Special Issue
<ブレードサーバ特集> コスト削減や提案力の強化に注力 壮烈なシェア争いが続く
2007/09/17 19:56
週刊BCN 2007年09月17日vol.1203掲載
中堅・中小企業の市場開拓がカギ
社団法人 電子情報技術産業協会・サーバ事業委員会が2007年5月24日に発表した「わが国におけるサーバ・ワークステーションの平成18年度(平成18年4月~19年3月)出荷実績」によると、06年の国内サーバ・ワークステーション市場全体が前年並み、または下降気味という傾向であるにもかかわらず、ブレードサーバについては総出荷台数3万7427台、前年同期比138%という2ケタ伸長を遂げていることがわかった。活気を帯びているブレードサーバ市場の現状を追った。■IT統制やコスト削減のためのサーバ統合が導入のきっかけに
ブレードサーバは、集積度が高く、限られた設置面積に多くのサーバを搭載できるという特徴がある。現在、サーバを物理的に統合し、管理・運用コストを低減したいというニーズが広がっているが、この課題をクリアするのに最適なアイテムであることから、特にブレードサーバが注目されている。また、IT統制をすすめる上で企業システムを一元管理して適切に管理しなければならないという理由でも、サーバ統合が進んでいる。このニーズに対しても、ブレードサーバはマッチする。さらに、ブレードサーバを仮想化テクノロジーなどと組み合わせると、サーバが使う電力を低減させるとともに、1台当たりのサーバの利用率を上げることにもつながり、TCOの大幅な削減が期待できる。こうしたことから、大企業を中心に中堅企業のブレードサーバ導入が進んでいる。以前の企業システムは、メインフレームを中核としたシステムをシングルベンダーで構築していた。しかしその後、オープン化の流れによってマルチベンダー化が進み、低価格サーバが登場し、さまざまなサーバが分散設置されるようになった。このように、日を追うごとに複雑化、分散化し続ける企業システムは、セキュリティ面だけでなく管理工数も増加し、企業の課題として検討されるようになっているのである。この課題に対しても、ブレードサーバは適切に応えることができる。サーバの一元管理を行うだけでなく、各種マネジメントツールを活用することで、大幅な管理工数の削減に寄与するからである。
このように、あらゆる課題に対して有効な解となるブレードサーバだが、中小企業にはまだ十分普及しているとはいえない。その要因は、主に価格にある。ブレードサーバの価格は、エンクロージャーやサーバ本体の価格にストレージなどの価格が加わり、システム全体の価格をつり上げてしまっているのが現状だ。そのため、数台規模のサーバの入れ替えと比べると、多額の投資が必要になる。さらに、管理・運用コストの低減を実現しようとしても、ある程度の台数を導入しなければそのメリットが享受されず、結果として既存のラックマウント型サーバを導入したほうがコストメリットが出てしまう場合も少なくない。
■SMB市場の陣取り合戦により低価格化が進む
しかし、サーバベンダーにとってミッドレンジ市場は魅力的な市場であるのは間違いない。サーバメーカー各社は、エンクロージャーの売価引き下げなどの価格競争を行いながらも「統合」をテーマに市場のすそ野を広げつつある。各社から戦略製品も次々投入され、市場自体も活性化し、シェア争いも激化しているが、この流れは当分続くことが予想される。IDC Japanによれば、06年の国内ブレードサーバシェアは日本IBM(35%)がトップ、次いで日立(22%)、NEC(18%)、日本HP(16%)、富士通(6%)、デル(3%)の順となっている。国内ブレードサーバ市場でシェアトップの日本IBMは、仮想化をキーワードにブレードサーバとISVの製品・サービスの連携で提案力を強化している。また、販売代理店とのパートナーシップを強化することで、高いシェアを保つことにも成功している。日立製作所は、中堅・中小企業をターゲットに新規顧客の開拓を行っている。戦略製品も投入され、今後の展開によっては、さらにシェアを拡大しそうな勢いだ。日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、中堅・中小企業での拡販を図るための新製品を9月に投入。コストメリットを払拭する戦略製品として、シェア獲得に本腰を入れる。NECは、インテルの新しいマルチプロセッサー(MP)・サーバ向けクアッドコア インテル Xeon プロセッサー 7300 番台を搭載したクアッドコア4-wayサーバ・ブレードを市場に投入し、注目を集めている。ブレード本来の高い柔軟性と、クアッドコア・プロセッサーの優れたエネルギー効率、パフォーマンスなどが融合することで、拡張性が高く、高信頼性な企業システムを構築できるまでになった。これにより、MPサーバが得意としてきた大規模環境の基幹系システムやデータウェアハウスシステムはもちろん、一般的なウェブ、アプリケーション、データベースという3層システムをすべてブレードベースの筐体に収めることが可能となる。さらにNECは100V電源に対応した製品を提供するといった取り組みも行っている。
こうした各社の取り組みは、サーバやシステムの統合化、企業内データセンターの構築支援など企業の新たなニーズに積極的に応えることができるため、市場からの期待も高まっている。