Special Feature

「AIOps」で変わるIT運用の未来 人材不足の日本企業が目指すべき姿とは

2024/07/22 09:00

週刊BCN 2024年07月22日vol.2023掲載

 IT運用の領域においては以前から、業務を効率化するとともに属人化を解消し、自動化によって対応の迅速化や人的ミスの削減を実現すべきと言われている。最近になって、そのための有効な手段として注目を集めているのが「AIOps(AI for IT Operations)」だ。ITの運用・管理におけるさまざまな課題に対し、AIOpsはどのような解決策を提供できるのだろうか。
(取材・文/谷川耕一  編集/日高 彰)
 

生産性の低さは世界共通の課題

 オブザーバビリティー(可観測性)のソリューションを提供する米Dynatrace(ダイナトレース)が、2020年に発表した調査結果がある。調査対象は米国、欧州を中心とするグローバル企業・組織の700人のCIOで、IT運用の上位課題には「システム全体の可視化」「工数やコストの増加」「属人化する運用現場」が挙げられている。例えば、クラウドネイティブ技術の利用拡大で手作業やコストが増加すると回答したCIOは、全体の74%に上った(下グラフ)
 
複数の監視ツールをつなぎ合わせることで可観測性を維持することはできず、
一貫した情報ソースを提供する「単一のプラットフォーム」が必要と考えるCIOの割合
 
クラウドネイティブの利用増加に伴い、それを常時稼働させるための
「手作業やコストも増する」と考えるCIOの割合
出典:ダイナトレースの調査「2020 Global CIO Report」

 日本よりIT運用の効率化が進む欧米でも、19年の調査時点でこれらが問題視されており、国内外で課題認識そのものに大きな違いはない。ダイナトレース日本法人の日野義久・執行役員は「システムの障害対応ほど生産性の低い仕事はないと、あらゆる企業が認識している」と話す。

 そのため、欧米ではIT運用の自動化に積極的に取り組む例が多い。一方、日本を見ると、この課題の解決のため、運用自動化ソリューションを導入するCIOはまだまだ少ない。課題感は同じでも、取り組みには差がある。「日本の状況は、欧米の先進的な企業から、最低でも5年は遅れていると思う」と日野執行役員は指摘する。
 
ダイナトレース日本法人の徳永信二社長(左)と日野義久・執行役員

 これを裏付けるのが、欧米の先進的な企業で普及しているアプリケーションパフォーマンス管理(APM)ツールの導入が、日本ではまだ進んでいないという現状だ。これは、多くのユーザー企業が開発や運用を外部のSIerに委託する日本特有の体制も影響している。

 日本企業では、アプリケーションの性能に対する責任の所在があいまいなケースが多い。問題が発生すれば、委託先に調査や解決を丸投げしがちだ。結果的にユーザー企業は、APMの必要性に気づかない。対して欧米では役割分担が明確化されており、システム構築を外部に委託していても、性能問題の責任はビジネスオーナーにあり、彼らが状況を把握するためにAPMが必要となる。

 IT市場でAPMが注目され始めたのは、20年ほど前だろう。10年代にはDevOpsの概念も普及し、APMの必要性はさらに増した。APMの次に欧米で活用されたのが、システムやネットワーク機器などから得られる大量のログを分析するログ管理ツールだ。これらも、グローバルな先進企業では導入が進んでいる。しかし、ここまでは集めた情報を個別に分析し、例えばある機器の故障を予兆するなど、IT運用の一部を限定的に効率化する取り組みにとどまっていた。

 続いて注目されたのが、オブザーバビリティーだ。これも、まだ日本では十分に普及していない。オブザーバビリティーは、集めた情報をそれぞれ関連付け、IT環境全体の見える化を推進する。クラウドなどが登場し、複雑化したIT環境を可視化したいという要求から、注目を集めている。オブザーバビリティーソリューションの導入により、エンドユーザーの顧客体験をより良いものにするためのアドバイスを得たり、いち早く障害などの予兆を検知し、事故の前に対処したりする動きにつながることが期待できる。

 そして、欧米市場でオブザーバビリティーの先にあるソリューションとして視線が注がれているのが、「AIOps」である。人材不足などの課題が急速に顕在化した日本では、それを解消するために、一足飛びでAIOpsにたどり着かなければならない。「技術がどう変遷してきたかを理解できれば、一気に最新の状態にするのは、決して難しくはない」と日野執行役員は言う。
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