Special Feature
「Serendie」が生み出す進化の円環 三菱電機の新ビジネスが目指す世界とは
2025/03/20 09:00
週刊BCN 2025年03月17日vol.2051掲載
(取材・文/藤岡 堯)

変革を実現する基盤
Serendieの発端は、三菱電機が「循環型デジタル・エンジニアリング企業」への変革を打ち出したことにある。三菱電機では、パワーエレクトロニクス領域において電力需給の管理や電源運用などを支える「BLEnDer」、スマートシティー・ビル向けのIoT基盤である「Ville-feuille」(ヴィルフィーユ)など、ハードウェアとひも付くデジタルソリューションを事業領域ごとに有している。一方、それぞれの事業領域の枠組みを超えてデータを連携させ、製品・サービスに反映させる取り組みは不十分だったという。そこで打ち出されたのが、循環型デジタル・エンジニアリングの発想だ。個別のソリューションから集めた顧客の利用データを活用し、顧客の潜在課題やニーズを把握した上で、ハードウェアの進化や統合的なソリューションの開発を図り、顧客へ価値を再び還元する。その円環による事業の成長・高度化が循環型デジタル・エンジニアリングの目指す姿であり、これを実現するための基盤がSerendieとなる。
Serendie関連事業の推進組織として立ち上げられたDXイノベーションセンター(DIC)の副センター長を務める竹田昌弘・戦略企画部部長は「これまでの事業から“飛び地”で新しいことをするのではない。私たちがメインとしてきたビルシステムや空調、FA、交通、電力といったビジネスにおけるハードウェアに、データの力でさらなる価値を加えると考えてほしい」と語る。

副センター長
その上で「事業ごとのシステムだけでは、三菱電機全体の総合力が発揮できない。マイクロサービスの考え方を取り込んで、互いが持っている機能やデータを活用できるプラットフォームをつくり、当社のアセット、技術による新しいサービスを生み出しやすい環境を整備するという考え方だ」と説明する。そこには、自社内だけでなく、パートナーや顧客、時には競合他社が持つデータやシステムとの連携による共創も含まれている。
背景にあるのは、製造業者としての危機感だ。三菱電機はグローバルで競争力のある製品を数多く有している。しかし、厳しい競争の中で、少しでも提供できる価値が下がれば、簡単にシェアを失ってしまう。「今、グローバルで戦えている製品の価値を上げるための仕組み」(竹田副センター長)として、Serendieは存在するのである。
製品に付加価値を与える際に起点となる要素は「お客様の悩み、課題」であり、実際の利用データを分析しながら、顧客と対話を重ね、困りごとを解決する。ハードウェア開発のウォーターフォール的な手法とは異なり、アジャイルに開発し、短期間での解決が求められる。加えて、ハードウェアは売り切りの要素が強いビジネスであったのに対し、今後は継続的にサービスを提供するための仕組みづくりも必要となる。
竹田副センター長は「これまでの三菱電機がサッカーをしていたとすれば、これからは野球を始めるイメージだ」と例える。同じ球技ではあるが、全く別の競技に挑むほど難しいというわけだ。
- 「技術」「共創」「人財」「プロジェクト推進」
- パートナーの課題解決力に期待
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