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Oracle CloudWorld 2024 Report[上] クラウドは次のフェーズへ

2024/10/10 09:00

週刊BCN 2024年10月07日vol.2032掲載

【米ラスベガス発】米ラスベガスで9月9~12日(現地時間)に開催された米Oracle(オラクル)の年次カンファレンス「Oracle CloudWorld 2024」では、幅広い領域の最新ソリューションや今後の戦略が示された。クラウド関係では、デプロイの方法や場所に関係なく、同一のクラウドサービスを提供する「分散クラウド」への注力姿勢が鮮明となり、マルチクラウド、専用リージョン、ソブリンクラウドなど顧客の選択肢を多様化する新たなクラウドのかたちを発信した。クラウドをめぐる状況は、次のフェーズへと進みつつある。
(取材・文/藤岡 堯)
 

「優雅に連携」する世界

 「オープン・マルチクラウド時代の始まり」

 9月10日、基調講演に臨んだオラクルのラリー・エリソン会長兼CTOは、これからのクラウドのあり方をこう表現した。実際、CloudWorldの会期中には、ハイパースケーラー3社との協業に関するプレスリリースが立て続けに公開された。
 
基調講演で対談するオラクルのラリー・エリソン会長兼CTO(左)とAWSのマット・ガーマンCEO

 米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)とは戦略的パートナーシップに基づく「Oracle Database@AWS」を発表。米Microsoft(マイクロソフト)については、現在6リージョンで稼働する「Oracle Database@Azure」を、日本を含む新たな15リージョンでも間もなく提供開始することが決まり、米Google(グーグル)との「Oracle Database@Google Cloud」では、米国、英国、ドイツの計4リージョンでの一般提供開始がアナウンスされている。

 オープン・マルチクラウドの時代とは何を意味するのか。エリソン会長が引き合いに出したのは、かつてのオラクル製品の特徴だった、ITインフラに対する「オープン性」だ。

 「『Oracle Database』は、あらゆる種類のコンピューター上で動作した。IBMのメインフレームでも、ヒューレット・パッカードのPCでも動いた。何十年もの間、私たちはさまざまな種類のコンピューター、さまざまなオペレーティング・システム上で動き、さまざまなアプリケーションと共存していた」

 クラウドが浸透する以前は、顧客はハードウェア、OS、データベース(DB)、アプリケーションを自由に組み合わせて使うことができた。つまり多様な選択肢を持てたと言える。しかし、クラウドの時代では特定の基盤を選び、その上でサービスを選択する流れが一般的である。顧客には最新のテクノロジーをはじめとして多大なメリットがもたらされたものの「さまざまな企業を利用し、優雅に連携して機能するという考えを失った」(エリソン会長)という。

 エリソン会長は一つの例を挙げる。「Oracle Exadata」とそれに付随するアプリケーションをオンプレミスからAWSへと移行したい顧客がいる。ただ、AWS上で動かせないExadataは「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)で利用し、AWSとOCIをネットワーク経由で接続して運用することになる。しかし、これは理想的な解決策ではない。レイテンシーやパフォーマンスの問題があり、「優雅に連携」しているとは言えないからだ。

 この問題を解決するのが「Oracle Database@AWS」であり、マイクロソフトやグーグルと提供する同様のソリューションである。エリソン会長が「AWSの中にオラクルのクラウドデータセンターを組み込む」と説明するように、他社のクラウドにOCIを内包させることで、パフォーマンスの向上、帯域幅の拡大、より低いレイテンシーなどが期待できる。ユーザー側は慣れ親しんだクラウドのコンソールを利用できるので、操作性の面でのメリットもある。

 同じ基調講演に登壇したAWSのマット・ガーマンCEOは、AWSのスケーラビリティーやセキュリティーを気に入っているAWSユーザーでも、ミッションクリティカルなワークロードはオラクルのソリューション上で走らせているケースがあると紹介。一方でこうした顧客は、ミッションクリティカルなワークロードを、アプリケーションのあるAWS内で稼働させたいとも考えており、「AかBをどう選べばいいか悩み、AもBも選びたい」様子だと表現する。だからこそ、今回の協業は「AもBも選びたい」顧客のためになると期待を寄せた。
この記事の続き >>
  • 「壁に囲まれた庭」ではない
  • 3ラックでユーザー専用リージョン
  • パートナー拡大に期待

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