Special Feature
レガシー仮想基盤の刷新アプローチ 「脱VMware」は課題一掃のチャンス
2024/10/21 09:00
週刊BCN 2024年10月21日vol.2034掲載
(取材・文/谷川耕一 編集/藤岡 堯)
プラットフォームをいち早くOpenShift化
ブロードコムは2022年5月にVMwareを約8兆円で買収すると発表し、23年10月末に買収を完了した。買収後、ブロードコムはVMwareのライセンス体系を大きく変更。具体的には、従来の永続ライセンスを廃止してサブスクリプションライセンスに移行し、製品ラインアップも大幅に整理した。このため、ユーザー企業の選択肢は大きく減り、必要な製品だけの入手ができず、結果としてコスト負担が増加するケースが出ている。そのため市場では、「脱VMware」の動きも起きている。「(移行による)コスト面への懸念はあるが、ブロードコムのビジネスの姿勢に不安の声が出ている」とレッドハット日本法人ソリューション営業本部の大村真樹・セールススペシャリストは語る。
一方で、値上げ問題がなくても、従来の仮想化基盤には、さまざまな課題があった。例えば、ビジネス部門で仮想マシンが必要になった場合、申請書を記入し、承認を得てから1カ月後に払い出されるケースも多い。また、VMwareの仮想基盤は3ティア構成の環境が多く、技術スタックごとにエンジニアがサイロ化しやすく、生産性向上が阻害される。
コスト増は経営面ではピンチだが、現場のエンジニアにとってはチャンスでもある。これを機に、仮想基盤の課題を一掃できるかもしれない。そのため、「抜本的に考え直す機会と捉える企業が増えている」と大村セールススペシャリストは言う。この傾向は、欧米でも同様だ。ただし既に「OpenShift」を使っている企業も多く、「OpenShift Virtualization」があるなら、乗り換えれば良いと判断する事例が目立つ。一方日本は、コスト増の報告をパートナーから受けると、まずはパートナーの努力で吸収するか、追加コストを払い対応してもらおうと考える。しかし、コスト増は予想より大きく「これはまずいとなり、改めて仮想基盤の見直しを考えだしている」と、テクニカルセールス本部スペシャリストソリューションアーキテクト部の宇都宮卓也・シニアクラウドソリューションアーキテクトは指摘する。
ただ、既存の仮想基盤ワークロードをコンテナ基盤のOpenShiftに一斉に移行するのは困難だ。VMwareの技術に依存した運用や可用性の設計、モノリシックなアプリケーション構成は、レッドハットが目指すオープン・ハイブリッドクラウドへの移行を阻む。
そこで、アプリケーションアーキテクチャーは仮想基盤のまま、プラットフォームをクラウドネイティブ化する。それを実現するのがOpenShift Virtualizationだ。レッドハットは、この機能を活用した段階的なモダナイゼーションを、23年後半から積極的に提案している。日本では、OpenShiftはコンテナプラットフォームとしてのイメージが強いものの、仮想マシンの基盤としてもVMwareの代替になり、OpenShiftの価値も享受できる。
数年前までは、システムはすべて同じライフサイクルで運用され、ハードウェアの更新などに合わせ一斉に改修が行われていた。しかし、事業部門のニーズは多様化しており、すべてのシステムを同じタイミングで改修するのが適切とは限らない。
「システムの数だけ、事業部門の要求が存在する」と、テクニカルセールス本部の内藤聡・クラウドソリューションアーキテクト部部長は語る。これらの要求に応えるには、プラットフォームとアプリケーションの刷新が必要だ。
実際には、仮想基盤に残るシステムはそのままに、優先度の高いものから順次コンテナ化を進めるケースが多かった。そのため、複数のインフラ管理が必要となり、IT部門の負担増が懸念された。しかし、今回の脱VMwareの動きを契機に、プラットフォーム全体を見直す動きが出ており、プラットフォーム移行のロードマップ提案が重要性を増している。
その際にOpenShift Virtualizationは、コンテナ化に不向きなアプリを仮想基盤のままOpenShiftプラットフォームに載せ、OpenShiftによる一元管理で運用管理を効率化する。この時レッドハットは、プラットフォームだけの変更を提案するのではなく、常にクラウドネイティブな未来像を提示していると、内藤部長は強調する。
- なるべく手を入れずにOCIで短期間に移行
- 将来を見据えたモダナイゼーション戦略を
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