Special Issue

<BCNランキング トップベンダー特集> 付加価値製品がカギを握る

2007/11/01 19:56

週刊BCN 2007年10月29日vol.1209掲載

価格競争から抜け出しつつある市場も

 冬商戦も目前に控え、市場も活発な動きをみせ始めている。全国のパソコン専門店、家電販売店23社約2300店舗の販売時点情報管理(POS)データを日次で収集し、会員向けに配信するPOSデータベースサービス「BCNランキング」*からも、現在の市況をうかがい知ることができる。冬商戦を直前に控えた現在の市場を見ていこう。

■シェアは僅差 混戦状態のPC市場

 「BCNランキング」(2007年1月-9月)のデータによると、「ノートPC」部門の販売数量シェアを見ると、(1)東芝=22.1%、(2)富士通=21.2%、(3)NEC=19.9%、(4)ソニー=16.4%となっている。非常に混沌した状態といっていいだろう。各社は、製品ラインアップを強化し、小型・軽量など、モバイル用途に特化したモデルの投入や地デジ、ワンセグといった新しいテクノロジーを次々と投入しており、他社との差別化を図っている。ユーザーの選択肢も増え、より自分の使い方にあった製品が選びやすくなってきた。市場としても、緩やかながら右肩上がりの推移となっている。「デスクトップPC」部門は、(1)富士通=24.6%、(2)NEC=22.5%、(3)ソニー=11.8%となっている。富士通、NECとが猛烈なトップ争いを行っている状態だ。前年同期と比べると、販売数量では8割程度に落ち込んでいるものの「平均単価」が上昇している。大画面一体型PCやリビングPCといった訴求、パフォーマンス重視のモデルや省スペースモデルなど、ラインアップを揃え、高付加価値モデルが増加していることが「平均単価」の上昇に結びついているのだろう。「ノートPC」と「デスクトップPC」は、冬商戦次第ではトップベンダーがどこになるか、予断を許さない状況となっている。

■携帯オーディオ市場で国内メーカーが奮闘

 「BCNランキング」によると「携帯オーディオ」部門が非常にユニークな推移を見せている。「携帯オーディオ」市場は、昨年までアップルの一人勝ちといっても過言ではなかった。しかし、今年は国内メーカーが奮闘し、シェアを伸ばしている。販売数量シェアを見ると、(1)アップル=48.6%、(2)ソニー24.0%、(3)松下電器産業=5.1%、(4)東芝=4.8%となっている。前年同期の販売数量と比べると、ソニーが150%程度、東芝が200%超という結果となっている。アップルがトップシェアであることに変わりはないが、国内メーカーがユーザーの支持を獲得し始めているというのは間違いなさそうだ。また、携帯オーディオ市場が好調なことを受け、関連するアクセサリ市場も立ち上がりつつある。携帯オーディオのクレードルやケース/ジャケットなどは、販売店店頭でも棚を取り、多くのユーザーが商品を購入している。BCNでは、「携帯オーディオアクセサリ」部門を新しく創設した。「携帯オーディオアクセサリ」部門は、「クレードル、ケース/ジャケット、トランスミッタ、バッテリー、リモコン、電源アダプタ」のPOSデータを収集し、まとめている部門だ。なお、販売数量シェアは、(1)エレコム=22.0%、(2)ソニー=9.1%、(3)ハンファ・ジャパン=5.1%、(4)プロテック=4.6%、(5)アップル=4.3%となっている。携帯オーディオの本体ではトップシェアを獲得しているアップルが5位となっており、サードパーティが強い市場であることがうかがえる。新設された部門の今後の市場動向が気になるところだ。

■高付加価値商品で価格競争を抜け出せるか

 また「外付けHDD」部門も特徴的だ。販売数量シェアでは、(1)アイ・オー・データ機器=43.1%、(2)バッファロー=42.1%、(3)ロジテック=10.7%という市場だ。BCN AWARD 2007のトップシェアはバッファローだが、9月末までのデータでは、微差でアイ・オー・データ機器がトップシェアを獲得している。トップ争いもさることながら、前年同期と比べると販売数量、販売金額がともに昨年を上回り2ケタ成長を遂げている。現在トップシェアのアイ・オー・データ機器を見ると、販売数量でおよそ1.5倍の成長を遂げており、勢いづいている。カートリッジ交換タイプの外付けハードディスクやeSATAインターフェースを採用し、高いパフォーマンスを有するモデルの提供に加え、ミラーリングなどの安心機能など、新しい訴求が功を奏した結果だ。また、製品のパフォーマンスを高めたバッファローの「TurboUSB」やアイ・オー・データ機器の「マッハUSB」といった付加価値製品も話題となっていることから、冬商戦も盛り上がりそうだ。

 現在、市場では価格競争が進んでおり多くの部門で、平均単価の下落が起きている。しかし「安かろう・悪かろう」ではユーザーが離れてしまい、閑散とした市場となりかねない。こうしたことから、価格競争が進んでいる市場で高付加価値製品が注目されるようになってきた。「PCケース」部門を見ると、販売数量・販売金額はともに前年を上回り好調な市場となっている。この市場を牽引しているのが、高付加価値製品を提供しているAntecである。

 PCケースの販売数量シェアは、(1)Antec=17.8%、(2)サイズ=11.9%、(3)V-TECH=6.9%、(4)スカイテック=6.6%、(5)AOpen=6.0%となっている。一方、販売金額シェアでは、Antecは26.1%を記録し、平均単価は市場全体の1.5倍ほどの金額となっている。高価だが、販売は好調という市場傾向が見えてくる。

 「PCケース」部門は、ある意味特殊な市場なのかもしれないが、この結果から、ユーザーが価格以外の付加価値を求め始めている現状がうかがえる。冬商戦で「PCケース」部門のように高付加価値製品が伸長する市場が出てくる可能性は高い。今後、どういった付加価値が注目されていくか、目が離せない。

*集計対象の販売店は、アマゾン ジャパン(Amazon.co.jp)、ユニットコム(パソコン工房、Faith、TWO TOP)、エイデン(エイデン)、大塚商会(P-tano)、ケーズホールディングス(ケーズデンキ)、グッドウィル(グッドウィル)、サードウェーブ(ドスパラ)、さくらや(さくらや)、上新電機(上新電機)、ストリーム(ECカレント)、セブンドリーム・ドットコム(セブンドリーム・ドットコム)、ソフマップ(ソフマップ)、ZOA(ZOA)、九十九電機(ツクモ)、T・ZONEストラテジィ(T・ZONE)、デオデオ(デオデオ)、サンキュー(100満ボルト)、ビックカメラ(ビックカメラ)、ピーシーデポコーポレーション(PC DEPOT)、ベスト電器(ベスト電器)、ミドリ電化(ミドリ電化)、ムラウチ(ムラウチ電気、ムラウチドットコム)、ラオックス(ラオックス)=50音順。集計対象となるアイテムは、パソコン本体から周辺機器、ソフトウェアのほか、薄型テレビ、DVD/HDDデッキといったデジタル家電など100品目以上。


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