Special Issue
<ストレージ特集> ストレージ選びのポイントは、管理・運用性
2007/09/03 19:56
週刊BCN 2007年09月03日vol.1201掲載
データ保護、内部統制、事業継続などがキーワードに
これまでストレージは、企業活動の結果を保存する目的で使われてきたが、最近ではデータ保全や事業継続の必要性も顕著となり、ストレージに対する新しいニーズが高まりつつある。さらに、内部統制や情報セキュリティの強化も必要とされるようになり、管理・運用の効率化が求められるようになった。こうした背景から、今、ストレージ関連市場が活性化している。ストレージ市場の現状を追った。■多岐にわたる要求 事業継続への関心も高い
これまで中堅・中小規模企業や大企業の拠点、部門などの伝票発行や販売管理、財務管理などは、メインフレームやオフコン(オフィスコンピュータ)が活用されてきた。オフコンは、専用設計でソフトウェア/ハードウェアがセットとして納入され、納入業者が運用・管理を一貫してサポートしていた。しかし現在、これらメインフレームやオフコンが担ってきた役割は、PCやサーバーといったオープンシステムがとって代わっている。最近では、企業が扱うデータ量が飛躍的に増大しているが、これはERPやCRMといった基幹システムが導入された結果だろう。蓄積されたデータは、新規ビジネス機会を探るビジネスインテリジェンスやデータマイニングといったソリューションなどでも活用されており、企業戦略を立てる上で、不可欠なデータとなる。
また、データベースのような構造化データだけではなく、電子メールや映像、画像、オーディオといった大容量の「非構造化データ」や「デジタルコンテンツ」も増加傾向にある。それらの増加にともなって、企業システムは増強を繰り返し、巨大なシステムを構築している。実際、コンシューマ向けのストレージ製品でも、テラバイトを扱うことは決して珍しくない。中小企業においても、数テラバイトのデータを扱うことが増えているようだ。
しかし、肥大化したシステムを管理・運用するようになると、煩雑な工数がかかり、コスト負担が増えてしまう。
さまざまなニーズに応えるために、管理・運用工数とコスト削減が重要なテーマとなっている。そのようなニーズに的確に応える製品・ソリューションも数多く登場し始めており、ストレージ市場はこれまでにない活気を帯びている。
その要因は、基幹システムや非構造化データの増加だけではない。企業の経営課題として情報漏えい対策や内部統制の強化、コンプライアンスの順守、リスク管理、事業継続などが注目され、ストレージに対する要求が増加していることも、原因のひとつとして考えられるだろう。
2005年3月には経済産業省から「事業継続計画策定ガイドライン」が、同年8月には内閣府中央防災会議より「事業継続ガイドライン第一版 ―わが国企業の減災と災害対応の向上のために―」が相次いで発表され、事業継続管理(BCM:business continuity management)・事業継続計画(BCP:business continuity plan)への関心が高まった。社団法人日本情報システム・ユーザー協会の調査「ユーザ企業IT動向調査報告書2005」によると、(1)BCPを策定・運用し、定期的に見直し更新=4%、(2)BCPを策定・運用している=6%、(3)BCPを策定中=12%、(4)BCPの策定を検討中=31%、(5)BCPを策定する予定はない=47%となっている。この結果からも、BCPに対する関心の高さがうかがえる。
BCPに対する関心は企業規模が大きくなるほど増える傾向があり、社員数1000人以上の企業の調査結果は、(1)BCPを策定・運用し、定期的に見直し更新=9%、(2)BCPを策定・運用している=11%、(3)BCPを策定中=19%、(4)BCPの策定を検討中=35%、(5)BCPを策定する予定はない=26%となっている。「策定して運用」から「策定中」までが全体の22%であるのに対して、社員数1000名以上の企業では39%となっており、約2倍という結果がでている。今後、中小企業でも事業継続計画に対するニーズは進展していくと予想されるので、市場全体の伸びも期待できる。
■コンプライアンス体制を確率すべくデータの信頼性の確保を
さらに、「個人情報保護法」や「金融商品取引法」といった各種法令に対するコンプライアンス体制を確立するため、情報に対するセキュリティの強化や信頼性の確保が重視されている。つまり、日々の事業活動で生成され、蓄積されているデータについても、法的側面からも保護しなければならなくなった。そのため、データを長期間適切に保存する「アーカイブ」や「災害対策」ソリューションに注目が集まっているのである。特に「事業継続」を実現するためには、企業が蓄積しているデータやシステムのバックアップやレプリケーションは必須となる。
企業システムのレプリケーションは、大規模なシステムや回線が必要とされていた。そうでなければ、完全なレプリケーションを作成することができないからだ。このレプリケーション環境を構築するためには膨大な資金が必要となるため、一般の企業はまだ導入にはいたらず、一部の企業が利用するまでにとどまっていた。
■データ・デデュープなど新しい技術への期待感
しかし現在では、中堅・中小企業でもレプリケーションを実現し、事業継続を行いたいというニーズが顕著となっている。こうしたなか、『データ・デデュープ』といった新しいテクノロジーも開発され、それらを使った製品も提供され始めている。『データ・デデュープ』は、変更点だけを取り出しバックアップすることで、従来の10から50倍ものデータを保存できる。また、「デデュープ」することでWAN回線を効率的に活用できることになるため、既存のインフラでもレプリケーションを実現できるようになる。このように、現在ではストレージに対するニーズが顕著となり、それに適切に応えるソリューションが数多く登場している。この流れに乗り、ストレージ市場がさらに活性化していくことは間違いないだろう。今後のストレージ市場の展開に注目したい。