Special Issue
<SaaS特集> ソフトバンクBB SaaS事業推進部 流通、通信に続く事業展開
2007/08/31 19:56
週刊BCN 2007年08月27日vol.1200掲載
SaaS事業の強化に拍車 強みのソフトウェア販売を通信事業とのシナジーを活かし更に拡大をめざす
ソフトバンクBBは、SaaS(Software as a Service)事業の強化に拍車をかける。同社は流通事業から通信事業に進出、二本柱として事業運営を行ってきたが、今年に入って三本目の新しい事業として確立しようとしているのがサービス事業である。その中核となるのがSaaS事業で、現在はセールスフォース・ドットコム(Salesforce.com)と提携、オンデマンドCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)である「Salesforce」の販売、中小企業向け業務支援サービスとして「テキパキ(TEKI-PAKI)」の提供などを行っている。担当するのはコマース&サービス統括の面々である。現状と将来構想を探った。新たな革命が始まった
ソフトは買うのではなく、サービスとして利用する時代へ
現在、IT業界は新たな革命の真最中にあるというのが同社の認識だ。
「過去を振り返ってみると、専用線からインターネットへというネットワーク環境の革命、MS-DOSからウィンドウズへというクライアント環境の革命、基幹系ホストシステムからオープン系システムへの移行というサーバー環境の革命がありました。そして今起きているのはシステム環境の革命です。インハウス型システム、言い換えれば自社運用型システムから、必要とするサービスを使いたい時だけ利用するオンデマンドアプリケーション型のサービスへの移行が始まっています。いわゆるSaaS革命です」と、Salesforce事業の立ち上げを担当した、コマース&サービス統括SaaS事業推進部の中山五輪男シニアコンサルティングマネージャーは語る。
一方、「SaaSあるいはASPサービスに対する認識は高まりつつありますが、総体的にいえば、まだパソコン登場初期と同じ段階にあります。パソコンの登場初期にはオモチャと見られ、オフコンに取って代わるなどといったら笑われたものですが、SaaSによって、ソフトは買うものではなく、サービスとして利用するものだといっても、大方のユーザーはまだ疑心暗鬼で眺めているところでしょう。現在のサービス内容ではそう見られて仕方ないところもありますが、世の中が大変なスピードで進化していき、気が付いたらオフコンがなくなっていたのと同じ現象が起きると確信しています」と、TEKI-PAKIを担当するコマース&サービス統括MDサービス統括部の原山健一統括部長は表現する。
両氏の表現から分かるとおり、SaaSというのは、アプリケーションソフトを買うのではなく、提供者側のサーバーにあるものを、オンデマンド、つまり必要な時だけインターネットを通じてダウンロードして利用するサービスである。
ユーザーは従量制で利用でき、初期投資が不要、メンテナンスの手間が軽減、常に最新のものが利用可能などの特徴がある。
ソフトバンクBBは、コンシューマ分野では「Yahoo! BB」の会員向けにセキュリティサービス「BBセキュリティ」、ソフトウェアサービス「BB SOFT」を提供、BBセキュリティの利用者はすでに70万人を突破するなど、大成功を収めてきた。この成功を背景に、法人向けに提供を始めたのが「Salesforce」と「TEKI-PAKI」なのである。
世界最先端の「Salesforce」
SaaSのワンストップ ソリューションカンパニーへ
こうした法人向けSaaSの世界で、最も先進的なサービスを提供しているのがセールスフォース社である。「アメリカでは第二のマイクロソフトと評価されだしているが、本当にめざましい勢いで伸びています」(中山マネージャー)という。
セールスフォース社は、元オラクルの幹部だったMarcBenioff(マーク・ベニオフ)氏が1999年に創業、オンデマンド・ビジネス・サービスのリーディング・カンパニーとして発展している。現在の主力製品はオンデマンドCRMで、CRMの世界ではシェア50%を超えるといわれるが、今年4月には「Salesforce Platform Edition」を発表、アプリケーションだけでなく、プラットフォームも個別に提供できる体制を整えた。
カスタマイズ、他サービスとの連携も実現
SaaSが、旧来のASPに比べ進化しているのは、顧客のニーズに応じたカスタマイズが可能で、サービス提供元のバージョンアップにも影響を受けない。従来は開発ベンダーの異なるサービスを融合して利用することは不可能だったが、SaaSでは業界標準のWeb APIを利用することで、サービスの融合または連携が可能になるといった点だとされるが、この二点を最も強烈に意識、推進してきたのがセールスフォース社である。4月30日現在で世界のユーザー数は3万2300社、日本では日本郵政公社、三菱UFJ信託銀行、みずほ情報総研、損保ジャパンDC証券、日立ソフトウェアエンジニアリングなどが導入している。
ソフトバンクBBは、昨年8月に代理店契約を結び、「この1年は、販売店向けに全国でセミナーを開催するなどしてきましたが、最初の頃はSaaSとは何だという説明に力を入れなければなりませんでした。しかし、今ではSaaS自体は完全に市民権を得て、Salesforceの知名度も急速に高まってきたことを実感しています」と中山マネージャーは語る。
SaaSだから物品を販売するわけではなく、物流も発生しない。中間卸は不要のように見えるが、「そんなことはない。我々の存在価値は増す」と中山マネージャーは強調する。
「アメリカではインターネットで直接契約するユーザーが増加しているといわれますが、日本ではそうはならないでしょう。ユーザーは、導入に当たっては必ず懇意にしているSIerや販売店に相談します。だから、今からSaaSの販売ノウハウを持ったSIerや販売店は将来大きな収穫を手にするはずです。一方、SaaSを実際に販売しようとすれば、多様な知識が必要になります。図1で示すように、データ回線やシステム構築、モバイル回線や端末の提供、IT関連商品およびサービスの販売、サービスの開発および販売といった側面が考えられますが、ソフトバンクグループならこれらの全てを提供できます。その意味で我々は、SaaSのワンストップソリューションカンパニーを目指すと宣言しています」と中山マネージャー。