Special Issue

【特別レポート】盤石な開発/生産/販売/サポート体制を構築するLANケーブル事業

2008/07/02 19:55

週刊BCN 2008年06月30日vol.1241掲載

 ネットワークが、社会や経済の基盤として不可欠な現在、サンワサプライは、LANケーブルのプロフェッショナルサポートを通じて、企業が抱えるネットワークの課題解決を目指す。サポートの指揮を執るベガシステムズの若尾和正社長に、従来のサポートとプロフェッショナルサポートの違いや狙い、役割などについて話を聞いた。

サンワサプライのLANケーブル/プロフェッショナルサポート「ネットヘルプ」
サポートはアフターからビフォアへ 機材選定、施工支援まで対応

製品ありきのサポートから一歩先行くプロのサポートへ

 不通、遅延、不安定など、ネットワークトラブルの約80%は、LANケーブルが原因と言われている。

サンワサプライでは、LANケーブルの品質、性能確保に向けて、生産拠点である中国工場の選定だけではなく、ケーブルの素材(銅線)に対する検査にまで及ぶ徹底した品質管理を実施。また、LANケーブルの性能を引き出すために、パッチケーブルの両端に取り付けるコネクタを独自に改良、開発するなど、技術力を駆使して性能を最大限に引き出している。

 さらに、購入したユーザーの課題、悩みを解決するサポートセンター「ネットヘルプ」を設置し、開発・生産・サポートまで一貫した体制で、企業、個人のネットワークにおける課題解決にもあたっている。

 サポートを手がけるベガシステムズの若尾和正社長は、「ネットワーク構築の相談にまで踏み込んだ『プロフェッショナルサポート』を実施している点が大きなポイント」と、他社との違いをアピールする。

 通常、メーカーのサポートは、販売した自社製品の使用方法や、故障・修理などに応えるだけで、それ以外はオンサイト保守や有償サポートとなるケースが一般的だ。

 しかし、プロフェッショナルサポートでは、小、中規模のネットワーク構築にかかる製品選定や、構築前のアドバイスまでの一連を無償でカバーする(一部特殊なケースは有償)。

 これまでサポートセンターとして、数多くのトラブルシューティングを担当してきた中には、サンワサプライ製品と他社製品とを組み合わせたネットワークの構築・相談などが舞い込むケースもあったという。つまり、この画期的な試みは、蓄積してきたノウハウが原点となっているのだ。

 現状、自社製品以外のネットワークケーブリングなどまで、包括的にサポートできるところは極めて少ないだけに、相談をしたユーザー企業は、こぞってサポート内容を高く評価する。

 実際、ある大手企業では、ネットワークを構築した際、当初の想定ほど性能が上がらず、不安定な状態にあった。その原因を究明するため、購入した他社製LANケーブルのメーカーに問い合わせたが、満足な回答が得られず、最終的にサンワサプライのネットヘルプに連絡を入れた。その相談を受け、ケーブルを送付してもらい、使い方にまで踏み込んで聞き取り調査をした結果、すでに検証を終えているケーブルやプラグには問題がなく、レイアウト、機器の配置など施工に問題があることが判明した。単なる製品サポートではなく、明快なソリューションが提供されたわけだ。

 若尾社長は、「従来のサポートは、製品の性能、使用方法、修理の判定など言ってみれば購入後のアフターサポートでした。しかし、そこから時間軸を遡っていくと、問題解決から商品選定、さらにその先のネットワーク構築の計画、相談へと移っていきます。つまり、『アフターからビフォアへ』、私たちが目指すサポートはそこにあります」と、一歩先行くプロフェッショナルサポートの方向性を語る。

 自社製品だけにとどまらず、ネットワーク構築の上流工程にかかるサポートの実施が、結果的にサンワサプライ製品の信頼性、購入に結びついていく。一見、手間と時間がかかるように見えるが、対話から問題解決の糸口を探し、解決方法を提供する。それこそ、サンワサプライのLANケーブル事業がプロであることの証明といえるだろう。


ニーズに合った商品の拡充 技術レベルの向上にも貢献

 プロフェッショナルサポートは、サンワサプライ製品以外の相談にも応じるが、そこにはメーカーというフィルタをかけずに、本当のユーザーの声を聞くという狙いも隠されている。

 市場が何を求め、何を商品化していくべきか、次の一手を打つうえで、重要な役割を担うが、若尾氏は、「ギガビット時代に突入し、ネットワークがより難しくなるのは間違いありません。これから3年をめどに、海外あるいは国内メーカーとの提携も含め、L2やL3スイッチ、光関連の製品拡充を目指します」と抱負を述べる。

 将来のニーズがどこにあるのかを探すため、台北国際コンピュータ見本市(computex taipei)にも毎年足を運び、最先端の情報収集、メーカーとの意見交換、開発支援など、積極的にも取り組んでいる。

