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第一次産業で盛り上がるAI実装 酪農、林業、水産業でのユースケースから

2025/04/24 09:00

週刊BCN 2025年04月21日vol.2056掲載

 AIの社会実装が広がる中、第一次産業でのユースケースが盛り上がりを見せている。人手不足や物価高騰などを背景に、第一次産業ではテクノロジーによる業務改善が急務となっている。ITベンダーはさまざまなプレイヤーと協業しながら、社会課題の解決に取り組んでおり、酪農、林業、水産業と幅広い分野で具体化しつつある。
(取材・文/藤岡 堯、大畑直悠、大向琴音)
 

BIPROGY 広島大学 広島県
多様なデータから牛の乳量を予測

 BIPROGYは広島大学、広島県とともに、AIによる牛の乳量予測に取り組んでいる。「畜産データプラットフォーム」と呼ぶ基盤を活用して、牛舎内に設置した機器やロボットなどの多様なデータを一元化し、AIが分析して1~2週間先の乳量を提示。酪農家は予測に基づき、牛舎の環境や餌などで対策し、安定生産につなげることができる。2025年4月からは県内の酪農場で実証実験を開始し、精度検証を進めており、26年度内の実用化を目指している。

 今回の取り組みでは、牛舎内の個体監視センサーや、送風機、ミスト噴射機をはじめとする機器、掃除や、「餌寄せ」作業、搾乳などを担う各種ロボットといったエッジデバイスから、APIを通じて自動的にデータを収集。牛舎内だけではなく、外部の気象データなども組み合わせて、プラットフォーム上でAI分析まで実行する仕組みを構築した。集めるデータは、行動時間分析、牛の体重・体尺推移、実乳量、飼料摂取量、採食時間、飲水回数、搾乳回数、乳質、相対湿度、送風ファン回数など多岐にわたる。

 基盤技術にはBIPROGYが提供する空間認識プラットフォームサービス「BRaVS Platform」を利用している。プラットフォームからは各機器の監視や制御も可能で、担い手不足が続く酪農現場の改善にもつなげる。加えて「iPad」で写真を撮影するだけで、牛の大きさや重さを推測できるアプリケーションも用意し、「スマート酪農」の具体化に貢献する。
 乳牛は、気温や湿度、季節変化、飼料など、さまざまな外的要因でストレスを感じると、ホルモン分泌量が変化し、乳量や乳脂肪率が低下するとされ、牛舎の環境管理は効率的な生産のために重要と言われている。ただ、どれほど気温が高くなると、どの程度乳量が減るのかといった具体的な数字は検証されておらず、経験や勘で対応しているケースがほとんどだという。
 
BIPROGY
武井宏将 上席スペシャリスト

 4月からの実証では、具体的な関係性を「統計解析、機械学習などの手段でさらに詰めていく」(BIPROGYプロダクトサービス本部第四部の武井宏将・上席スペシャリスト)ことになる。どの要因が、どの程度乳量や乳脂肪率に影響するかを高精度で把握できれば、牛舎内の温度や牛に与える栄養補助剤の量などの対策をより細かく対応でき、実効性がさらに高まるとみている。

 実証を終えた後は、まずは広島県内での普及を進め、将来的には全国へ広げたい考えだ。一方で、酪農家は経営的に苦しい事業者が多く、一時的には自治体の補助金などが利用できたとしても、継続的に利用料を徴収するビジネスモデルの展開は難しい面がある。BIPROGYでは直接的な利用料に頼らないビジネスのあり方を模索しており、サービスイノベーション事業部ビジネス一部の三善直樹氏は「例えば、酪農関係の企業から広告を募り、広告料でクラウド基盤を維持するといったことが挙げられる。今のうちから次のステップを考えなければならない」と話す。
 
BIPROGY
三善直樹氏

 肉牛や豚、鶏といった乳牛以外への応用についても、ストレス要因の分析をはじめ、ある程度の研究が必要になるものの、「データが集まりさえすれば、技術的には全く問題なく、畜産全体のプラットフォームのようなものも可能」(三善氏)という。その上で「まずは酪農の予測が成功しない限りは先には進めない」とも述べ、広島での実証の成果を見極めたい考えだ。
この記事の続き >>
  • 日立システムズ 人工林の管理を効率化
  • 富士通 ソノファイ イシダテック 東海大学 超音波で冷凍魚の脂のりを検査

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外部リンク

BIPROGY=https://www.biprogy.com/

日立システムズ=https://www.hitachi-systems.com/