Special Issue
<データセンター特集>データセンター事業 需要増で拡充相次ぐ セキュリティやSaaSが追い風
2008/09/24 19:56
週刊BCN 2008年09月22日vol.1252掲載
【コラム】
データセンターを活用し、ビジネスを拡張
運用負荷の軽減からデータセンターを活用ここ数年、サーバーの価格競争が激化している。サーバーの価格は下落の一途を辿り、数万円程度で購入できるモデルも登場している。価格競争が激化している背景として、サーバーのコモディティ化が進み、サーバー自体の差別化が難しくなったことが考えられる。付加価値を訴求しにくいことから、「価格」勝負となっているのだろう。たしかにコストパフォーマンスを重視するユーザーは多く、直販のみの販売モデルを確立し、市場で確固たる地位を確立したサーバーベンダーもある。現在、企業が扱う情報量は日々増加し、「情報爆発」などと評されているが、情報量の飛躍的な増加に加え、サーバーの価格下落が後押しする形になり、多くのサーバーが企業に導入されたことは確かだ。
その結果、あまりにも多くのサーバーが導入され、管理・運用できない状態に陥っている企業もある。IBMの「コントロールを取り戻せ(TAKE BACK CONTROL)」と題したキャッチコピーは、このような企業の課題を如実に表していると言えよう。
企業を取り巻く課題はあまりにも多い。「業務効率・生産性の向上」はもちろん「情報漏えい対策」や「事業継続」、「内部統制の構築」なども考慮しなければならない。企業の情報インフラには「運用・管理工数の削減」「セキュリティ」などが求められており、企業の情報インフラ構築が複雑化しつつある。
そこで注目されているのがデータセンターである。データセンターを活用することで、これらの課題を解決し、運用をアウトソーシングできるからだ。データセンターは、入退室管理やモニタリングなど高度なセキュリティ対策が施されており、専任スタッフによる管理体制を敷くことが可能だ。また、データセンターをディザスタリカバリーサイトとして活用すれば、リスクヘッジにもなる。また、業務のスリム化を実現できることも大きい。増え続けるサーバーやストレージへの投資や設置スペース、エンジニアの人件費などのコストを大幅に削減できるのである。
さらに、必要な時に必要なだけITリソースを利用できる「オンデマンドサービス」を提供するデータセンターも登場し始めている。これまでは、需要のピークに合わせて企業システムを構築しなければならず、無駄が生じていたが、「オンデマンドサービス」であれば必要なときに必要なだけITリソースを無駄なく活用できるようになる。
SaaSなどのビジネスをデータセンターが支援
データセンターのビジネスは、企業インフラの移管にとどまらない。SaaS化などの対応なども進めており、ソフトウェア企業が新しいビジネスチャンスとして利用するケースも増えているのだ。
SaaS・ASP型のサービスは、新たな商流として注目されている。エンドユーザーからみると、サーバーなどの設置・運用が不要で、必要なサービスだけを安価で利用できるというメリットがある。またソフトウェア企業にとっては、パッケージ販売や受託開発以外のビジネスを展開でき、新たなビジネスチャンスとなる。
アプリケーション開発に関するノウハウはあっても、ネットワークやSaaSというプラットフォームに至るまでのノウハウまで備えているソフトウェア企業は少ない。そのため、SaaSという市場にはなかなか参入できなかった。しかし、データセンターをうまく活用すれば、プラットフォームに関するノウハウがなくても新規ビジネスにチャレンジできる可能性が広がる。
最近では、SIとSaaSを組み合わせて利用できるプラットフォームも登場し始めている。これであれば、既存の机上システムとSaaSを組み合わせた情報システムを構築することができるようになる。
データセンターは、企業のビジネスをドライブさせる触媒となる可能性を秘めている。これからは、データセンターをいかにうまく活用するかが、企業の成長に直結するようになるのかもしれない。