 また、サンワサプライは、メタルケーブルで機器接続をした際に起こる混信「エイリアン・クロストーク」の課題を解決する「カテゴリ(Cat)7」のパッチケーブルを世界で初めて量産化に成功。ホームページや総合カタログでLANケーブルに関するQ&Aを掲載するなど、その技術力、商品力は、量販店のほか、SIerにも高く評価されている。

 「ネットワーク構築を提案していく中で、今後、販売店はもとより、全国のSIerのお手伝いをしていこうと考えています。施行のプロに対し、機器選定のノウハウを提供することで、日本のネットワーク構築レベルが上がればベスト」と、日本のネットワークレベルの向上にも一役買いたいと意気込みを語る。

 ネットワーク構築において、Hub、スイッチの配置、機器選定が重要な鍵を握るが、そこに行き着くまでに多くの悩みを抱えている企業、担当者は少なくない。

 「さまざまな情報を整理し、自らがゲートウェイとなって必要な情報を伝えていくわけですが、そこには、損得勘定を超えた想いが詰まっています。企業や販売店との対話を通じて、問題解決ができるネットワーク構築の基礎力が向上すれば、世界に類をみない層の厚さと幅の広さ、人口を有し、国際競争力を築けると思います。このノウハウが確立できれば、世界に向けて輸出も可能です。若いエンジニアが世界を舞台に翔ける、それを応援する先駆者になれればいいですね」。

 セオリーはあるが、ネットワーク構築の答えは画一的ではない。それぞれのニーズに適した答えを導き出すためには、2年あるいは3年をかけて、人材やサポート力を強化していく必要があるだろう。そのため、サンワサプライでは、ベガシステムズを中心として、その輪を広げていく計画だ。

 まずは、ホームページや営業などを通じて、若尾社長以下スタッフが、これまで培ったノウハウや経験という引き出しの中から、必要な情報を提供する。そして、ケーブリングや機器選定などができる人材(コア)が外部にも出てくることで、点がやがて線に、面にと広がり、プロフェッショナルサポートは普及していくとみている。

 また、一つ一つの案件に対して、回答する時間が長くなるため、対応時間を抑えつつ、内容の精度をどう高めていくか、そうした課題もこれからクリアしていく予定だ。

 「もちろん、ビジネスとしてプロフェッショナルサポートを展開していくので結果も重要です。ネットワーク構築にかかる相談を行うことで、すでに他社製を導入している企業も、『ここまでサポートしてくれるなら、次回はサンワサプライの製品で』となる可能性は高い。そうなれば大きな成果も期待できます。サポートは“守る”だけではなく、“攻め”にもつながっているのです」(若尾氏)。

環境にやさしい次代のネットワーク構築

 7月の洞爺湖サミットを間近に控え、環境問題が企業の大きな関心事になっている。昨今のケーブルは、使用期間が短く、時代に逆行しているともいえる。銅や石油高騰など、素材が入手しにくくなっていることからも、対策が求められるのは必至の情勢だ。

 若尾社長も、「省エネルギーであること、そして次の段階はケーブルをもっと長い間使えるようにすることが重要です。地球環境とは言わないまでも、消耗品交換という時代からもう少し考えてもいいのではないでしょうか。そのためにも、“保守”をビジネスにしていく必要があります。スクラップアンドビルドからの転換、ロングライフをメッセージに、日本もビジネススタイルを変えていくべきです」と、環境保全の一環としても、保守、サポートの充実が大切と説く。

 新たな切り口でネットワークのサポートを展開するサンワサプライ。企業にとっても、SIerにとっても心強い存在になるのは確実だ。

 
ビジネスブログを活用
コミュニケーションが円滑に
 ベガシステムズ・若尾社長のビジネスブログには、毎月、100人から200人規模のアクセスが殺到している。
 検索大手のGoogleで、「LAN-PRO」と入力すると、コマーシャルサイトを除き、最上位に位置することもあり、その日々の行動、ひいては情報に多くの人の目が集まっている。
 「ブログは、使い方によって、ビジネスに大きく貢献します。例えば、行動履歴では、営業先を携帯電話で撮影し、携帯電話からアップ。後から、編集でコメントを追加すれば、営業日報になります。管理者もそれを見ればいいので、管理が容易になります」と若尾社長。情報がアップされることで、今、どんなことをしているのかを取引先などにも伝えることができ、展示会や工場見学など、ビジネス情報に書き込みがあった場合、それに答えることでビジネスにつなげることも可能だ。
 また、ビジネス以外の情報なども織り交ぜ、いかに興味を持たせるか、情報更新の頻度、内容、書き方、さらには画像の構図、きれいさなど、工夫が必要なので、考える力、相手に伝える力を養うことにもつながる。
 若尾社長は、「一方通行ではないブログを通じて、コミュニケーション能力を高めることができます。ビジネスブログの『LAN-PRO』は、サンワサプライのサポートを担当するベガシステムズからのメッセージです」と、ブログ開設の狙いとその効果を語る。
 「LAN-PRO」のビジネスブログは、サポートにおいても、コミュニケーションの一環として大きな役割を担っている。
 
  • 1

外部リンク

サンワサプライ=http://www.sanwa.co.jp/