Special Feature
フード業界で高まるデジタル技術の必要性 ITベンダーはパートナーとの連携を重視
2024/08/26 09:00
週刊BCN 2024年08月26日vol.2027掲載
(取材・文、藤岡 堯、大畑直悠、齋藤秀平)
日本IBM
「守り」と「攻め」の両構えで変革を
日本IBMは長年、食品製造業のDX支援に取り組んでいる。現状について、流通サービス事業部の菅野信広・理事は「まだまだ進んでいない。逆に言えば、ビジネスの伸びしろは大きい」とみる。数年前と比較すれば「投資や新たなことを始めようという事例は格段に増えている感がある」(同事業部の佐藤和樹・プリンシパル・データ・サイエンティスト)のは確かであり、企業の意欲は確実に高まっているようだ。食品製造業はほかの製造業に対して1社あたりの規模が比較的小さく、多額の投資が難しい面があり、DXを遅らせる一因になっている。ただ、ここ数年で製造業向けのさまざまなソリューションが普及した結果、導入しやすくなりつつある。食品産業全体の景況が上向いていることも追い風となり、今後ますますデジタルへの投資が高まる可能性もある。
食品製造業ならではの課題は多く、複数のサプライヤーから原材料を仕入れていることに加え、時期や天候などによってサプライヤーが刻々と変化したり、食品は原材料表示のルールが厳しく定められているため、調達先がどのような材料をどう加工しているかといった詳細まで把握したりする必要がある。このほか、食の安全に関する意識の高まりや顧客ニーズの多様化、熟練開発者の技術継承など、デジタル技術で解決を見込める領域は広大だ。
足元のニーズとしては、老朽化した基幹システムの再構築やデータ基盤の整備といった「守りのDX」が中心であるが、デジタル技術によって事業に変革を生むような「攻めのDX」が徐々に広がると期待される。
菅野理事は「守りと攻めを一緒に進めるほうがいい。すべての領域を真面目にする必要はない」と話し、基幹システムやデータ整備に課題があったとしても、効果を見込めれば、PoCレベルでも着手したほうが望ましいとの考え方を示す。コストは必要になるが、一つの投資を複数の用途に応用すれば投資効果を最大限に引き出すこともできる。そのためには、事業の中身を切り出し、何にどこまで投資すべきかを判断する必要があるが、ユーザー企業だけでは難しい場合もあり、ITパートナーやコンサルティングの後支えが欠かせない。日本IBMでも見極め段階から支援に入るケースがあるという。
また、従業員の変革への意欲を経営層がいかに受け止め、事業に取り入れていくかも重要だとする。同事業部の猿渡一仁・アソシエイト・パートナーは、大手飲料会社で、生成AI活用に意欲的な従業員に学習の機会を設け、その成果をそれぞれの所属部署に持ち帰り、現場レベルで理解を深めている例を紹介し、「これがデジタル化を早める」と指摘。意欲を育てる社内風土も成功のかぎを握るようだ。
日本IBMは近年、五つの「価値共創領域」を掲げており、食品製造業界向けにもパートナーや顧客と協力して事業展開する方針だ。食品製造業は地域の経済を支える中小規模の企業が多く、佐藤プリンシパル・データ・サイエンティストは「中小規模の企業に対しては、地場のSIerと一緒に取り組まなければならないと考えている。そういう事例も出ており、活動をもっと増やし、共に課題解決できるようになればいい」と話す。
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