Special Feature
独SAP、米Oracle、大手グローバルERPのAI最新動向
2025/04/07 09:00
週刊BCN 2025年04月07日vol.2054掲載
(取材・文/藤岡 堯)

独SAP
新基盤で信頼できるデータを供給
SAPは生成AIアシスタント「Joule」を対話型のユーザーインターフェースとして、AIエージェントを駆動させる世界を描いている。Jouleがプロセス全体を指揮し、その下で複数のAIエージェントが動いて、ユーザーのビジネスを効率化する。例えば製造業のケースでは、営業エージェントによる需要予測に基づいてサプライチェーンのエージェントが製品供給の能力を分析し、調達エージェントが今後の生産に必要な素材や部品、新規の調達先までも提示するといったことが可能になる。ビジネスプロセスをエンドツーエンドで効率化できるわけだ。ユーザーのビジネスだけでなく、SAPの開発自体の生産性もJouleで高めていく。SAPは2025年前半に、Jouleを通じて、プログラミング言語のABAPによるアプリケーション開発や、SAPコンサルティングの自動化を実現する機能を加える方針だ。前者は自然言語での対話によるコードの自動生成などが行えるようになり、後者は顧客の要件を入力することで、設計や設定などを支援してくれるという。
ただ、AIが円滑にアクションを実行するには、高精度のデータが必須である。それはSAPだけにとどまらず、外部サービスのデータも含まれる。AIの能力をフルに発揮するためには、一元的なデータレイヤーを設け、活用のための前処理を行うことが重要になってくる。
そこでSAPはデータウェアハウス製品である「SAP Datasphere」、分析ツールの「SAP Analytics Cloud」を統合・拡張するかたちで、新たなフルマネージドデータ基盤サービスとなる「SAP Business Data Cloud」(BDC)を打ち出した。25年第2四半期(7~9月)中の一般提供を予定する。

堀川嘉朗 常務
SAPジャパン常務執行役員の堀川嘉朗・最高事業責任者が「単にデータを集約することが目的ではない」と語るように、BDCは米Databricks(データブリックス)とのパートナーシップに基づき、データブリックスのテクノロジーを取り入れ、従来から取り組んでいる非SAPデータも含めたデータの単一レイヤーへの統合に加え、高度なAI/MLワークロードへの最適化、データサイエンス機能の強化などが図られている。AIエージェントの潜在能力を最大限に発揮するために、信頼できるデータを供給する基盤としての位置付けだ。
データの集約・管理の点では、「データプロダクト」の概念を導入する。データをただ集めるだけでなく、標準化や意味付けを施した上で、ユースケースなどに応じて探しやすくして管理する考え方だ。「S/4HANA」や「Ariba」の財務データ、支出データ、サプライチェーンデータから、「SuccessFactors」の学習データ、人材データまでSAPのアプリケーションからデータを直接収集し、メタデータなども含めて保管する。ETLなどのツールや定期的なメンテナンス、カタログの整備も不要だ。
- 米Databricksと協業で非構造化などの対応を強化
- 米Oracle エージェント開発の「Studio」を発表
- ワークフローもテンプレートで構築
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