境対策地球環境問題が社会的な課題となって久しい。ビジネスの世界でも、「グリーンIT」や「オフィスのエコ対策」などをキーワードにして、地球環境に配慮した取り組みが推進されている。しかし、環境対策が急務と考えながらも「何から手を付けていいのか分からない」と考える企業も多いのではないだろうか。実は、環境対策はオフィスで使用するプリンタ・複合機など、身近な機器から行うことができる。また、地球環境に配慮した取り組みによって、コスト削減にもつながり、企業にとってメリットも大きいのだ。
コスト削減やセキュリティにも貢献
業務を進めるうえで、紙資料は必要不可欠と言える。しかし、用紙のコストや保管場所などに頭を抱えるケースも少なくない。そこで、有効なのが「両面・集約」印刷だ。これは、2枚分や4枚分の紙資料を1枚にまとめて出力する機能で、紙の使用を半分もしくは4分の1に削減することが可能だ。
> 「両面・集約」印刷機能に対応したアプリケーションや、標準機能として搭載されているプリンタ・複合機が提供されているので、活用してみてはいかがだろうか。
また、受信FAXを紙で出力せず、電子化して共有フォルダやメールに転送する方法もある。紙資料に比べて保管場所に困ることがなく、運用・管理が容易になる。電子化という点では、複合機によって紙資料を電子化し、効率的な運用を実現するソリューションも注目を集めている。資料の検索性が高まり、必要な情報をすぐに探し出すことが可能だ。このように、オフィスのペーパーレス化によって、地球環境への配慮を行うだけでなく、コスト削減、業務効率の向上にも貢献できる。
プリンタ・複合機の導入後、問題になるのがトナーや電気代、印刷用紙、保守費用などのランニングコストだ。特に、トナーにかかるコストは大きく、使い捨てによって資源を無駄にしてしまうケースもある。そこで、環境にやさしい「リサイクルトナー」を活用することをおすすめする。「リサイクルトナー」はコストメリットが大きく、新品のトナーに比べ、低価格で購入することができる。年間のランニングコストを考えると、大幅なコスト削減につながるのは間違いないだろう。
プリンタのトナー消費量をコントロールするアプリケーションも登場している。用途に応じた削減率の設定が可能で、例えば、社外文書や写真・グラフィックの出力が多い場合は25%セービング、一時的な出力が多い場合は50%セービングなど、文書の種類によって使い分けられる。印刷コストを削減すると同時に、廃棄トナーカートリッジの量を抑制し、コスト削減と環境保護の両方が実現できる。
さらに「消費電力の削減」も重要だ。プリンタ、ファクス、コピーやスキャナなど、オフィスの中にはさまざまな機器が設置されている。これらを複合機として1台に集約するだけでも、消費電力やコストの大幅な削減につながる。複合機の中には、低電力で待機しながらすぐに利用できる「省エネモード」を搭載した機種もある。これを活用することで、CO2の排出量や電気代を削減することができる。
そのほか、ICカード認証を利用して、複合機の利用を制限したり、「誰が何枚コピーしたのか」「どのファイルをいつ出力したか」といった情報をログとして蓄積するソリューションがある。複合機の利用状況を監視して、無駄な印刷を抑止するという効果に加え、置き忘れや持ち去り、不正利用などが防止できる。環境対策やコスト削減、そして情報セキュリティ対策まで、幅広い効果が期待できるソリューションと言えるだろう。
このように、地球環境問題への対策は、プリンタ・複合機という身近な機器からも行うことができる。各々の取り組みは小規模であっても、全社的に展開することによって、大きな効果を生むことだろう。