Special Feature
大手通信3社のDX支援事業 共創、共通課題解決、個別支援と戦略に特色
2024/09/30 09:00
週刊BCN 2024年09月30日vol.2031掲載
(取材・文/堀 茜)
NTTコミュニケーションズ
「OPEN HUB」から生まれる新規事業 顧客企業のビジネスの先まで伴走
2022年にNTTドコモ傘下となり、グループの法人向け事業を担当するNTTコムは、「ドコモビジネス」のブランドで事業を展開している。23年度の法人事業収益は1兆8000億円で、25年度には2兆円の達成を目指している。その成長をけん引するのが、顧客企業のDX支援事業だ。NTTコムはDXを推進することで社会課題を解決し、これにより実現する持続可能な社会を「Smart World」と位置付け、生成AI、GX(グリーントランスフォーメーション)、IoTといった領域でパートナー企業などと共創を進める場として「OPEN HUB for Smart World」を21年に開設した。NTTコムの営業部隊やエンジニアら900人が所属。東京・大手町のオフィスにワークプレイスを設け、事業コンセプト考案のためのプログラムを提供したり、オウンドメディアで情報発信したりと多彩な活動を行っている。
代表を務める、ビジネスソリューション本部事業推進部の戸松正剛・マーケティング部門部門長は「ソリューションを生み出し、実装し、マネタイズしていくために、マーケティングのプログラムとしてOPEN HUBに注力している」と説明する。大企業を中心に多くの企業がパートナーとして参画し、協業による新規ビジネスが生まれている。NTTコムが目指す方向性は、「当社とパートナーのビジネス成功にとどまらず、その先のソリューションの利用者までDXの効果を波及させ、いい循環を生み出すこと」(戸松部門長)だ。
事例の一つに、農機具メーカーのヤンマーのグループ会社で食品事業を行うヤンマーマルシェとの協業がある。温室効果ガスの一つで、二酸化炭素以上に気候変動に与える影響が大きいとされるメタンガスは、国内の排出量の45%が水田から排出されているという。水田から水を抜くタイミングを調整することで排出量を抑制できるが、水田にIoT機器を設置し排出量を抑えるといった対策の提案だけでは、そのシステムを利用する農家に費用負担がかかり、広がりに欠けることが課題だった。
そこで、農家の水田に設置したIoTセンサーから取得する水位や気温などのデータを、NTTコムが提供するアプリケーションへ自動的に連携し、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を国が認証する制度「J-クレジット」に申請できる、一気通貫のシステムを構築した。農家はクレジット販売で収益を得られるメリットがある。さらに、収穫した米を、メタンガス排出を抑え環境に配慮したブランド米として付加価値を付けて販売。弁当として販売する業者を紹介するなど、ビジネスの広がりまで支援している。
戸松部門長は「社会課題解決は、1社で解決できるほど簡単なことではない」と指摘し、「新規事業の創出では、三つどもえで誰もが良くなるやり方を目指している。こういった事例を積み上げていくことで、中長期的に持続可能な社会を実現したい」とする。特定の業界に突出した知見を持った企業はDXの共創パートナーになり得るといい、そこにNTTコムの技術を掛け合わせることで、スマートシティーの共通基盤や建設機械の自動運転といった新たなソリューションも生まれている。
通信事業者としてDX支援に取り組む意義として、戸松部門長は「インフラ事業者だからこそ、大きな社会課題解決のために全体をマネジメントしていく役割を果たせる」と強調。パートナーとの協業拡大を図り、今後も業界特化型のソリューション開発に注力していく。
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