Special Feature

変革期を迎える学校のネットワークインフラ 校務DXの推進が追い風に

2024/07/15 09:00

週刊BCN 2024年07月15日vol.2022掲載

 学校のネットワークインフラが変革期を迎えている。デジタル教材の利用が増加する中、特にネットワークの強化が喫緊の課題に。教職員の働き方改革を目指し、文部科学省が推進する“校務DX”が追い風となり、先進自治体では、教職員が業務で用いる校務系システムのクラウド化が進展。校務系ネットワークのあり方を見直し、業務効率を高めようとする動きも生まれている。
(取材・文/大畑直悠)
 

 教育現場では、GIGAスクール構想によって整備されたネットワークインフラに課題が生まれている。全国学力・学習状況調査の一部オンライン化や、デジタル教科書の利用の推進、動画教材やクラウドベースの学習アプリの増加など、日常的にネットワークにかかる負荷が高まる中、不具合や遅延が発生した際に、児童・生徒の学習に与える影響が大きくなっている。

 文部科学省は2023年度補正予算で、「ネットワークアセスメント実施促進事業」に23億円を計上。都道府県、市町村などが民間企業に委託するネットワーク診断の3分の1(対象となる事業費の上限は1000万円/校)を補助。ネットワークの整備を支援する動きを見せている。

 教育の高度化や教職員の働き方改革から、ネットワークのあり方を見直す動きも生まれている。文部科学省は「次世代の校務DX」の方向性を示し、校務系と学習系のデータを連携させ、ダッシュボードとして統合的に可視化し、学校経営・学習指導・教育政策などを高度化することを打ち出している。一方で、多くの自治体は学習プラットフォーム「学習eポータル」を中心に学習系システムをクラウド化しているものの、校務系システムは自治体が保有するサーバー上に構築し、閉域網で運用している。校務系ネットワークと学習系ネットワークが分離されているため、データを連携し可視化するインターフェースの構築がコスト高になり、校務DXの実現が困難になるなどの課題がある。

 教職員の働き方の面でも、ネットワークの分離によって職員室以外から校務系システムへアクセスできないことや、校務系と学習系で端末を使い分ける必要がある、データの受け渡しに手間がかかるなど、教職員に非効率な働き方を課す要因にもなる。また、オンプレミスでの運用は、大規模災害が起きた際の業務の継続性の観点でも懸念が指摘されている。

 これらの背景からネットワーク統合に向けた動きが活発化しており、文部科学省は24年1月、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を改訂。「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」での提言を踏まえ、アクセス制御を前提としたネットワーク統合のためのセキュリティー対策の指針を打ち出している。具体的には、モバイル端末管理やアンチウイルス、通信経路の暗号化、Webフィルタリング、シングルサインオン、多要素認証、不正アクセスの検知や遮断を必須の対策として挙げている。

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