Special Feature

バックアップは企業の生命線に ベンダー各社は高まるニーズにどう応えるか

2024/11/04 09:00

週刊BCN 2024年11月04日vol.2036掲載

 不幸なことに、2024年は「ランサムウェア攻撃」という言葉が、IT業界だけでなく一般にも広く知れ渡る一年となった。夏に出版最大手が数カ月にわたって一部事業の停止を余儀なくされたことは記憶に新しく、10月には電機メーカーや外食チェーン大手が情報漏えい、またはその疑いがあると発表した。災害の多い日本特有の事情も相まって、事業継続能力を高めるために、バックアップソリューションは企業の「生命線」と言える存在となりつつある。高まるニーズを前に、ベンダー各社はどのような戦略を打ち出しているのか。
(取材・文/週刊BCN編集部)
 

arcserve Japan
大規模な案件獲得に注力

 arcserve Japanは、ランサムウェア対策の需要が継続し、バックアップビジネスには追い風が吹いているとみている。直近では、災害への備えとしてディザスターリカバリーも併せて対策する企業が増えているという。サーバーの出荷台数の鈍化によってバンドルする製品の販売が伸び悩む中、より大規模な案件獲得に注力して成長を目指す方針で、新製品の開発やパートナープログラムの刷新も進めている。
 
arcserve Japanの
中田皓介・マネージャ(左)と
南部武志・本部長

 「ランサムウェアに関しては、大企業だけでなく、サプライチェーンに含まれる中堅・中小企業も狙われており、規模に関係なく対策を検討する企業は非常に増えている。24年1月の能登半島地震などの災害を踏まえ、ディザスターリカバリーも一緒にという動きもある」。営業統括部の南部武志・本部長は、自社を取り巻く状況についてこう語る。

 同社は、主力商材のバックアップツール「Arcserve UDP」などを提供し、ニーズの取り込みを図ってきた。ここ数年は、バックアップ用のイミュータブルストレージ「Arcserve OneXafe 4500シリーズ」の販売に注力してきたが、調達面での都合から、在庫がなくなり次第、販売を終了すると24年8月に発表。一時的に空白が生まれる可能性はあるが、次期イミュータブルソリューションは25年初頭の提供開始を目指して開発している。Arcserve UDPに関しても、サイバーレジリエンスの強化などに焦点を当てた新バージョンのリリースを準備中だ。

 ビジネス環境はおおむね良好と言えるが、懸念点はある。南部本部長は「国内のサーバーの出荷台数が前年に比べて落ちている。われわれはサーバーにバンドルされる製品も多く持っているので、この部分はサーバーの動向に引っ張られてしまう」とし、今後の見通しについて「今春には回復すると予測していたが、まだ回復の兆しは見えておらず、もう少し長引くと予想している」と語る。

 もちろん、こうした状況に手をこまねいているわけではない。arcserve Japanは、従業員数300人以上の企業を対象に大きな売上高を狙う「プロジェクト」と呼ぶビジネスを強化しており、24年1月にパートナーとハイタッチの営業チームを半々にするよう組織を改編した。企業の検索行動から分かるニーズ(インテント)に基づき、顧客起点で行う営業手法「インテントセールス」を取り入れ、効率的なターゲティングと優先順位付けを実施。提案先を絞り込んで各企業にアプローチしている。まだ具体的な成果は出ていないが「今は企業とのパイプラインをつくっている段階。これから大きな成果が出るだろう」(南部本部長)と期待する。

 パートナー関連では、既存のプログラムを策定してから5年ほど経過していることから、年内をめどに見直しを図る。構築まで手掛けられるテクニカルパートナーのようなカテゴリーを増やす予定で、案件が増えているプロジェクトのビジネス拡大につなげる考えだ。南部本部長は「適切にバックアップを取ろうとしている企業に対し、いち早くソリューションを提案し、引き続き安全な対策の実現に寄与していく」と強調。ソリューション統括部の中田皓介・マネージャは「製品だけでなく、長年にわたって培ったノウハウも当社の強み。こうした資産を生かしながら、パートナーとエンドユーザーのビジネスに貢献したい」と意気込む。
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